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神様チートは美少女《ヒロイン》のもの!  作者: 文月蜜夜
序章 少女と幼馴染とはじまり
4/35

少女と幼馴染と王都へ

今回いつもの倍以上長いです。

5400文字あります。分割も考えましたが、これ以上序章が長引くのもあれだったので…


2019/12/04 誤字報告ありがとうございました。修正しました。

 アリスが学院に行って今日で丁度3年。アリスから年に何度か送られてきた手紙によると卒業自体は2週間程前に終わっていると書いてあったのでそろそろ帰ってくるころだろう。


(早く帰ってこないかな…アリス…)


 リンは3日程前からそわそわしていて、母親の仕事を手伝っている裁縫にあまり手が付いておらず昨日からアリスが戻るまでは仕事をしなくてもいいと言われ休んでいた。なんとも情けない話だがそれだけ3年ぶりに会うアリスとの再会が楽しみなのを母親もわかっていたのかゆっくり休むようにリンに伝えていた。

 この3年で15歳になったリンは少し大人っぽく成長しており、長く伸ばした黒髪は背中の中程からウェーブになっておりふわふわとしている。胸も成長して村一番の巨乳と言われていた母を超えるほど育っていた。しかし、身長はあまり伸びなかったようでロリ巨乳といった感じになっていた。3年前に加護を授かって以来、病弱だった体質も少しは改善され今まで1ヶ月に1度は体調を崩していたが今では2ヶ月に一度程まで減っていた。


「あっ!」


 リンが村の入り口を眺めていると、1台の馬車が村に近付いてきていた。その馬車の荷台から見覚えのある黄金が飛び出す。華麗に地面に着地すると驚いている業者の横を物凄い速さで通り過ぎる。


「リィィィィイイイイイイイン!!!!!!!!」


 ものの数秒でリンのもとにたどり着くとリンを抱きしめる。

 3年前よりも成長したアリスは身長が伸びており今ではリンよりも頭一つ程身長が高くなっていた。学院にいた間に髪は纏め方を変えており、昔は肩甲骨の辺りまでストレートに伸ばしてあった金髪をハーフアップにしていた。胸はリンほどじゃないにしろ成長しており女性らしい柔らかさを抱きかかえられたリンに伝える。

