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神様チートは美少女《ヒロイン》のもの!  作者: 文月蜜夜
第一章 少女と幼馴染と共同生活
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少女と幼馴染と顔合わせ   

 リンが仕事を終え、ギルド内で待っていると入り口に見覚えのある茶髪が見えた。


「アリス!フローレンスさん!」

「お、リン!」

「あら、リンさん」


 リンがアリスとフローレンスのことを呼ぶと向こうもそれに気が付き近づいてくる。

 そこでリンは二人の後ろに更に二人の少女がいることに気が付いた。

 一人は肩幅より広いつばのある丸い帽子を被った水色の髪をした少女。その手には身の丈ほどある木でできた杖を持っており黒いマントを羽織っている。魔法使いの一般的な格好だ。少女はどうやら眠たいのか杖を持っていない方の手で目を擦っている。

 もう一人は聖職者風の衣装に身を包んだ燃えるような炎髪が特徴的な女性だ。釣り目がちな目はその女性のカッコよさを際立たせる。鉄でできた重そうなメイスを軽々持っている様子から力も強いのだろう。

 そんなことを考えているといつの間にか近づき背後に回っていたフローレンスがリンを抱きしめる。


「フローレンスさん?」

「お気になさらず」

「えっ」

「お気になさらず」

「ア、ハイ」


 鎧を着ているため以前のように柔らかさは感じないが、リンに気を使い優しく抱きしめているため痛みはない。

 リンはアリスに助けを求めるように視線を投げるが、苦笑いで返され諦めるしかないようだ。

 嫌ではないため仕方ない、と諦めるとリンは後ろの二人を紹介してもらうためアリスに声をかける。


「えっと、アリス?そちらの二人は?」

「紹介するね、こっちの水色髪の魔法使いがフェルマータ」

「ふぇるまーた、よろしく~」


 間延びした声で挨拶するとトテトテとフェルマータがリンに近づいてくる。

 その身長はリンよりもさらに低く、とても成人しているようには見えず子供と言われてもおかしくない。

 リンを下から覗き込むように見上げると鼻を鳴らす。


「くんくん」

「…何してるの?」

「…?いい匂い」


 それだけ言うとリンのお腹に顔を埋める。

 後ろはフローレンス、前はフェルマータに挟まれる。逃げ場はなかった。


「リンモテモテだね」

「くんくん、えへへ~」

「あぁ、リンさん可愛いですわー!」

「いや、何とかしてよ」


 そんな様子を見かねたのか炎髪の美女がフェルマータの首根っこを掴むと持ち上げる。


「コラ、フェル。初対面の人に抱き着くな」

「…いい匂い、だったから~」

「それアリスの時も言ってただろ…ったく…」

「えっと、ありがとうございます」

「すまんな、うちの馬鹿が突然抱き着いたりして」

「いえ、大丈夫ですよ」


 炎髪の美女が謝るのに対し、実害もなかったのでリンは素直に謝罪を受け入れる。匂いを嗅がれたのは流石に恥ずかしかったのか少し赤面していたが。


「なら、匂い嗅がせて~」

「それはダメです!」

「けち~」

「ケチじゃない」


 不貞腐れるフェルマータ。

 そんな彼女は首根っこを掴まれて宙ぶらりんの状態でリンの方に手を伸ばしている。


「全く…」

「あはは、えっと貴女は?」

「おっと、自己紹介が遅れたね。あたしはロゼッタ。ロゼッタでもロゼでも好きに呼んでくれればいいよ」

「はい、アリスの幼馴染のリンです。ロゼッタさん、よろしくお願いします」


 なんとなくロゼッタとは気が合いそうだと思ったリンだった。

 

「この4人が私のパーティだよ!」


 パーティメンバーを敵の攻撃から守る大盾使いのフローレンス。

 魔法剣士として剣と魔法で相手を翻弄する中衛のアリス。

 遠距離から高い火力の魔法で敵をなぎ倒すフェルマータ。

 傷付いた仲間を癒しつつ魔法使いに近寄ってくる敵をメイスで粉砕するロゼッタ。


 戦いに関しては素人であるリンから見てもバランスのいいパーティだと感じた。


「武装してるけど何か依頼でも受けるの?」

「うん、軽くだけど連携確認のために簡単な依頼にでも行こうかなって」

「気を付けてね、私は家で料理でも作って待ってるね」

「わかった、なるべく早く帰ってくるね」

「あれ?アリス、家買ったのか?」


 ふと、ロゼッタが疑問を口にする。


「そういえば言ってなかった、リンと王都に家を借りたんだー」

「おぉ~、今度泊りに行ってもいい~?」

「いいよー」

「へー、あたしも泊まりに行ってもいいかい?」

「もちろん!リンもいいよね?」

「僕はいいよ、もっと仲良くなりたいし」

「わたくしも!わたくしも行きますわ!」

「じゃあ、今度お泊り会だね!」


 リンはしばらくアリスのパーティメンバーと雑談した後、依頼に行くアリスたちを見送ると今晩の夕食を考えながら帰路に着くのだった。

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