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神様チートは美少女《ヒロイン》のもの!  作者: 文月蜜夜
第一章 少女と幼馴染と共同生活
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少女と幼馴染と戦闘

ちょっとグロい描写があります。

戦闘だからね、流血表現ぐらい出てきてもしょうがないよね。

 リンが受付嬢としての研修を受けている間、アリスは王都近郊の森にやってきていた。

 今回受けた依頼はウルフの討伐で、繁殖期に入り森にすむウルフたちが増えており王都に向かう旅人や商人、ランクが低く実力の伴っていない冒険者などが多く被害にあっている。

 今回の依頼はウルフ15頭の討伐だ。

 アリスは森の中を慎重に進んでいく。周囲の音とウルフ特有の獣臭を感じ取るため、五感を十全に使う。とは言え、アリスはハンターをやっていく中で嗅覚や聴覚などの五感が普通の人よりも優れている。


「うーん、風はそんなに吹いてないか…」


 指を水で湿らせ風向きを調べるが、どの方角にも指先が冷たくなることはなく。つまり、風がほとんど吹いていないということだ。

 獣系の魔物に共通する特徴として五感が鋭いという特徴がある。特にウルフ系の魔物は嗅覚が鋭い。風上に自分が立ってしまうと風によってにおいが流れてしまうと位置がばれてしまう。そういった意味では風が吹いていないのはアリスにとって好都合な反面、ウルフ特有の獣臭もわからないということだ。


「ウルフぐらいなら襲ってもらう方が手早かったんだけど…しょうがない、痕跡から探そうかな」


 アリスは森の中を進みながら、地面に足跡がないか、草木に傷付いていないか、等を確認しながら進んでいく。


「見つけた…」


 アリスが小さな声でつぶやくと剣に手をかける。

 木々の隙間より小川が見え、そこに5匹ほどのウルフの群れがいた。どうやら獲物を狩った後らしく、ウルフたちの足元にはかなりの量の血痕と肉片、骨が散乱している。

 好都合だった。

 獲物の近く、それも食べ終わった後で辺りには血の臭いが充満している。ウルフの鼻先にも血がべったりと付いているため本来であれば鋭いウルフの嗅覚が鈍っているということだ。

 音をたてないように、しかし最短の足取りで距離を詰める。


「【身体強化】【属性付与(エンチャント)(ウィンド)】…」


 自身の身体能力を上げる無属性の魔法と、剣の切れ味を上げるために風属性の付与魔法を使う。

 準備を整えると呼吸を整えていく。獲物を食べ終えた後のウルフたちは完全に油断している。

 5匹のウルフが小川を上流に上っていこうとアリスがいる下流側から顔を背けた瞬間—―アリスが駆け出した。


「ガルァッ!」


 アリスが飛び出した瞬間の木々の音でウルフ達が振り向くが、既にアリスは一番後ろを歩いていたウルフの間合いに入っていた。


「シッ!!」


 裂帛の気合の元、神速で剣が振り抜かれる。

 スパンッ!とどこか心地よい音を響かせ、死神の鎌がウルフの命を断ち切る。

 頭の付いていた断面からは(おびただ)しい血が噴き出るが、それより早くアリスの剣は2体目をとらえていた。

 2体目が胴体を真っ二つにされた時にはウルフ達も散開しており、3体のウルフがアリスに対し睨みを利かせ唸り声をあげる。

 警戒され、しかも周りを囲まれた状態では迂闊に動けないとウルフたちは狩の本能から考えたのだろう。実際、その方法は間違いではない。


 しかし、それも通じるのは同格レベルのみだ。圧倒的格上には通じない。


「ハァッ!!!」


 地面が陥没したかのような音を響かせ、砲弾のよりも速くウルフ達に接近する。

 接近されたウルフは辛うじて反応したものの顔を横に断たれ絶命する。

 アリスの右に位置していたウルフが飛び掛かりアリスを襲うが、身を低く屈め突進したアリスがウルフの下を通り過ぎる。

 すれ違いざま振り抜いた剣がウルフの腹を掻っ捌き、地面に内臓をぶちまける。即死だ。

 残る一匹のウルフが勝ち目がないと悟ったのか、アリスから離れるように小川と飛び越え逃亡しようとする。


 それを見逃す程アリスは甘くない。


 神様の箱(アイテムボックス)から投げ槍を取り出すと右手で構えウルフに向かい放つ。

 槍は真っすぐに飛ぶとウルフを後ろに着弾し、ウルフの内臓をズタズタに傷付け腹から穂先が腹から飛び出しウルフの体を地面に縫い付ける。ピクピクと震えている様子を見るに一撃での絶命ではないもののもう残り少ない命だろう。

 アリスも小川を渡り、苦しませないように剣でウルフの首を断ち切る。

 剣に付着した血を手入れ用の布で奇麗に拭き取ると、投げ槍も回収する。ベッタリと付いた血を小川で軽く洗い、布で拭き取ると神様の箱(アイテムボックス)にしまう。


 ウルフの死体から素材を回収すると一か所に集め火属性の魔法で死体を燃やす。

 魔物の死体を燃やした際、肉の焼けるにおいにつられて魔物がやってくるため即座に離れるのが常識だがアリスは魔物が寄ってくるのを逆に利用する。

 ウルフ系の魔物が鼻が良いことを利用し、探す手間を省く作戦だ。

 確かに、その作戦は魔物を集める上ではかなり有効だろう。


 —―しかし、この方法には致命的な欠点がある。


 ガサリッ、と草木を掻き分けのそりとウルフが姿を現す。

 1体、また1体とどんどんと数が増える。反対側からもウルフ達が現れ、四方八方からウルフが現れアリスは完全に包囲される。


 アリスの取った作戦の致命的な弱点。それは、集めすぎる(・・・・・)ということだ。


 アリスを包囲するウルフの数—―20匹。

 においに釣られ、さらに増えるだろうが既に先ほどの4倍もの数のウルフが集まっている。


「さすが繁殖期、数が多いね。だけど、数ぐらいでどうにかなると思わないでよね!」


 怖気づくことなく、アリスは一息のもとウルフ達に接近すると蹂躙を開始した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 —―2時間後。


 小川にはウルフ達の死体が大量に転がっていた。

 アリスも無傷というわけではなく、露出していた頭部や皮・金属で作られた防具以外の部分にはウルフの鋭い爪によって掠り傷を負っていた。多少なりとも苦戦を強いられたのか肩で息をしているがすぐに呼吸を整える。


 結局、アリスは最初の5体の他に37匹のウルフの相手をし合計で42匹のウルフを討伐していた。


「はぁー…疲れた…。家に帰ってリンに癒されたい…」


 疲れを言葉に出しつつも素材を素早く剥ぎ取っていく。

 少し奥の方まで探索していたので帰るころには夕飯時になるなと考えながらアリスは作業を進めていくのだった。

あー、満足。

次回からはまたリンの方に戻ります。

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