―19― 回避、連発する!
巨大女王蟻による、糸を吐く攻撃。
そして、無数の子供蟻が僕に群れをなして襲いかかってくる。
この二つの攻撃を僕は避け続けなくてはいけない。
「〈回避〉ッッ!!」
さっきから攻撃を避けるのにスキルを使わされていた。
純粋な回避能力ではこれらの攻撃を避けることが難しくなっていた。
「〈回避〉ッッ!!」
糸の攻撃と飛びかかってくる巨大子供蟻から避けるべく、僕はスキルを使う。
ホント、いつまで避け続けたらいいんだ。
冒険者ギルドにて得た情報には巨大女王蟻は僕を壁に叩きつけてくれそうな攻撃手段を一つだけ持っているはずだ。
その攻撃を引き出すにはどうしたらいい?
「〈回避〉ッッ!!」
敵の攻撃を躱しながら考える。
〈回避〉を無限に使えるわけではない。MPが切れたら、避ける手段がなくなってしまう。念の為、MP回復薬を常備してはいるが、飲んでいる瞬間を狙われるのは目に見えているため、MP回復薬による回復は期待できない。
だから、MPが切れてしまうまでに答えを出す必要がある。
「〈回避〉ッッ!!」
「〈回避〉ッッ!!」
「〈回避〉ッッ!!」
「〈回避〉ッッ!!」
「〈回避〉ッッ!!」
「〈回避〉ッッ!!」
「〈回避〉ッッ!!」
「〈回避〉ッッ!!」
「〈回避〉ッッ!!」
それから僕は〈回避〉を駆使しては攻撃を避け続けた。
それと同時に攻略法を考えていた。
だけど、一向にいいアイディアが出てこない。
「なんで僕を壁に叩きつけてくれないんだよッ!?」
と、思わず巨大女王蟻に対して叫んでしまう。まぁ、モンスターに僕の言葉が伝わるはずなんてないんだけど!
グニャリッ。
と、なにかを踏んだ感触があった。
その正体を確認して、僕は思わずこう口にする。
「しまったッッ!!」
巨大女王蟻が口から吐いては地面に散らばっていた糸を踏んでしまったのだ。
まずい、あれだけ警戒していたのに、なんで踏んでしまったのだろうか。
慌てて地面にへばりついた糸の塊から足をどけようとする。
なのに――ッ、
「まったく、足をうごかせない――ッ!」
糸はものすごい粘着力を持っているようでびくともしない
ヤバいッ、ヤバいッ、ヤバい――!
このままだと死んでしまう。
なんとかナイフを使って、糸を切り離そうとする。
それが間違いだった。
ナイフが糸に触れた瞬間、ナイフも糸にくっついてしまいナイフそのものを動かせなくなってしまった。
「うっ、うぐ……っ」
絶望のあまり思わず目に涙が浮かぶ。
死んだ。
これは本当に死んだ。
もうどうすることもできない。
「エレレート、ごめんっ」
涙目で妹に謝る。
こんなことならプランタダンジョンに入らなければよかった。無難にファッシルダンジョンで人狼相手にお金稼ぎをしておけばよかった。
後悔が押し寄せる。
だけど、今更後悔してもなにもかもが遅い――……。
「……あれ?」
ふと、違和感に気がつく。
僕は今、糸に足を絡め取られ動けない。
つまり、僕を殺す絶好のチャンスだ。
なのに、子供蟻の群れは僕に襲いかかるどころか、僕から離れるように動いていた。
まるで、なにかを恐れているような――。
「キシャァァァァッッッッッッッ!!!!」
巨大女王蟻の甲高い鳴き声で僕はすべてを察した。
どうやら僕は命拾いしたらしい。