―12― オークで壁抜け!
パイラルダンジョン。
攻略の目安はレベル25の冒険者が6人のE級ダンジョン。
そのダンジョンにレベル1の僕がソロでこれから挑む。
中に入ると薄暗い通路が迷路のように入り組んでいる。頭に地図は完璧に入っているため、僕は迷うことなく進んだ。
目的は、もちろんダンジョンボスを倒したら入手できる初回クリア報酬だ。
当然僕はボスを倒さないで報酬を手にする予定だけど。
「グギュル」
「うっ、いきなり現れた」
目の前に現れた人喰鬼を見て僕はそう呟く。緑色の肌をもっている巨体のモンスター。手には木製の棍棒を持っている。
このパイラルダンジョンにおいて、最も多く出現するモンスターだ。
「や、やっぱり怖いな……」
初めて相手するモンスターとこれから対峙すると思うと、身が竦んでしまう。狼ならたくさん相手したから、もう平気なんだけど。
と、そんなことを考えていたら、グルンッ! と、人喰鬼が棍棒を振り回してくる。
「うわぁ!」
叫びながら、僕は〈岩の巨兵の小盾〉で棍棒を受け止める。
「うぐっ」
重い一撃に思わず僕はうめき声を上げる。
だが、〈岩の巨兵の小盾〉のおかげで直接ダメージを負うことにはならない。それでも僕の体重が軽いせいだろう、そのまま壁へと体が叩きつけられる。
一応、狙い通りではある。
「〈回避〉」
壁に体が接触する瞬間、スキルを発動する。
すると、体が壁の中に吸収されるかのように向こう側へとすり抜けていった。
「人狼以外のモンスターでも問題なく壁抜けができることが、これでわかった……」
今まで人狼でしか試したことがなかったため、他のモンスターでも同様に壁抜けができるのか不安だったが、どうやら杞憂で済んだようだ。
これで、どんなモンスターでも攻撃された後、壁にぶつかる瞬間に〈回避〉を使えば壁をすり抜けることができる、ということが実証された。
ホント、なんで〈回避〉というスキルでこんなことが起こるのかは疑問だが、それは今考えたって仕方がないや。
「一応、ショートカットにはなったのかな」
僕は今いる位置を確認していた。
壁を抜けたことで、本来通るはずだった通路をいくつか飛ばすことができたのだ。
今後も壁抜けを活用してダンジョンを楽に進みたいが、そううまくはいかないだろう。
都合よくモンスターに吹き飛ばされるかつ、ショートカットができる方角に都合よく飛ばされる必要がある。
下手に反対側に飛ばされたのに〈回避〉を使って壁抜けしたせいで、入り口に近づいてしまうなんてことも起きかねない。
あまり壁抜けに期待しないほうがよさそうだ。
「もっと簡単に壁抜けができたらよかったのに」
そうすれば、この迷路のようなダンジョンを楽に攻略できるはずだ。
まぁ、ないものねだりしても仕方がない。
確実な方法でダンジョンを進もう。