―43― 再戦!
「グォオオオオオオオッッッ!!」
扉を開けると、雄叫びをあげた人狼が出迎えてくれる。
人狼を倒せる基準はレベル8の冒険者が6人とされている。だから、今の僕では難しいだろう。
それでもボスエリアに入ったのは、レベルを上げたいというのもあるが、今の自分の実力を試したいから。
それに倒せなくても、僕の場合壁をすり抜ければ外に出られるし。
「グギャゥ!」
人狼が長い爪を振るう。それを僕は最低限の体の動きでさける。
「うん、ちゃんと攻撃を目で追えている」
これなら〈回避〉を使わなくても人狼の攻撃をよけれそうだ。
人狼は追撃を企てようと、爪を横に振るう。それを腰を下げてかわし、無防備になった胴体に突き立てるように短剣を押し込む――。
「あれ?」
短剣を確かに当てたはずだが、あまりダメージを与えられていないようだった。
剣でプラスされた攻撃力のおかげで、いくらかマシになったとはいえ、僕の攻撃力がたかが知れていることに変わりはなかった。
ブルンッ! と、人狼が大振りの攻撃を企てる。
「〈回避〉!」
うわっ、と思いながらスキルを発動させた。
僕の体が加速し、気がついたときには人狼から距離が離れた位置にいた。
「どうしよう……」
この様子だと、人狼にダメージを与えるのは難しそうだ。何度も同じ箇所に攻撃すれば、傷を負わせることはできるかもしれないけど、そんな戦い方をしたら先に短剣が壊れてしまいそうな気が。
「やっぱ、僕にはまだ早かったかな……」
少し強くなったぐらいで、浮かれすぎていたのかもしれない。
確かに僕は強くなった。けど、冒険者として最低限の強さを手に入れたに過ぎない。ようやっとスタートラインに立てただけで、客観的に見れば僕はまだまだ弱い。
「いや――」
まだ、諦めるには早いか。
もう一度挑戦して、それで駄目だったら諦めよう。
僕は地面を蹴った。
人狼も対抗して、僕に飛びかかる。
そして人狼の攻撃に合わせて、僕は高くジャンプした。
人間や魔物には耐久力というステータスが存在する。耐久力があるおかげで、ある程度の攻撃を緩和することができる。
だが、体のすべてが硬いとは限らない。
例えば、
「目はどんな生物にとっても弱点だ」
僕は短剣を人狼の右目に突き刺していた。
「グギョォオオオオ!」
右目が潰れた痛みで人狼が絶叫する。さぞ、痛いんだろうなぁ、と同情的な気持ちが湧く。けど、この隙を逃すつもりはない。
次の瞬間には、僕は人狼の左目に短剣を突き立てていた。
こうなったら、もう怖くはない。
そう思いながら、僕は高く跳ぶ。
次に狙う場所はもう決めてある。
体表は剛毛に覆われているせいで硬い。ならば、毛がないところを狙えばいい。そう、口の中だ。
両目を失った人狼はすでに戦意喪失しており、攻撃する素振りが見えない。
そして、おあつらえ向きに口を大きく開けてた。
その中に腕を通し、引き裂くように短剣を振り下ろした。
人狼は口から血を吐きながら倒れる。無事、倒せたようだ。
◆
「おぉ……!」
報酬エリアへ続く扉が開き、僕は感動した。今まで壁抜けを使っていたから扉が開くのを見るのは初めてだ。
◇◇◇◇◇◇
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
◇◇◇◇◇◇
メッセージが二つ並んでいた。
どうやらレベルが二つもあがったようだ。つまり、今の僕はレベル7ってことになる。
「やったぁ!」
思わず両手をあげてしまう。すごく嬉しかった。
それから人狼から魔石と素材を剥ぎ取り、報酬エリアに行く。
「クリアしたから、もう手に入れることができないんだよなぁ」
中に入っていたのは初回クリア報酬の〈旅立ちの剣〉。
もう人狼を倒してしまったので、二度目の報酬はそれ以外のものになってしまう。
「なんだか感慨深いなぁ」
あれだけ脅威に思えた人狼を倒せたことに、僕はそう感じていた。
◇◇◇◇◇◇
アンリ・クリート 13歳 男 レベル:5→7(UP!)
MP:94→96(UP!)
攻撃力:23→30(UP!)
防御力:57→61(UP!)
知 性:66→68(UP!)
抵抗力:64→66(UP!)
敏 捷:1160→1165(UP!)
スキル:〈回避〉〈剣技〉〈物理攻撃クリティカル率上昇・特大〉(修復中のため使用不可)
◇◇◇◇◇◇




