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家を捨てる覚悟

ミリヤの母が死んだその日に、義母と義妹はやってきた。

元々ミリヤの母と父は政略結婚で愛はないのだと、幼いながらにミリヤは気付いていた。


結婚当時グレン家と母の実家のオリエーヌ公爵家は、政治的結びつきがお互いにほしく、互いの家の友好的印に結婚が整ったとメイド達がうわさしていたのを聞いた事がある。


父はこの結婚が心底嫌だったのだろう。


それを示すように、家にやって来た義妹アリアに対する父の態度はミリヤには対する態度とは180度違っていた。

誰が見てもアリアが父から愛されているのが伝わってくる。

母が亡くなる前から、いやそれよりももっと前の婚約する以前から関係があったのかもしれない……何故ならアリアの年齢はミリヤと同い年だったから。


そしてその日からミリヤの地獄は始まった。


広くて日の当たる部屋はアリアの物になり、ドレスも宝石も、母の遺品も、全てがアリアと義母のものになった。



父の行いに異を唱えた者やミリヤに味方した者は全て辞めさせられていった。



その中にはミリヤの乳母と乳姉妹もいて、最後まで一緒に出て行こう、公爵家に助けを求めようと言ってくれた姿が思い出される。


あの時に一緒に逃げていれば、こんな惨めな思いをすることはなかったのだ。

馬鹿なことをしたなと、前世を思い出した今ならば分かる。


現在侯爵邸に残っているのは、父と義母と義妹の言うことを聞く者ばかり。

ミリヤの味方は1人もいない。


そこでミリヤはある事を思い出した。


(……アンナが出て行く時に……)


乳姉妹だったアンナが、出て行く時に必死に何度も言い聞かせてくれた事がある。


あの時はもう辛い出来事の連続に心が閉じてしまっていたため、人形のようになっていたミリヤだったが……。


『ミリヤ様、昔2人で木登りをした木に白い鳥が時々止まっています。その鳥にミリヤ様の髪の毛を少し結び付ければ、必ず助けが参ります。忘れないでください。ミリヤ様は1人じゃありません』


前世を思い出す前のミリヤは、人形になりきる事で全てを心に閉じ込めた。


アンナや乳母のカリンはずっと心配してくれていたのに。それすら聞こうとしなかった。


けれど……前世を思い出したミリヤは違う。


(……絶対に負けない。幸せになってやる)


政略結婚だったが、生まれたミリヤの事を心から可愛がってくれた母レティア。

母が死ぬ間際に言っていたことも思い出す。


「ミリヤ、ミリヤ、私の可愛いミリヤ。幸せになってね」


最期まで母はミリヤの幸せを願ってくれていた。

だからこそ……幸せになるためにこの家を捨てる覚悟を持つ。



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