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ディアルガンの後悔〜ディアルガンside〜

暴れて暴言を吐こうと、王宮の騎士に敵うわけはなく、ディアルガンは自分の部屋へと押し込まれた。


まさに荷物のように運ばれ、生まれてから一度もそんな雑な扱いを受けたことがないディアルガンは、それだけでかなり疲弊した。


(こんなはずではなかった……)


ディアルガンの思い描いた誕生日パーティは、こんなものではなかった。


皆から祝福され、婚約破棄もミリヤなしで進み、アリアとの婚約を父達も喜ぶと思っていたのだ。


それが蓋を開けてみれば、ミリヤはなぜか公爵令嬢として当たり前のように居て、婚約破棄は……最悪の出来事だった。


「リディオンの嘘に決まっている……ミリヤと婚約を破棄したら、僕が王位を継ぐことはないなど……嘘だ……嘘だ……」


普段一人称は私と言うディアルガンだが、余裕がないのか年相応の「僕」になってしまっていることにディアルガンは気付いていない。


昔から同い年の弟が苦手だったディアルガン。

自分は正妃の息子で、第一王子だと言うのに、何をやってもリディオンの方が優れていて、父も側室の息子のリディオンをディアルガンより可愛がっていたように思う。


けれどいくら優秀でも、王位を継ぐのはディアルガンだと信じてきた。所詮側室の息子に過ぎないリディオンに、王位を継ぐのは不可能だと。


それなのに……ディアルガンは怒りに任せ、近くにあった花瓶を壁へと投げつける。


ガシャーンと言う割れる音と、控えていたメイドのキャアッと悲鳴をあげた声が聞こえているのに、聞こえていないような錯覚に陥る。


「なぜだ!!なぜだ!!僕は正妃の息子で第一王子だ!!ミリヤがいなくとも、僕が王位を継ぐべきだろうが!!!」


手当たり次第に物を投げるが、一向に怒りは収まらない。

気付けば周りから投げる物はなくなり、メイド達は物に当たらないよう部屋の隅で固まり震えていた。


一通り暴れ、多少の理性を取り戻しかけた時。

部屋にノックの音が響く。返事をする間も無く、ズカズカと部屋に入ってきた者に視線を向ければ、ディアルガンの母ルビアが怒りを隠すことなくディアルガンを睨みつけ、無言で目の前までやってきた。


バッチーン。


生まれて初めて母から叩かれた。


「お前は、お前はなんて馬鹿な事を」


ディアルガンの足元にしゃがみ込み泣き出す母を、ディアルガンはどうすればいいのか分からず見つめる事しかできない。


「は、母上……」


「これで全てが終わりです。王位はリディオンが継ぐことになるのでしょう……お前の馬鹿な行動のせいで……私は……私は……」


母の涙を見るのは久しぶりだった。

ディアルガンが幼い頃はよく、「リリアンさえいなければ…」と泣く事があったが、最近では落ち着いていた。

そう、ディアルガンの婚約が決まった辺りから。


(ま…まさか、ミリヤと結婚しなければ王位を継げないと言うのは……)


ディアルガンの背に嫌な汗が流れる。


そんなはずはないと自分に言い聞かせようとするが、リディオンの言葉が、あの時の貴族の視線が、母の涙が、その考えが正解だと言っていた。


「母上、まさかミリヤと結婚しなければ……僕は……」


「そうよ!!ミリヤと結婚しなければ、お前は王位を継げない!!」


ディアルガンの言葉を遮り、母が叫ぶ。


「な、なぜですか?僕は王と正妃の間に生まれた第一王子です」


「ディアルガン……お前は今まで何を勉強してきたの……」


勉強面ではリディオンに敵わないとは言え、年頃の令嬢令息と比べれば優秀だった。

だからこそ勉強ができる馬鹿もいるという事に気づく事ができなかった。


「この国を継ぐ条件は紫の瞳を持つ者か正妃が紫の瞳である者よ」


母の言葉に遠い昔教えられたような気がする記憶が蘇る。

とても大切な事だから絶対に忘れず、正妃となられる方を大切にしてくださいと教師から言われたのを思い出す。


そして自分の瞳とリディオンの瞳、ミリヤの瞳も思い出した。


(リディオンとミリヤは紫の瞳……僕の瞳は……緑……)


鏡で確認する必要もないほど、毎日見ている自分の瞳の色。

なぜこんな大事なことを忘れていたのか……。

おそらくだが、ディアルガンは瞳の色など関係なく、正妃の息子で第一王子の自分が継げると思い込んでいたのだ。実際バルティナ王国と隣り合う国では正妃の息子が王位を継いでいる。


「ひ、瞳の色など……」


関係ないと言いたかったが、母の気迫に押され言えなかった。


「王家を継ぐ者にとって、瞳の色がどれだけ大切か……お前が初めて目を開いた時、私がどれだけ失望したか!!それなのに、それなのに……リリアンの産んだリディオンは紫の瞳を持って産まれてきた!!お前に私の気持ちがわかるか!!」


「は、ははうえ………」


ショックを隠しきれないディアルガンに目も向けず、さらに追い打ちをかける。


「ミリヤと婚約が決まった時、私は心底安心したし喜んだわ……陛下は私の子に王位を継がせてくれると……リリアンの子ではなく、私の子に……」


母がリリアンに持つ激しい感情を、ディアルガンはこの時初めて知った。

しかしもう遅過ぎた。ミリヤはディアルガンとの婚約破棄に同意し、オリエーヌ公爵も賛同していた。


「僕は……僕は……王位を継げない……」


母の泣き叫ぶ声と、ディアルガンの乾いた笑いが部屋の中に虚しく響いた。


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― 新着の感想 ―
[一言] お勉強って大事ですね
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