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密談は男衆のみで

「さて、改めて自己紹介をしよう。リアム・オリエーヌ。ミリヤの義理の父だ。君の口からももう一度自己紹介してくれるかい?」


わざわざ義理と言った意味を、ジークはきちんと汲み取り、強い眼差しでリアムを見た。


「私はジークと申します。よろしくお願い致します」


家名は名乗れなくなったが、体に染み付いた立ち振る舞いは消えない。

平民にしては綺麗過ぎ、ジークが貴族だったのだと確信できる。


(ルークが疑わないのなら、調べる必要もないだろうけど)


懸念は全て取り払っておきたいため、後からジークについては調査をするよう指示を出しておこうとリアムは決めた。


「前バルトラ伯が亡くなった事は聞いていたが、彼の子がどうなったかまでは知らなかった。事故と聞いたが?」


「はい。一年半前、突然の事故で帰らぬ人となりました」


「そうか。今更だが、お悔やみ申し上げる」


リアムがお悔やみを伝えれば、ジークの瞳からは涙が溢れた。


「あ、ありがとうございます」


しばらく泣くかと思われたが、すぐに涙を拭い顔を上げる姿は、まさに貴族らしい姿だった。


(ふむ。切り替える力もありそうだ)


ミリヤの側に置くのなら、臨機応変に何に対しても柔軟な対応をしてほしいとリアムは願っている。


「ミリヤから聞いたかもしれないが、あの子と君はよく似ている環境にいたんだ。ミリヤは元々はグレン侯爵家の子なんだよ」


ジークもグレンという家名には聞き覚えがあったようで、驚いた顔をしている。


「グレン侯爵家の長女は王太子殿下の婚約者と……」


グレン侯爵家には2人の娘がいる事は聞いた事があるのか、ミリヤがどちらに当たるのかを考えているジーク。


「もう破棄しているが、ミリヤが婚約者だったよ」


「婚約破棄ですか?!」


学園を卒業と共に平民には婚約を発表する予定だったため、元々貴族以外には王太子の婚約は発表されていない。

ジークが知っていたのも、貴族に発表された時期、まだジークが貴族だったからである。


「あぁ。ミリヤの義妹と婚約するから、ミリヤとは婚約を破棄すると大勢の貴族の前で言っていた」


ジークに手を差し伸べてくれたミリヤに恥をかかせたディアルガンに、ジークの顔は怒りへと染まる。

ミリヤのために怒るジークを見て、リアムは安心する。


(あのバカ王子に怖気付くようなら、ミリヤの騎士にはできないからね)


貴族の子をミリヤの騎士にした場合、そこだけが心配だったのだ。良くも悪くも御坊ちゃまな彼らは、何かあった時に王族からミリヤを守れるだろうかと。

しかしミリヤ本人に恩を感じているジークなら、王族であってもミリヤを優先するだろう。


リアムは元来打算的な人間であり、大事な者が幸せなら他人が犠牲になっても心は痛まない。

今のリアムにとって1番大切なのは、レティアが残したミリヤで、次にレティアが拾ってきたルーク達。大切な範囲が極端に狭いのだ。


「ジーク。君にはミリヤへ害となる者を、近付けないよう護衛をしてほしい。王立学園に必要な物は全てオリエーヌ家が揃える。君は半年後に向け、騎士団長のアベルやルークから学べるだけ学んでくれ」


「はい!承知致しました」


「勉強も、鍛錬の合間にミリヤと共にするといい。恐らくミリヤはSSクラスへクラス編成されるだろう。君も同じようにSSクラスへと入ってほしい」


言外にSSクラスでなければ困ると伝えておく。護衛なのだから、常に守れる位置にいてもらわなければと。


「そう言えばジークの年はいくつだい?」


護衛の者が主に合わせ年齢の下のクラスに入る事はあるため、あまり年齢にこだわりはないが、きちんとした年を知っておく必要はある。


「14歳になります」


伯爵家のままなら、今頃は学園に入学し、学園生活を楽しんでいたのだろう。


「14歳か。学園に入れば、ミリヤの害を払う以外に、君自身へ強いあたりもあるだろう。君と同い年の子は一個上の先輩だ。因縁をつけられる事もある。覚悟はしているかい?」


ルークがジークの横で高速で首を縦に動かしているのが見える。ルークはリアムと共に学園へ入学したため、彼にも苦い覚えがあるのかもしれない。

嫌がらせされている現場を見れば主にレティアが止めていたが、リアムやレティアの見えない所でもあったはずだ。


「全て覚悟の上で、私はミリヤ様をお守りしたいと思っております」


ルークが懐かしげに目を細める。在りし日の自分を思い出したのかもしれない。


「分かったよ。それではジーク。君をミリヤの護衛へ任命する。何があってもミリヤを守り抜け」


「はい! 父の名にかけ、必ずやミリヤ様を守り抜きます」


家名は名乗れないが、父が誇りなのだろう。その名にかけたのなら、必ずやミリヤを守るとリアムは信じた。


「ルーク。ジークがいた商会には、ジークは我が家で引き取ると伝えてきて。後の事は全部ルークに任せるから。必要ならノアも連れて行くと言い。ジーク、君も下がって良い。ルークはジークをアベルの所へ連れて行ってから動くように」


リアムの命令に、ルークはニヤリと笑うと退室の挨拶をし、ジークを引きずり、颯爽と出て行った。恐らくジークをアベルへと引き渡し、ノアを捕まえに行くのだろう。


そしてそのまま悪徳商人の屋敷へと話し合いという名の殴り込みにいき…リアムの願った通りの成果をあげるはずだ。




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