少女と幼馴染と今後
フローレンスと別れた後リンとアリスは昼ご飯を食べ終え、再び街の散策を開始していた。
リンとアリスの家は正門から見て東側にあるので今回は西側の地区を主に散策していた。王都は扇状に広がっており、下の方の平民が住む区間は相当広く、流石に1日ですべてを回ることはできないので今回は西側だけの探検になる。
「フローレンスさんいい人だね。ちょっと抱き着き癖には困るけど…」
「まーねー、かれこれ3年近い付き合いだけど結構な頻度でパーティメンバーには抱き着いてくるね」
「聞きそびれてたんだけどアリスのパーティって何人なの?」
「私を入れて5人だよ。前線に出て戦うのが私とフローレンスで、遊撃1人、魔法と支援が2人だね。近いうちにパーティメンバーでの仕事がありそうだしその時にでも紹介するね」
「5人なんだね…意外と少ない?」
「そんなことないよ、寧ろ私たちの場合学園で知り合ってたのもあるから運がよかったかな」
ハンター同士がパーティを組む時よほどの理由がない限り10人を超える大人数でパーティを組むことはない。それは報酬で揉めるからだけでなく、単純に統率が取れないからだ。それこそ5年以上同じハンターとパーティを組んでいれば自然と連携や意思の疎通が取れるだろう。しかし、大半パーティが即席で作られ、寧ろ固定メンツでのパーティとなると数は少ない。中にはクランと呼ばれるパーティとは違い何十人ものハンターで大所帯を作り、その中からパーティを組むといったことをやっているハンターたちもいるがそんなことができるのはよほど有名なハンターか、何年も活動してきて徐々に規模が広がってきた者たちだけだ。更に、クランに入るにしても実力が伴っていなければならないので新人冒険者はクランに入ることもできず、パーティを組む際は自然とギルドにいるほかのハンターを誘うようになる。そうすると、連携もあったもんじゃなくお互い最低限邪魔にならないようにフォローしあうのがやっとというわけだ。
その点、アリスたちは学園での学友たちで集まって作ったパーティで、学園に居た頃から連携などを行ってきたためパーティの練度は非常に高い。つまり、アリスたちは運がいい集団ということだ。
「その辺りの理由もしっかり勉強しておいた方がよさそうだね」
「たくさん覚えることありそうだし頑張る」
ふんすっ、と鼻を鳴らしリンは気合を入れる。
そんな様子のリンを見て、アリスはとりあえず今夜からでも自身の知ってる知識をリンに教えていこうと思うのだった。
「そういえば僕が採寸しているときにアリスはディシオさんと二人で何してたの?」
「あぁ、私の今のハンターランクがCランクのゴールドだっていう話はしたよね」
「うん、僕のお父さんとお母さんを説得するときに言ってたね」
「そうそう。それでね、なんと今回Bランクのブロンズに上がる話が出てるんだ!」
「そうなの!?おめでとう、アリス!」
リンはアリスのランクが上がることに自分のことのように喜ぶ。
「まぁ、ディシオさんから出される依頼を何件かこなしたらの話だけどね」
まだ決まってないよ、とアリスはリンに笑いかける。
少し恥ずかしかったのかリンは頬を赤く染めゼリーのようにぷるぷると震える。
「リンかーわいい!」
「わぷっ!」
人通りの多い正午過ぎだというのにアリスは関係ないとばかりにリンに抱き着く。
その様子を見た人々は仲のいい友人なのかなと思うのが8割。女の子同士の抱擁に尊さを感じ拝むのが1割。気にせず過ぎていくのが1割といった様子であまり気にして無い様だった。
「ちょっと、恥ずかしいよアリス」
「じゃあ家に帰ったら抱き着いていい?」
「まぁ、家ならいいよ」
((((家ならいいんだ、尊い))))
拝んでた人たちの意思が一致した瞬間だった。
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「ところでこの後はどうするの?」
「んー、特に考えてないから王都を回るか、家に帰るかかな?リンはどうしたい?」
「僕は…もっとアリスが住んでた街を見てみたいかな。時間があればアリスの通ってた学校も見てみたいな」
リンはもっとアリスが体験したことや過ごした日常について知りたいと思っていた。自分の知らないアリスをもっと知ってアリスのことを好きになりたいのだ。
「学校は今は長期の休みに入っていて誰もいないかな。それと、基本的には部外者は立ち入れないから外観を見るだけになると思うよ?」
「基本的には?」
「臨時講師の人とか清掃員、食堂の人とかは立ち入ってたしそういった人になれば入れるかな」
「ギルド職員だと希望はなさそうかな…」
残念といった様子でリンは呟く。
「まぁ、ギルドでも鑑定を担当していた人は素材を見分ける知識の講習で授業に来てたし、もしかしたら希望があるかも」
「ほんと!よし、明日からがんばろ!」
やる気を出したリンはその後アリスとともに街を見て回った後、家に帰ってアリスからパーティについて学ぶのだった。




