表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/112

―10― 強奪

「な、なんで……?」


 僕は真っ先にそう問う。

 なんで、ギジェルモが僕の目の前にいるのだろうか?


「お前、最近あちこちの換金所に出入りしているみたいじゃないか?」


 ギジェルモはニタリと笑いながらそう口にする。

 初回クリア報酬のはずの〈旅立ちの剣〉を何度も換金したら怪しまれるのはわかっていたことだ。

 だから、僕は毎回使う換金所を変えていたはずなのに……。


「なぁ、この俺様になにを換金しようとしていたのか見せてくれよ」


 ギジェルモがそう言って近づいてくる。

 に、逃げなきゃ!

 そう判断して、後ろに振り向くが――。


「アンリ、逃げようたって無駄だぜ」


 後ろにはギジェルモと同じパーティーの冒険者が何人もいた。気がつけば、僕を囲むようにギジェルモの取り巻きたちが立っている。


「おいおい、お前がどうやって〈旅立ちの剣〉を手に入れんだ?」


 いつの間にか目の前にいたギジェルモが僕の持っていた〈旅立ちの剣〉を見て、そう口にする。


「ファッシルダンジョンをクリアして手に入れた……」

「おいおい、聞いたか! あの、アンリがダンジョンをクリアしたってよ!」


 ギジェルモが取り巻きたちに語りかけるようにそう叫んだ。

 途端、みんなが笑い始める。


「ガハハッ、雑魚モンスターすら倒せないアンリがダンジョンをクリアできるわけねぇよ!」

「弱いアンリとは誰もパーティー組みたがらないからなっ! ソロでクリアできるわけねぇだろ!」

「どうせ、まだレベル1なんだろっ。アンリちゃんよ」

「嘘をつくなら、もっとマシな嘘を考えてこいよっ!」


 と、皆が僕のことを馬鹿し始める。

 そして、ギジェルモが僕の肩を叩いてこう口にした。


「どうせ誰かから盗んできたんだろ?」

「ち、違う……っ」


 そう僕は否定しようとするものの唇が震えて声をうまく出せない。


「まぁ、どっちでもいい。この剣は俺が預かってやる」


 と、ギジェルモが強引に僕から〈旅立ちの剣〉を奪う。


「か、返して……っ!」


 と、僕が口にした瞬間――

 ガツンッ、と顔を殴られる。


「なに、俺に反抗してるんだ?」


 そうギジェルモが言うと、子分たちも一斉笑い出す。


「なぁ、アンリ。お前は俺たちに恩があるはずだろっ。だから、またなにか盗んだら、この俺に献上しろ」


 ギジェルモは僕の目をじっくりと見ながらそう言った。

 コクリ、と僕は無言で頷く。


「わかればいいんだ」


 僕の頷きを肯定と捉えたようで、ギジェルモは満足そうにニタリと口角をあげた。

 それからギジェルモは取り巻きたちを連れて、どこかへ行ってしまった。

 せっかく入手した〈旅立ちの剣〉は奪われたままだ。


「う、うぐ……っ」


 一人になった僕は泣きそうになるのを必死にこらえていた。

 こんな顔、妹には絶対に見せられない。


「強くならなきゃ……」


 ただお金を稼ぐだけじゃ駄目なんだ。

 冒険者として強くなろう。

 そう、僕は誓った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 普通に犯罪者じゃん。冒険者ギルド(または警察組織)は何してんの?これが放置されるのは原始時代の「万人の万人による闘争」状態。
[気になる点] >「どうせ誰かから盗んできたんだろ?」 盛大なブーメランして頭にアイスラッガーみたいに生やす趣味あるのか、こいつ。 他の人も書いてるけど、これはただの恐喝。 これが許される国家の背…
[気になる点] (雑魚をこき使う内々の契約はともかくただの犯罪の恐喝·強盗が見逃されるのは)イカンでしょ… 単純な冒険者の素行不良者ならともかく、それらがスルーされるって治安悪すぎか、あるいは冒険者全…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