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神様チートは美少女《ヒロイン》のもの!  作者: 文月蜜夜
第一章 少女と幼馴染と共同生活
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少女と幼馴染と受付嬢

今年の更新はコミケに行くのでこれが最後ですね。

皆さんよいお年を。

 リンとアリスが寝床を共にした朝。

 疲れからかぐっすりと眠ることのできたリンは、ここ最近では一番いい目覚めを迎えることができていた。

 カーテンを開け、窓から差し込む朝の陽ざしを浴びていると隣で寝ていたアリスが身動ぎをしゆっくりと起き上がる。まだ眠いのか2、3度目を擦るとリンの方を見つめぼーっとしている。


「おはよ、アリス」

「んー?ぅんー…」

「相変わらず朝は弱いね」


 カクンカクン、と頭が舟を漕ぎ始める。放っておくと2度寝してしまいそうだ。

 そんなアリスをリンは助け起こし洗面所に連れていく。


「ほら、アリス?顔洗うよ?」

「んぁー…」


 ぼんやりしながらアリスが蛇口に魔力を流し込む。

 蛇口に付けられた魔石から水が溢れ出す。手で触れてみるとよく冷えた水が沸いてきており、これならば目が覚めることだろう。


「ほら、アリス顔洗って?」

「ぅん…」


 両手に水を貯め、パシャリ、と水をかける。

 何度か繰り返している内に目が覚めてきたのか細められていた目が見開く。


「起きた?おはよう、アリス」

「うん。リン、おはよう!」


 改めてリンとアリスは挨拶を交わすと朝の支度を始める。

 寝癖の付いた髪を水と手櫛で梳かし、髪を整えていく。アリスは手慣れた様子で己の髪をハーフアップにしていく。


「朝ご飯はパンとサラダとスープで良い?」

「んー、昨日買ったハム使えないかな?」

「そうだね、パンに卵とハムを挟んでソースをつけてサンドにしよっか」

「うん、じゃあ私スープとサラダ準備するね」

「ありがと」


 リンとアリスは二人で手分けして準備を行い食事を済ませると、身支度を整えギルドに向かった。

 昨日の昼過ぎよりも通りは賑わっており、朝から露店の人たちが客引きのため声を上げている。


「すごい活気だね」

「王都だし人が多いからね、それに商業区は朝は冒険者が色々買っていくことも多いからね、稼ぎ時なんだよね」


 そんな会話をしていると、ハンターギルドに辿り着いた。

 外だというのにギルド内からはガヤガヤとした喧騒が聞こえてくる。どうやら朝は昼よりも賑わっているようだ。


「んー?何か起こってるみたいだね…」

「何か?」

「うん…たぶん喧嘩か言い掛かりかな…?」


 「とりあえず入ってみよう」アリスはそう言うとギルドの扉を開く。

 扉を開けるとギルドの喧騒がよりうるさくなった他、男の怒鳴り声が聞こえてきた。


「どっからどう見たって『リシア草』だろうが!!?」

「いえ、これはよく似てますが回復効果のある『リシア草』ではなく、毒性の強い『デリシア草』です」


 納品を行っている受付嬢の方と、レザー系のアーマーに急所部分に鉄板をあてがったハンターらしい格好をした男が言い争いをしていた。どうやら依頼であった納品物の間違いがあったようだ。

 ハンターの男は頭に血が上っているのか語気を荒げ、今にも殴り掛かりそうな剣幕で捲し立てる。対して受付を行っている女性は努めて冷静に対応している。


「これってよくあることなの?」


 リンは目の前で繰り広げられている騒動に対しアリスに問いかける。


「まぁ、たまにあるね。あの人のハンター証…私が腕に付けている腕輪のことね。革製でできていて木でギルドマークが彫られているものはEランクの証拠だね」


 男の腕を見て見ると革製でできた腕輪を付けている。手の甲側には木製でできたバックル

の様なものが付いており、羽と花の紋章が彫られている。この羽と花の文様が全世界共通のギルドマークだ。


「そうなんだ…止めなくていいのかな?」

「んー、あの人は大丈夫だね。元Bランクシルバーの凄腕の冒険者だったらしいよ?なんでも依頼中にケガしてしまって第一線からは退いたらしいけど、今でも後進の育成とかに力を入れているから」


 リンとアリスが話していると、ズダァンッ!!、と床にモノを叩きつける音が聞こえた。リンがおっかなびっくり音のした方を見ると、そこには先程暴言を吐いていた男が関節を決められ取り押さえられていた。


「全く、カッとなったからと言って女性に手を上げるのはどうなんですか…」

「いでででで!!!クソ離しやがれッ!!!」

「はぁ…すいません、どなたかこの人取り押さえて貰えますか?その間に兵士の方を呼んできます」


 ギャーギャー、と取り押さえられている男が喚くが受付嬢は意に介さず近くにいたハンターに抑えていてくれるように頼む。そこからはスムーズに兵士を呼ばれ、結局男は最後まで喚きながら兵士に連行されていった。傷害未遂なので厳重注意と罰金、ハンターとしての活動を暫く禁止されるぐらいの刑罰で済まされるだろう。


「おや、アリスさんではありませんか」

「ご無沙汰してます、ディビアさん」

「えぇ、お久し振りです。ところで、そちらの方は?」

「何度か私の話に出てきた幼馴染です」

「初めまして、リンと言います」


 リンは先程の光景を見ていたので少し委縮してしまいながらも自己紹介をする。


「貴女が噂のリンさんですね、私はディビアーノ。是非とも愛称のディビアと呼んで下さい」

「待ってください、噂って何ですか!?アリス!!?何話したの!!??」

「リンが可愛いって話した」

「えぇ、話されました。そしてアリスさんの話通り可愛いですね。抱きしめてお持ち帰りして妹にしたいです」


 唐突に変なことを口走るディビア。

 アリスは神妙に頷く。


「え?ディビアさん、今なんて?」


 リンが一体あなたは何を言っているんだという顔でディビアを見る。


「おっと、口が滑ってしまいました。して、今日は一体何のご用件でしょうか?」

「え?無視?無視なの??」


 リンの言葉を聞かなかったことにして話を逸らすディビア。

 リンはそんなディビアに追及するが、ディビアはアリスの発言をどこ吹く風といった様子で華麗にスルーする。


「ちょっとリンのことでディビアさん…というかギルドにお願いしたいことがあるんですよ」

「アリスも無視するのかー、そーなのかー」


 若干リンがおかしくなっているが話は進んでいく。


「ギルドにお願いごとですか?いったい何でしょう」

「ほら、リン?自分の言葉で伝えよ?」

「はっ!」


 現実逃避していたリンがアリスの呼び声で戻ってくる。


「ディビアさん、お願いがあります」

「はい、なんでしょうか」


 リンは一つ深呼吸をして自信を落ち着かせる。


「私をギルドで雇ってくれませんか?」

年末年始はちょっとお休みいただこうかと思います。

次回更新は1月3日です。

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