サクッと潰される商会と不正
リアムからジークの事で話があると言われ、ミリヤはジークと共にリアムの部屋へとやって来た。
「ミリヤとジークです。失礼します」
挨拶をして入室すれば、まず最初に目に入ったのはルークとノアのやり切った感満載の眩しい笑顔。
ただ笑顔に反して服には所々赤いシミがついており、不穏な空気なのが不気味だった。
(2人は…無傷だし、相手の血ね)
誰とやり合ったのかは知らされていないが、ジークと共に呼ばれたということはジークがいた悪徳商会なのだろうと予想する。
「ミリヤ。よく来てくれたね。立っていたら疲れるだろう?ほら、ソファーに座りなさい」
自分の横のスペースをトントンと叩き呼び寄せるリアムにミリヤの頬も緩む。
ソファーにはミリヤとリアムが座り、ジークは横に控えた。
皆の聞く準備ができた事を確認し、ルークは報告を始める。
「まず最初にジークのいた商会はしばらくの間、商売ができる状態ではありません。私とノアで暴れて来ましたし、雇われていた護衛のもの達も再起不能状態にしてきました。その時に得た商会の不正の証拠も持ち帰りました」
商会の者に手も足も出ず、暴力を振るわれ続けたジークが驚き息を呑んだ。
リアムが手を差し出すと、ルークがすぐさま不正の資料を手渡す。
「ふむ。これは酷いな」
職人や農民から材料費にもならないのではないかという値段で物を買い取り、大金でそれらを売っている。
売る事を渋った者には護衛と称した街のごろつきを派遣し、無理やり物を脅し取っていた。
そして何より…。
「国への税の額を欺いていたか。これに関してはあの商会の単独では難しいはずだ。必ず貴族に仲間がいるな」
税の額を偽るのは大罪だ。
前世では追加課税という制度があったが、今世ではそんな制度はなく、あるのは奴隷として生涯鉱山で働くか、死刑かの2択のみ。
「バルトラ伯爵が関わっているのは確実だな。税を誤魔化し始めた日付が、現伯爵になってからだ。前伯爵の時は関わりもしていない」
ジークの目から涙がこぼれ落ちる。
伯爵家嫡男としての身分を奪われ、父の形見も奪われ…誇りだったバルトラ伯爵家の名を汚された。
どれほどの苦しみか、ミリヤには考える事しかできないが、少しでもジークが救われてほしいと思った。
ミリヤがリアムに救い出されたように。
「お父様…どうにかできないのでしょうか?」
これではあまりにもジークが可哀想という言葉は心の中にしまった。
ミリヤもそうだったが、人から可哀想と思われるほど虚しい事はない。
同情などいらなかった。
「ミリヤの頼みなら、不可能も可能にしてみせるよ。ただ申し訳ないけど、税の方は貴族も絡む事だから調査させてほしい。商会についてなら、サクッと潰しておくから」
サクッと潰せるものなのかと思ったが、すぐに考えを改めた。
(オリエーヌ公爵家に潰せない商会などないわね)
例えそれが国1番の商会であっても、リアムが潰すと決めれば潰れる。
それほどの力をオリエーヌ公爵家当主リアムは持っていた。
「閣下。商会の者から少しだけ証言が取れましたが、バルトラ伯爵は上の者から税の偽り方を教えて頂いたと言っていたと言っていました」
「上の者か…伯爵家より上は侯爵家と公爵家のみ。さぁ、そんな馬鹿なことを教えた者を探そうか」
悪魔の微笑とはこういう事を言うんだなという笑顔を浮かべるリアム。
調査の結果、炙り出される家はどこだろうとミリヤは頭をフル回転させ考え…思いついた家は懐かしくもない元グレン侯爵家だった。
おそらくリアムも同じことを考えたのだろう。
「あのろくでなしの某侯爵家を徹底的に調べておけ」
凄みのある声で命令していた。