 3年前ならあたふたしていたリンも久しぶりに再会した幼馴染の温もりを感じアリスのされるがままになっている。


「リンだ、本物のリンだ!クンクン、いい匂い♡」


 アリスが鼻を鳴らしてリンの匂いを嗅ぐ。体は大人に成長しているのに、3年前と変わらない仕草にリンは懐かしさを覚えクスリと笑う。


「もー、再会してすぐに匂いを嗅ぐのはどうなの?…クン、あ、懐かしい匂い…」

「とかなんとか言ってリンも匂い嗅いでるじゃん」

「えへへ、懐かしくて」

「…あー、やっばい元から可愛いリンすっごく可愛く見える」

「恥ずかしいから声に出さないで…」


 アリスに直球で可愛いと言われ赤面するリン。体を完全にアリスに預けている姿は恋する乙女以外何物でもない。

 というのもこの3年間でいかに幼馴染のアリスが大事だったか体験してきたためだ。その話はまた後程語ろう。閑話休題。


「リンも大きくなったね…」

「アリスこそ」

「胸もすごいね…私も育った方だけどリンはそれ以上だね」

「アリスそれセクハラだよ?でも、アリスに言われるなら嬉しいかな」


 アリスは抱きしめていた手を緩める。

 丁度業者の人が追いつきアリスと会話を始める。


「嬢ちゃん、荷物はどうするんだい?」

「家の方に運んでいただきたいので案内します。リン、後でリンの家に行くから待ってて」

「わかった、待ってる間にお母さんにアリスが帰ってきたって伝えるね」


 短く言葉を交わすとアリスは業者を連れ自分の家に、リンは母親にアリスが戻ってきたことを報告するために一旦分かれる。

 あまり大きくない村なので村の入り口からほぼ反対側にあるリンの家まで数分で着く。


「お母ーさん!アリスが帰ってきた!!」


 リンは勢いよく家の扉を開け家の中に居る母親に声をかける。

 仕事休憩中みたいでリビングで本を読んでいた。

 彼女の名前はリリア。リンの母親だ。黒髪をサイドテールにして先端を三つ編みにしている。垂れ目からは優しげな印象を受ける。


「おかえり、リン。アリスちゃん帰ってきたのね」

「ただいま!アリスが家に来るって言ってたよ」

「そうなの?じゃあお父さん呼んできましょう」

「じゃあ、私お茶とか準備してるね」


 そういうとリリアは家の裏手で農作業をしているであろう父親を呼びに行く。

 アリスは王都に私服と学生服以外は、道中で食べる食料品とお金ぐらいしか持っていっていなかったので帰ってきたとしても荷物はすぐ片付くだろう。

 そんなことを考えながらお茶を用意していると扉をノックする音が聞こえてきた。


「はーい、今開けまーす」


 リンはお茶を用意する手を止めると扉を開けに向かう。

 扉を開けるとそこには先程分かれたばっかりのアリスがいた。


「やっほー」

「早かったね、アリアさんとジンさんに引き留められなかったの?」

「哨戒任務で森に行ってるみたいで今はいなかったよ。夜にでも話そうと思ってるよ」

「そうなんだ、中入って待ってて。今お母さんがお父さん呼びに行ってるから」

「お邪魔しまーす」


 アリスは家の中に入るとキョロキョロと辺りを見渡す。

 どこか懐かしむような目つきでリビングを見た後椅子に座る。その間にリンは用意する途中だったお茶を用意する。


「自分の家でも思ったけど変わってないね」

「そう?実は小物が増えたりお皿とかも変わったりしてるんだよ?」

「あー、それはわかる気がする。私の部屋にも少しだけ小物増えてたもん」


 二人で笑いながら話していると裏口の扉が開く音がした。


「お、アリスちゃん久しぶりだな!」

「お父さん、おかえりなさい」

「ゾーラおじさん、ご無沙汰してます」


 アリスが立ち上がりながらリンの父親ゾーラに挨拶する。


「おう、ただいまリン。それにしてもアリスちゃんおっきくなったな!!」


 裏口から扉を潜りながら大男が帰ってきた。彼の名前はゾーラ。短く切りそろえた茶髪と日に焼けた肌。農作業で鍛えられた無駄のない使うための筋肉は一種の美しさすら感じる。彼はリンの父親だ。


「そうですか、ありがとうございます」


 アリスが嬉しそうに微笑む。

 その後、アリスが不在だった3年間を埋めるように話が弾む。

 アリスが学院でやっていたことや、リンがその間何をしていたか、他にも王都のお土産話や特産品のお土産を渡すなどしていたらあっという間に日が暮れてしまった。


「さて、もうこんな時間か…」

「ほんと、お夕飯の準備しなくちゃ」

「あ、待ってください!」


 夕方になり、夕飯の準備を始めようとリリアが席を立とうとするとアリスが待ったをかける。

 リリアがキョトンとした顔をしつも、真剣な表情をしているアリスの様子に表情を引き締めると席に着席する。


「どうしたんだい?アリスちゃん」

「ちょっと聞いてほしい話があるんです」


 アリスは一呼吸置くと居住まいを正す。


「1ヶ月程村に滞在した後王都に戻ろうと思うんです」

「え…」

「まぁ…」

「ほう…」


 上からリン、リリア、ゾーラの三者三様の反応を見つつアリスは話を続ける。


「王都の学校に行っている間学友たちとハンター活動をしていたのは先程話しましたが、王都に残っているパーティメンバーとこれからもハンターとして活動していきたいと思ってるんです」

「…なるほど、だがどうして私たちに話す必要があったんだ?」


 ハンター活動を続けたい旨を話すだけならゾーラたち親子に話す必要はないはずだ。リンに別れを伝えるために言いに来たというのなら納得できる流れだが、アリスの表情を見るとそこには覚悟が宿っているように感じられた。


「そうですね…それだけならですが…」

「ということは私たちに伝えなければいけない事情があったということだな」


 アリスは卓上に置かれたカップを手に取ると温くなったお茶を一口含み飲み込む。


「リンと一緒に王都に行く許可を下さい!」

「あら?」

「ほほう?」

「…へ?」


 リリアとゾーラは面白いものを見たという目で、リンは呆けた様な表情と目でアリスを見る。


(僕がアリスと王都に…?へ?なんで???)


 頭の中は困惑でいっぱいになりリンは上手く思考がまとまらない。その間にもアリスの話は続く。


「今の私があるのはリンのおかげなんです。だから、今度は私がリンを見たことない世界に連れて行ってあげたいと思ったんです」

「アリス…」


 アリスの言葉に自分がどう思われていたのか知り小さく言葉を漏らす。

 しかし、そこにゾーラの声がかかる。


「最近調子がいいとはいえ、リンは病弱だぞ?」

「王都で体調を崩したら1日中私が面倒を見ますし、王都には腕のいい治療師の知り合いがいます」

「お金はどうする?学生だったんだろう、苦労するんじゃないか?」

「それも問題ありません」


 そういいながら懐からカードを取り出す。


「ハンターギルドのカードです。Cランクゴールドまで来ていて後2~3ヶ月後にはBランクブロンズに上がれます。お金も今まで受けた依頼の報酬を貯金しているので問題ありません」

