少女と幼馴染と実践訓練
—―アリスがウルフの群れ相手に無双している頃、リンはというと…
「こちらの依頼ですね、ランクを確認いたしますので腕輪の提示と魔力認証をお願い致します」
リンはディビアーノの後ろで仕事の流れを確認していた。
あの後、ディビアーノによる質疑応答を終えたリンは実践に入るために仕事の流れを実際に見て確認していた。
「それでは、無事の帰還を祈っております」
並んでいたハンター達を手早く捌いていく。知識で覚えてるだけでは到底無理な仕事をディビアーノは簡単にこなしていく。これは長年の経験がないとできないことだろう。
昼過ぎの並んでいたハンター達を捌き終えるとディビアーノはリンに向き直る。
「大体は今見ていただいたような業務になります。午後からは一部の仕事をリンさんに任せますので頑張りましょう」
「はい、よろしくお願いします」
「さて、それでは少し遅いですがお昼ご飯にしましょう」
そういうとディビアーノは受付の席から離れ、ギルドの奥に進んでいく。
表の食堂兼酒場になっているギルドの飲食場所だが、そこは基本的にハンター達や街の人達が使う部分で受付嬢やギルドの職員などは職員専用の飲食部屋がある。
また、職員に関しては昼ご飯をギルド側が提供してくれるため無料で食べられるのが好印象だ。
「私は…そうですね、今日はヒラゾコの煮付け定食にでもしましょうか」
「僕はこの前お魚食べたしお肉にしようかな」
「でしたらレッグチキンはいかがでしょうか?」
「おいしそうですね、じゃあそれにします!」
リンとディビアーノは雑談を交わしながらお昼に食べるものを決めると空いている席に座る。といっても、昼時を過ぎているせいか職員の姿はまばらでどこの席も空いており好きな席に座れる状態ではあったが…
リンとディビアーノは雑談をしているとおいしそうな匂いを立ち昇らせ料理が届く。
「わぁ、おいしそう」
「あ~、リンさんが可愛くて仕事の疲れが癒されますね…」
「あはは、ありがとうございます」
ディビアーノの恍惚な表情に苦笑いを浮かべてお礼を言うリンは冷めないうちに料理に手を付ける。軽く焦げ目がつくぐらい焼かれたチキンは皮がパリパリになっており、たれの香ばしい匂いが非常に食欲をそそる。
しばらくお互いに黙々と食事を取る。
数十分もすると食事を食べ終え、食後のティータイムに洒落込んでいる。
「さて、もう少し休憩したら実際にリンさんにも仕事を手伝って貰いますね。とは言っても、最初ですので私の手伝いを中心に仕事を覚えていきましょう」
「はい」
ディビアーノはリンの返事に満足そうに頷くと食器を持ち上げ返却口に置く。リンもそれに倣い食器を片付けディビアーノの後を追う。
そこから先は帰ってきたハンターたちの受付で大忙しだった。
ディビアーノの手伝いで魔力認証から読み取られた依頼の達成の有無を確認し、報酬を渡していく。
「こちら今回の報酬になります。また、魔物等の素材がありましたら鑑定受付までお願いいたします」
マニュアルと他の受付嬢の働きを見て自分の中で適宜行動を修正しながら対応していく。
そんなこんなで夕方まで働きリンは初日を終えたのだった。
「リンちゃんお疲れさまー」
「はい、お疲れ様です」
「明日もよろしくねー」
リンは1日の業務を終えると裏方に行き。着替えていると同じ時間に働いていた先輩の受付嬢が挨拶しながら通り過ぎていく。ギルドは緊急性を考え夜間も交代で何人かの職員が働いている。
と、言うものの夜間は主に酒場として経営が行われているので滅多なことではギルドが閉まるということはない。
「リンさん、お疲れさまでした。この後はアリスさんを待ちますか?」
「ディビアーノさん、お疲れ様です。そうですね、ギルド内で待とうと思います」
「では、私も一緒に待ちましょう」
「いいんですか?」
「えぇ、私としてもかわいい後輩のリンさんと話せる貴重な機会ですから」
微笑むディビアーノにリンは見惚れる。内心、普通にしてれば美人なのになと思ったリンだったが声には出さないのだった。
そんな感じで所々残念さを出すディビアーノとリンは雑談をしながらアリスの帰りを待つのだった。
1章の終わり考えているけどまだまだ先になりそう。




