少女と幼馴染と魔物素材
1章そろそろ…
鑑定士になるための試験まで残り一週間を切ったリンは、自宅でアリスが討伐した魔物の素材を相手に練習を行っていた。
「アリスには感謝しないとね…」
そういうリンの目の前には多種多様な魔物の素材が並べられていた。
骨や鱗、牙に爪、角と毛皮、宝石のようにキラキラと光を反射するものなどなど。
「よし、試験もあと少しだし頑張るぞ」
リンは手始めに親指サイズの牙を手に取る。
質感や大きさ、色味から度の魔物の牙なのか判別していく。
「ウルフの牙も似たような感じだけど、これは辞典に乗っていたものよりもサイズが小さいからゴブリンの牙かな?」
リンはそういうとゴブリンの牙が置いてあった場所に敷いていた小さな紙を捲る。
そこには『ゴブリンの牙』と可愛らしい文字で記載されていた。
事前にアリスに魔物の素材を借りた際に一緒に準備して貰ったものだ。アリスは「リンのためならお安い御用だよ」と準備してくれたが素材の数だけ準備したのだ、相当な労力だっただろう。
「当たってた、これを用意してくれたアリスのためにも鑑定士の試験を突破しないとね」
そういうと、次の素材に手を伸ばす。
今度は紫色の宝石を手に取る。
「これは…確か『魔石』だよね?」
『魔石』—魔物の体内で生成される魔力が固まった石。強力な個体になればなるほど体内に大きな魔石を持つ。魔力を蓄えている特性から日用品や武器の素材にもなる素材だ。また、この魔石も魔物によって形や色が違ったりするため見分けるには相当の知識が必要となる。
「えっと…菱形の奇麗な形をしていて紫色の魔石はウルフ系統で、大きさから推測するに『フォレストウルフ』の物かな?」
ペラリと紙を捲る。
そこには『フォレストウルフ』の文字が書かれていた。
「よし!」
その後も1つずつ手早く、しかし丁寧に見定めていく。
集中して練習を行っているリンは、ふと顔を上げると窓から差し込む日が無くなっていることに気が付く。窓から外を見て時間を確認するとすっかり夜の帳が下りていた。
「いけない!アリスがもう帰ってきてる!夕飯作らなきゃ!」
急いで一階の台所に向かうとそこにはアリスが買ってきたであろう食事が机に並べられていた。
「あ、リンようやく降りてきた。もうちょっと遅かったら呼びに行くところだったよ」
「えっと、ごめん。ところでこの食事どうしたの?」
「リンが真剣に練習してたからね、近場の料理屋で買ってきたの!一緒に食べよ」
ニコニコと微笑みリンに食事をしようとアリスが語り掛けてくる。
「うん、ありがとうアリス」
「いいって、いつもは準備して貰ってるし試験まで残り少ないでしょ?私がやれることなら手伝うからさ、遠慮なく言ってよ!」
アリスの優しさに胸を打たれるリン。
「アリス…僕、試験頑張る。絶対、合格する!」
「そのいきだよ、リン!さ、冷めちゃわないうちに食べよ!」
「うん」
リンは改めて多くの人に、そして身近な人に支えられているのを自覚し試験に向けて決意を新たにするのだった。
次回、鑑定士試験。




