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アリアの策略②〜アリアside〜

「な、なんてことを言うの!! 確かに王立学園には通えなかったけれど、それなりに婚約の打診は来ていたわ!! それをあなたが、どうしても私といたいと言うから断ったのよ!!」


今にも父に掴みかからんとする母を、アリアはバレないように嘲笑う。


母はアリアの母だけあって、顔立ちも綺麗で、妖艶な体型をした美女である。

アリアを産んだ後も体型を崩す事なく保ち、男を魅了する体をしている。


顔立ちは父に似ているが、体つきは母に似ているため、後数年すればアリアも男を虜にする体を手に入れるだろう。


(そこだけは感謝するわ)


人は中身だと言う人もいるが、外見が良くなければ、最初の段階にも上がれない事が多々ある事をアリアは知っている。


「お、お母様……落ち着いてください。お父様を責めないで……」


母ではなく父の味方をするのは計算しての事だ。


「アリア……お前はなんて優しいんだ。それに比べてレイラ!! お前には我慢できん!!」


「なっ……何よそれ!! 元々はあなたが原因じゃない!! 我慢できないのは、私の方よ!!」


「瞳のことを聞いたと思われる日は体調が悪く、ほとんど話が頭に入ってこなかったんだ!! それを今更私のせいだと責めるな!!」


本来学園で話がある紫の瞳についてだが、侯爵家の後継ともなれば、後々調べることもできた。調べることもせず忘れていたと言うのなら、この一件は父の浅はかさが招いたと言っても間違いではない。


だがここで父と敵対するのは得策ではないと、アリアは理解している。それがアリアと母の運命の分かれ道だった。


「お父様……体調を悪くされていたなら仕方ありませんわ。体調が悪い時に、難しい話は頭に入りませんもの」


アリアの助け船に、父は物凄い勢いで乗ってくる。


「そうなんだ。聞いていたが、体調が悪いと頭の働きが悪くてね。優しいアリア。お前だけが私を分かってくれる。それに引き換え……」


今日城に行くまでは確かにあった父と母の夫婦の愛が、今は断ち切れていた。


「アリアはディアルガン殿下に望まれる優しい娘だ。その娘をデリム伯爵に嫁がせるわけにはいかない。私はお前と離縁しよう。お前がデリム伯爵に嫁ぐと返信しておく」


(思った通りね)


自分に味方してくれる娘と、怒りをぶつけてくる妻。どちらを取るかと言われたら、父の考えなど手に取るように分かる。


「い、いやよ!! 絶対に嫌!! 私はあなたの妻よ? 嫁ぐなら、結婚していないアリアでしょう!!」


ミリヤがいる時はアリアをとても可愛がっていた母も、いなくなってしまえば、あっさり娘を売るのだ。親子の愛情とはと問いただしたくなるが、貴族にとってはこれが普通であり、愛では生きていけない。


「アリアは優しくて可愛い。例えディアルガン殿下に嫁げなくても、侯爵家嫡男に嫁ぐ可能性は高い」


実際アリアの取り巻きに侯爵家の嫡男がいる。アリアを姫のように扱い、アリアが願えばいつも言うことを聞いてくれる。

デリム伯爵に嫁ぐくらいなら、彼に嫁いだ方がまだマシだ。


(そうすると……ミリヤより上にいけないのよね)


アリアがミリヤの下につくなどあり得ない。

ミリヤは常にアリアの下にいるのが当たり前であり、アリアより幸せになるなど許せない。

どうすれば良いのか、アリアが思考を張り巡らせていれば。


「それにな、ディアルガン殿下が王位を継がない場合は、恐らく臣下に降るはずだ。その時には一代限りになるが公爵家の位を授かるはすだ。そうすればアリアはディアルガン殿下に嫁げる」


父から新たな情報が手に入った。


(一代限りね……)


王妃と一代限りの公爵夫人では、天と地の差がある。アリアが欲しいのはミリヤより上の立場であり、同等の立場ではない。


しかしそこでアリアはある事を思いつく。


(そうよ!! 瞳の色が大切なら、紫に変えれば良いのよ……そう。……コンタクトみたいにね)


アリアがふふふと声に出さず笑った時、公爵邸にいるミリヤの背筋がゾクリと震えた。


しかしまだこの作戦を父やディアルガンに伝えるわけにはいかない。

父は短絡的で口が軽く、ディアルガンには王妃になりたいからディアルガンを選んだと思われたら困るのだ。


もっと使える手札を揃えなければいけない。


その前に、目の前で喚き続けている母をデリム伯爵の元へ出荷する事にする。


「お父様……私、例えディアルガン様が王位を継げなくても……ディアルガン様と一緒になりたい……」


顔を下に向け、手で涙を拭うフリをすれば、アリアの純粋な心に、父はすぐに頷いた。


「あぁ。アリア。アリアとディアルガン殿下が結婚できるよう、私も全力を尽くそう」


「お父様……」


アリアと父が茶番劇のようだが、抱き合えば……母は顔を真っ青にしていた。

最後の最後で父は母を選ぶと思っていたのかもしれない。

般若のような顔で怒りをぶつけていたのだから、100年の恋も冷めるだろうに。


「あ、あなた? 私はあなたを愛しているわ……」


今頃気付いたのか、父に涙目で手を伸ばす母。

しかし母の手を父が取る事はなかった。

それどころか振り払っている。


「お前には愛想が尽きた。デリム伯爵に愛でてもらえ」


「いやよ、いやよ……あなた?ねぇ?こっちを見て。お願い……」


父が母を見る事はなかった。


「お前の実家には、デリム伯爵に望まれて嫁いで行ったと伝えておく。おい。連れて行け」


男爵家が侯爵家や嫁ぎ先の伯爵家に逆らえるはずがない。何も言い返してくることがないと分かっているから、弱気な父でも強気に出られる。


外で待機していた護衛に逃げないようガッチリと両腕を持たれた母は、連行されて行く犯罪者のように見えた。


これが親子としては今生の別れだろうに、涙一つ出てこない。


「デリム伯爵からは花嫁が決まり次第送ってもらっても良いと来ている。そのまま連れて行け」


ミリヤのように逃すわけにはいかないと思ったのだろう。用意周到な手紙である。


「お父様……私がディアルガン様と結婚したいとワガママを言ったせいで……お母様と別れる事になり……本当にごめんなさい」


涙など簡単に出てくる。アリアが瞳から涙を流せば、父は慌てて抱きしめてくる。


「優しいアリア。こんな時まで私の心配をしてくれて……良いんだ。アリアの幸せは私の幸せ。その為の犠牲なら喜んで引き受ける」


父は自分の言葉に酔いしれる事で、母を売った罪悪感を打ち消しているように見えた。

だがアリアは気付かないフリをする。


(お父様。その言葉忘れないで下さいね)


実の父ですら駒にしてアリアは生きる。


いつも読んで頂きありがとうございます。

拙い文で、誤字脱字も多く……指摘して頂けて助かっております。


ブクマ・いいね・評価、もし良ければお願いします。1日二話更新などの意欲に繋がっております(´∀`*)

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