少女と幼馴染と新居
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2019/12/04 誤字報告ありがとうございます。修正しました。
リンとアリスは目の前に建っている立派な木造2階建ての家を見る。
窓は少し汚れているが目立った傷などは無く綺麗な外観だった。
庭もあるのかかなり大きい家だ。生活が落ち着いて来たら家庭菜園でもしてみると景観がよくなりそうだ。
マサヒトから受け取った鍵でガチャリと扉を開け家の中に入っていくリンとアリス。
中は掃除されているのか埃も殆ど溜まっていなかった。土足のまま家に上がろうとしたリンにアリスが待ったをかける。
「リン、ちょっと待って?」
「ん?家に上がらないの?」
「この家靴を脱いで上がるタイプだね、ここに靴箱がある」
リンはアリスの指差した先を見るとそこには靴を何足か置くことのできる木でできた棚が設置されていた。
「へー、そんな家があるんだね…でも、流石に廊下とか掃除する前は土足の方がいいんじゃない?」
リンは納得しつつもそう言った。確かに、マサヒトにより家は管理されており綺麗に保たれていたとはいえやはり埃は積もっており靴下だけで歩くのは気が引ける。
「ふっふーん、そういうと思って実はここに買ってあるのです!」
そういいアリスは【神様の箱】から2足の靴を出す。足先のみを隠すような形状をしており独特な靴だ。
「これはね、寮にいたときにも使ってたんだけど『すりっぱ』っていう家の中で履く用の靴なんだ!」
アリスは取り出した『すりっぱ』を1段高くなっている木の床に2足並べると自身の履いていた靴を脱ぎ『すりっぱ』に履き替え靴棚に靴をしまう。リンもアリスに倣い『すりっぱ』に履き替える。
そのまま廊下を進むと玄関近くの右側に階段がありその反対側のドアはトイレになっていた。トイレの横にはもう一つドアがあり中を覗くと洗面台と浴槽がある部屋がありどうやらここがお風呂のようだった。
突き当たりのドアまで進むとそこは居間と台所になっており、窓から差し込む光が室内を明るく照らしていた。
「いいじゃない、すごくいい家ね!」
「うん、家賃が高いかとも思ったけどこれなら安いぐらいかもね」
実際2階建てで広さもそれなり以上に広く、お風呂やトイレは魔術式で付いている。2階はまだ見てないが外から見た感じだと恐らく4部屋ぐらいはありそうだ。元々はハンター同士何人かで部屋を分け合い共同生活を行っていたのかもしれない。
「さてと、ちょっと埃っぽいし窓全部あけて軽く換気しよっか」
「うん」
リンとアリスは手分けして1階部分の窓を開けていく。
玄関先のドアもあけある程度風の通りがよくなったところで、アリスはリンに口元を服の裾で抑えておくように言うと魔法を使う。
「【ウィンド】」
風属性の魔法名を呟くとアリスを中心に風が吹き隅々に溜まっていた埃と共に澱んだ空気を外に排出する。アリスが魔法を止めると窓から新鮮な空気が入り込み、一気に部屋の中が浄化されたようにリンは感じた。
「【ウォーター】」
次にアリスは魔法で水球を幾つか作り出すとそれを魔力で操り床の上を滑らせる。すると見る見るうちに水球が黒く濁り、代わりに水球が通った後は綺麗な床が見えていた。廊下と居間の掃除を終えた水球を窓から外に出し庭先で解除する。バシャバシャという音が聞こえ庭の地面が濡れたことが想像できる。
「【ヒートウィンド】」
最後に魔法で温風を生み出し床を乾かすと簡易的な掃除を終える。その間、リンは終始驚いた様な顔で固まっていた。それもそのはずだろう、最初の風はまだしも、複数の水球を緻密な魔力操作で操作し床を綺麗にしただけでなく、風属性と熱属性の複合魔法で乾燥をもたった15歳の少女がやってのけたのだ。驚かない方が無理があるというものだ。
「もう何も言わないけどやっぱりアリスって規格外よね…」
「リンに褒められた!」
「アリスがどこを目指してるのか僕には分からないよ」
リンは苦笑いを浮かべそう言った。
「学校ではすごい刺激を受けたし、剣だけじゃこの先に行けないと思ったからね。強くなるためなら私にできることは全部やるよ」
「どうしてそこまで強くなろうと思うの?」
リンはアリスに疑問に思ったことをぶつける。
このご時世、魔物だけでなく盗賊や犯罪者等強くなるには越したことはないがアリスのそれはどこかもっと違う目標があるように感じられる。
「だって強くなくちゃリンを守れないでしょ?」
さも当然、まるでそうすることが当たり前のようにアリスが言う。
リンが口を開くよりも早くアリスが言葉を続ける。
「私にとってリンは恩人だし、幼馴染だし、一番大切な人なんだ。どんな脅威からでも守ってみせる」
「アリス…」
「まぁ、私が強くなりたいのはリンを守りたいからだよ」
真剣な表情から一転自嘲気味に笑うアリスに対しリンは何も言えなくなった。
リンだってアリスと同じだった。幼い頃からアリスにはたくさん助けられてきたし、一人でいることが多く、病弱で激しい運動ができずいつも本を読んでいたリンに対し何も強制せずただ傍に居てくれた。そんなアリスこそリンにとっては恩人だった。
「さて、じゃあそろそろご飯食べにいこっか!」
一つ手を鳴らすと今までの話の雰囲気を散らすように明るい声で言った。
丁度良いタイミングでリンのお腹が可愛らしく鳴った。恥ずかしくなって赤くなるリン。
「どうやらリンのお腹も訴えて来てるしね」
「っ~///」
リンは恥ずかしそうに顔を伏せるが小さく頷く。
開けていた窓やドアの戸締りを済ませると、アリスはそんなリンの手を取り食事をとるためにハンターギルドに向かった。
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