「その歳で一人前と言われるCランクしかももうすぐBランクに上がれるCランクゴールドか…すさまじいな…だが…」


 リンを置いてけぼりにゾーラとアリスの会話が続く。その横でリリアはニコニコと話を聞いている。一人慌てているのはリンだけだった。

 リンが親鳥とはぐれた雛鳥の様に困惑しているとゾーラとアリスは一旦話がまとまったのか同時にお茶を一口飲み一息つく。


「話はわかった。確かにアリスちゃんならリンを任せられるだろう…」


 ゾーラはアリスにならリンを任せられると言いながらカップを置くと悪徳商人がするようなニヤリとした笑いを表情に浮かべるとアリスに問う。


「だが、それは建前なんだろ?本音はどうなんだ?」

「3年間リンと離れた生活が辛かったので王都にリンと一緒に行かせてください!!!」


 アリスは一瞬の躊躇いもなく自分の本音をぶちまけた。


「ふ、フゥーァアッハッハッハッハァ!!!」

「うふふ、アリスちゃんたら正直ね」

「へ?へ?へ?」


 ゾーラとリリアの笑い声がリビングに響く。頭の処理能力を超えたリンが高笑いする両親と赤くなっているアリスの顔とを行ったり来たりする。


「笑わないで下さいよ!ほんとに寂しかったんですよ!?」

「フハハハハ!悪いな!そっか、そうだよな。その時は12歳だったもんな…」


 懐かしむように目を細めゾーラは静かに呟く。


「リンはどうしたい?」

「ぼ、僕?」

「アリスちゃんと王都に行きたいか?」


 ゾーラに問われリンは考える。

 行ったことも無い王都に思いをはせながらもチラリとアリスの表情を伺う。そこには真剣な表情でこちらを見ているアリスがいた。


(アリス…表情は真剣だけど手がそわそわしている…僕が付いて来てくれるか不安なんだろうな…)


 12年の付き合いの幼馴染の癖を見抜くと覚悟を決める。


(それに王都なら本で学んだ知識をさらに増やせるかもしれないし…)


「僕は…僕はアリスちゃんと一緒に王都に行きたい!」

「そうか、リンが決めたんだ。頑張りなさい」

「え、ついて行ってもいいの?」

「リンだってもう成人したんだ。寂しくはなるが娘が行きたいって言うんだ、親として送り出してやらないといけないだろ?なぁ、母さん?」

「勝手に決めてしまうんですから…」


 しょうがない人ね、といった笑みをゾーラに浮かべリリアはリンの方に向く。


「本当は行ってほしくないわ。王都は村と違って人が多いから可愛いリンが攫われないか心配だもの」

「お母さん…」

「でも、貴女がやりたいことを私は応援するわ。頑張りなさい」

「ありがとう…お父さん、お母さん」


 行きたいという気持ちを後押ししてくれる両親にリンは涙ぐむ。


「それに、いざという時はアリスちゃんがリンを守ってくれるでしょ?」


 ね?と言いながらアリスに向けリリアはウィンクを飛ばす。一児の母とは思えない可愛らしい仕草なのに大人の色気を感じる。


「任せてください!リンのことは私が責任をもって支えます!」

「あら、頼もしいわね」

「もー、僕15歳なんだよ!?アリスに守ってもらうほどやわじゃ…やわかもしれないけど!一応、大人なんだよ!!」

「プ、アハハ!リン、それじゃ子供みたいだよ」

「なッ—―!わ、笑わないでよアリス!!」


 リンの家に和やかなムードが流れる。


▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


—―1ヶ月後。


「王都でも頑張って、辛くなったら帰ってきてもいいからね?」

「リンは知識に貪欲だからな!王都では案外そういった職を手に付けるかもしれないな!」

「アリスに頼りっぱなしじゃいけないもんね、私なりに探してみる!」

「おう、頑張ってこい!」

「いってらっしゃい、リン」

「いってきます!お父さん、お母さん!」


 リンは挨拶を済ませると手荷物を抱え馬車に乗り込む。着替えや本などの大きな荷物は先に馬車に詰めているため身軽な状態だ。

 リンが馬車に乗り込もうとすると後ろからアリスが追いついてきた。


「リン!」

「アリス、挨拶は済ませたの?」

「うん、バッチリ!お父さんもお母さんもハンターだったから意外とすんなりハンター活動については許可がもらえたよ!」

「反対されてたらどうしてたのよ」

「拳で語り合ってたかな?」

「女の子なんだから…」

「いいじゃん、拳で語り合う親子会話があっても」

「普通は無いよ…」


 アリスの様子に苦笑いを浮かべながら、リンは馬車に乗り込む。その後に続いてアリスも馬車の縁に手をかけ軽い掛け声とともに飛び乗ってくる。

 高い身体能力に相変わらずアリスはすごいなーという感想をリンは抱いた。


「よし、じゃあいこっか!」

「うん」

「おじさーん、王都までお願いします!!」

「はいよー」


 業者の掛け声とともに馬を叩く音が聞こえてきた。それを合図に馬車がゆっくりと動き出した。

 二人を乗せた馬車は王都へ向けて移動を開始し、二人の物語もまたここから始まった。

ようやく1章入れる。

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