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昔と今とお祝いの言葉


「学園へ入学したからと言って、すぐに親の庇護下を離れるわけではないからね、君たちはまだ守られる子供だということを忘れないでね。何かあったら無理をせず、すぐに教えてほしい。私達もアベル侯爵も君たちを助けるためなら、何だってするからね」


何だってを強調するリアムは、ミリヤが望めば王家だって滅ぼしかねない。

一夜にして王都を焼け野原にする事だって厭わないだろう。

それも笑顔でだ。

馬鹿な者がリアムの怒りに火をつけない事を願うが……学園にはリアムを怒らせる可能性がある馬鹿も入学する事を忘れてはいけない。


「ありがとうございます。お父様。もし自分達の力では難しいと判断すれば、遠慮なく相談させて頂きます。けれど、最初は自分の力で頑張ってみたいのです。幸運なことに、私にはローズ様もジークもいるので、心強いですわ」


そう言って2人を見れば、頷いてくれる。

グレン侯爵家では味方はいなかったミリヤだが、今は助けを求めれば助けてくれる人がいる。

一緒に戦ってくれる人がいる。


(1人じゃないと思える事は……本当に心強いわ)


アリアが仕掛けてくるのは目に見えているし、周りを誘導するのが上手い子だ。

誰が味方か分からない状況で、絶対に裏切らないと信用できる者がいる事は大きい。


「ミリヤの成長が嬉しいのと寂しいのとで、お父様は複雑な気分だよ」


苦笑いするリアムの顔は、もう立派な父の顔をしている。

その顔を見たノアとルークが目を合わせプッと吹き出す。


「なんで笑うんだい?」


リアムがムッとしながら聞けば、ルークが代表して答えていた。


「閣下はレティア様が学園に入学される時も同じように心配し、レティア様から呆れられてました」


学園には12歳から15歳までの3年ほど通うことになる。

その後は更に上の専門の機関で学ぶ者や留学する者、婚姻する者などに分かれる。


「レティア様と学園に通いたいがために留年しようとしてましたね」


リアムとレティアは3歳差だったため、リアムの卒業と共にレティアが学園へと入学してきた。


「思いとどまった事を褒めてほしいね」


ミリヤの前では常に紳士な父にも、子供らしい頃があったのだと思うと微笑ましい。


「それもレティア様から説得されてでしたけどね」


同じような会話が遠い昔にも交わされていたと思うと不思議な気分だ。


「君達はそんな事ばかり覚えてないで、もっと私の活躍した話をミリヤには聞かせてほしいな」


リアムは不満そうに睨んではいるが、瞳は優し気で口元は緩んでいる。

レティアの話ができるのが嬉しいのが伝わってくる。


「閣下の昔話にはレティア様が欠かせないので、そうなると同じような話しか持ち合わせておりません」


馬鹿真面目に話すノアに、とうとうミリヤは笑い出す。


「お父様とお母様の話が聞けて嬉しいです。もし良ければ、また今度ノアの言っている同じような話も聞きたいです」


ミリヤが頼めばノアは快く了承してくれたが、リアムは知られたくない事があるのか苦笑いをしている。

この話を続けたくなかったのか、リアムは「おほん」と咳払いをすると、3人の名を呼んだ。


「ミリヤ、ローズ、ジーク。学園に入学すれば大変な事もあると思うが、一度しかない学園生活。希望に満ち楽しめる事を祈っているよ。入学おめでとう」


リアムの言葉に合わせ、ノア達も「おめでとうございます」と祝ってくれた。


3人からの祝いの言葉を聞きながら、とうとう学園生活が始まるのだと、ミリヤは気を引き締める。

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