―27― トランパダンジョン
トランパダンジョン。
攻略難易度はD。レベル50の冒険者6人が攻略できる目安だ。
このトランパダンジョンの初回クリア報酬こそ僕の求めるものだ。
早速僕は中へと入っていった。
「うっ、早速でてきた……」
目の前に現れたモンスターを見てそう言う。
岩の巨兵。僕の愛用している〈岩の巨兵の小盾〉の素材を落としてくれるモンスターだ。
全身、岩でできている二足歩行の巨大モンスター。このトランパダンジョンにおいて、最も出現率が高い。あまりにも巨体ゆえに、一体いるだけでも通路が塞がれてしまう。
「とはいえ、今の僕なら問題ないのかな」
岩の巨兵が振り回した腕をジャンプすることでよける。そのまま岩の巨兵の腕の上に着地して、スタタタタッ、と腕を登る。肩まで到着してしまえば、あとはジャンプして飛び降りれば岩の巨兵の背中側だ。
岩の巨兵は慌てて後ろを振り向こうとするが、その動きがすでに鈍い。
その間に走ってしまえば振り切ることができる。
次に接敵したのは子鬼の群れだった。
もう少し難易度の低いダンジョンでも子鬼は出現するが、そのダンジョンでは一匹の子鬼としか接敵しない。
子鬼が群れで現れるのは、このトランパダンジョンならではの特徴だ。
子鬼は素早いのが特徴のモンスター。僕の高い敏捷にも、ついてこれるかもしれないと警戒する。
それでもダンジョンの奥に行くために、子鬼の群れに突っ込む。
複数方向から子鬼が襲いかかってくるが、それらから身をかわす。そして、群れの間をフェイントをかましつつ、ジクザクに移動することで脱することができた。
「追ってくる気配はないよね……?」
後ろを振り返りながら、子鬼の様子を伺う。追ってこようとするものもいたが、どうやら僕のスピードにはついてこられないようだ。
「道中のモンスターは問題なしか」
この調子なら、他のモンスターからも戦わないで逃げることができそう。
だが、このトランパダンジョンはもう一つの脅威が潜んでいる。
「うわっ」
僕は思わず歯噛みした。
足元には転移陣が光っていたのだ。
転移トラップ。
トランパダンジョンでは無差別に転移トラップが張り巡らされている。もし、踏んでしまうとどこかへランダムに飛ばされてしまうのだ。
気がついたときには、僕はどこかへ飛ばされていた。トランパダンジョン内のどこかであることは確実だが、具体的な位置までは見当もつかない。
「とりあえず、自分の位置を急いで把握することだよな」
僕はわきから地図を取り出し、周囲の道と照らし合わせようとする。ちなみに、地図はダンジョンに入る前、事前に購入していたものだ。
「うーん」
数分間、地図とにらめっこするが全くわかりそうにない。
これはまいったな……。
とりあえず前に進んでみるか。ボスの部屋から遠ざかる可能性もあるが、そのときはそのとき考えよう。
本来なら、このトランパダンジョンは転移トラップになんらかの対策をした上で潜ることが多い。
だが、〈回避〉しかスキルを持っていない僕にはそんな器用なことはできない。
だから転移トラップに引っかからないことを祈りながら進むしかない。
「ふぅ、やっと着いた……っ!」
それから数時間後、ボス部屋の手前に着く。
転移トラップに引っかかったのは、運がいいのかあの一回のみで済んだ。それでも大分遠回りになってしまったが。
おかげで、ボス部屋に着いた時点ですでに疲労困憊だ。
「まぁ、でも行かないって選択肢はないんだけど」
そう口にして、僕はボス部屋の扉を開けた。




