―62― バジリスク
冒険者ギルドを出た僕はダンジョンに向かった。
ベネノダンジョン。クリア推奨レベルはレベル30の冒険者が6人のE級ダンジョン。
早速、中に入って僕はダンジョンを進んでいく。
「クケコッコォーッ!」
早速、モンスターのお出ましだ。
◇◇◇◇◇◇
〈鶏蜥蜴〉
討伐推奨レベル:30
頭は鶏だが、体はトカゲに近い。コウモリのような羽を持っているが空を飛ぶことはできない。
獰猛な性格をしており、鋭いくちばしを使って襲ってくる。
◇◇◇◇◇◇
手にいれたばかりのスキル〈鑑定〉を使ってみる。
ちゃんと、モンスターの情報がメッセージとして表示された。
「羽があるのに、飛べないのか」
冒険者ギルドに書かれていた情報ではここまで詳細に知ることはできなかったし、〈鑑定〉スキルを手に入れて正解だったのかも。
鶏蜥蜴は鋭い足で、地面を強く蹴る。
速い……! けど、動きは単調で、読みやすい。
僕は攻撃をよけつつ、モンスターに短剣を突き刺して引き抜く。
「グコギャ……ッ」
と、鶏蜥蜴はうめき声をあげて僕のほうを見た。
ちゃんとダメージは入っているみたいだ。
これなら何度も攻撃すれば、いずれ倒すことはできる。
それから、数分の攻防を得て鶏蜥蜴を倒すことに成功する。
◇◇◇◇◇◇
レベルがあがりました。
◇◇◇◇◇◇
「よしっ」
僕は小さくガッツポーズをする。
この調子で、レベルを上げていきたい。
それから僕は道中で遭遇した鶏蜥蜴を可能な限り討伐をしていく。
素材をすべて回収すると持ちきれないので、魔石だけ剥ぎ取り袋につめていく。
その間、レベルも一つあがったし、成果は上々だ。
「そして、ここがボスエリアか」
ボスエリアに続く扉を見て、僕は息を呑む。
この部屋のボスは厄介な特性を持っているため、苦戦を強いられるのは必至。
とはいえ、ここに来た理由は初回クリア報酬だ。
ここまで来て引き返すなんて選択はありえない。
「グゴォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
扉を開けてるとボスモンスターが雄叫びをあげて出迎えてくれる。
即刻、僕は鑑定をおこなう。
◇◇◇◇◇◇
〈毒蜥蜴ノ王〉
討伐推奨レベル:47
強力な毒を持った蜥蜴の王。足が8つある。
体の周囲に毒をまとい、それを放つことで攻撃をする。
◇◇◇◇◇◇
討伐推奨レベルが47か。
レベルが未だ17の僕が敵う相手ではない。
とはいえ、それは目の前のボスを倒す場合だ。
僕の目的はあくまでも壁抜け。倒すことを考える必要はない。
「グゴォ!」
毒蜥蜴ノ王が体を震わせて、全身の肌にあるイボから広範囲に毒を撒き散らす。
「あぶないっ」
僕はすぐさま後ろに下がり、毒が当たらない場所まで下がる。
毒蜥蜴ノ王が毒をばらまいている間は近づけない。毒に当たればどうなるか、想像もつかないけど試そうとしないほうが賢明か。
とにかく、今は待つべきときだ。
それから僕は攻撃に当たらないようにしつつ、毒蜥蜴ノ王の動きを観察していた。
そして、動きに一定の法則性があることに気がつく。
まず、毒を周囲に撒き散らす。それで、相手にダメージを与えられなかった場合、毒蜥蜴ノ王は僕のいるほうに突進しつつ、再び毒を撒き散らす。それでも駄目な場合、部屋全体を包むぐらい広範囲な毒を周囲に撒き散らすのだ。
「逃げ場がどこにもないじゃん!」
最初、毒蜥蜴ノ王が部屋全体を毒で覆おうとしたとき、僕はそう叫んだ。
前後左右どこに行っても毒に巻き込まれる!
けれど、とっさのひらめきで僕はなんとか毒に当たるのを免れた。
そう、逃げた場所は上だ。
「危なかった……」
僕は短剣で、部屋の壁のくぼみに引っ掛けて、それにぶら下がるようにして高い位置にいた。
毒蜥蜴ノ王の毒は横の範囲は広いが、縦ならジャンプすれば逃れられる程度に薄い。
とはいえ、ジャンプじゃ一瞬しか高い位置にいることができないため、こうして壁に突き刺した剣にぶら下がることで、毒が消えるまで上空に滞在することができた。
「毒蜥蜴ノ王の周りから毒が消えている……」
その違和感に気がつく。
通常なら、毒蜥蜴ノ王は体の周囲に必ず毒をまとっている。
だけど、部屋全体を覆うほどの大量の毒を放出したばかり。この攻撃のあとなら、時間を待たないと再び毒を使うことができないのではないだろうか。
とはいえ、まだそう判断するには早い。
もう少し、動きを観察してみよう。
それから僕は毒蜥蜴ノ王の攻撃を何度も観察した。
「やっぱり部屋全体に毒を撒き散らした後、一定時間毒を吐くことができないみたいだ」
いつしか、そう確信を得ていた。
毒がない状態なら、近づくことができる。近づきさえすれば、攻撃は可能だ。
って、倒しちゃいけないんだった。
僕の目的は壁抜けを使って、初回クリア報酬を無限に回収することなんだから。
地面を蹴り、毒を吐けなくなった状態の毒蜥蜴ノ王に突撃する。
当然、毒蜥蜴ノ王は応戦するべく、僕に牙を向ける。
「くっ」
盾で攻撃をなんとか防ぎ、そして体重の軽い僕は壁まで吹き飛ばされる。
「〈回避〉」
そして、壁にぶつかる瞬間スキルを使った。
気がついたときには、僕は報酬エリアにいた。
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最近、ランキング維持が厳しいのです……。
今日は夜も更新します。
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