少女と幼馴染とお買い物
今回短い。
ギルドから出たリンとアリスは家とは反対側の大通りを進んでいた。
こちらの通りにも衣服や雑貨を取り扱っている店舗があり、リンは右へ左へ視線を彷徨わせながら街並みを物珍しそうに歩く。村にはなかった店もあり、目に入る全てが新鮮だ。
「色々あるね」
「そうだね、ハンターや平民は基本的にはここの通りで生活に必要なものを全て揃えてるね」
「お貴族様たちは?」
「貴族街に高級店舗が構えてあってそこで買ってるみたいだね」
「そうなんだ」
3層に分かれている王都エステルでは王城・貴族区、住居区、商業区に分かれており今リン達がいるのが商業区だ。日用品からハンター御用達の道具店まで幅広い種類の店が所狭しと構えている。また、露店も豊富で役所の許可さえ取れれば売るものは自由だ。時々、ダンジョンの掘り出し物やハンターをやめた際に余っていた道具を格安で売ってくれる店もある。
そんな中リン達は布団店に来ていた。
「いらっしゃいませ~」
カランコロン、と鈴が鳴り来客を知らせると奥のカウンターから間延びした、どことなく力が抜ける声で挨拶される。
ふわふわの白髪を肩口で切りそろえた女性は垂れ目で柔和な笑みを浮かべている。ここの店長なのだろう「気に入ったものが~あれば~教えてね~」なんとも緩い雰囲気で接客してくれた。
リンとアリスは言われた通り店内を見渡す。白い普通の布団やシーツもあれば若干色が付いたものや柄の付いた布団などたくさんあった。
「見て見てアリス」
「ん?どれどれ…花柄か、いいね!」
「こっちには…スライム柄?」
「水玉柄だね」
「布団って結構種類あるんだね」
「村にいた頃は柄も何もないただの布だったからね…」
「アリスアリス!この布団ふかふかしてるよ!」
「中に鳥の羽が詰めてある布団だね。結構お高い布団なんだよ?」
「そうなの!?傷付けないようにしなきゃ…いや、他の布団にも傷つけるつもりはないけど…」
そういい二人は布団を物色していく。
結局二人はお揃いの花柄の布団を買うと一旦アリスの『神様の箱』に布団を仕舞う。事前に『神様の箱』の中身を家に出してきていたのですんなりと仕舞うことができた。技能レベルに依存して容量の増える『神様の箱』はアリスのレベルで二人分の荷物を詰め込んで余裕があるのはすごいことだ。大抵は自分一人無いし半人分ぐらいの荷物を仕舞えたらすごいと言われるほどのものだ。
「さて、お布団かったし次は食料品の買い出しかな」
「夜は新居で食べるの?」
「うん、久々にリンと一緒に料理作りたいと思って」
「あれから僕も料理する機会が増えたし美味しいもの作るよ」
「私もたまに自炊してたからリンに美味しいもの食べさせてあげるよ」
そんな話をしながら店を見て回る。
「昼は重めなメニューだったから夜はあっさりとした食事にしようかな…」
「いいね、お豆腐とかいいかも」
「後はトマトのサラダとか作ろうかな」
どういったものを買うか、リンとアリスが相談していると雑貨屋さんが目についた。
そこには木製や鉄製の食器が置かれていた。
「食器も買わないとね」
「あ、私も学生時代は基本的に学食だったし食器買わないと!」
店先に並んでいた食器を手に取り木製のものを物色していく。木製と言うこともあり、下手な柄を付けるのではなく木目を使った細工がされており美しい。
ふと、リンが顔を上げ店内の奥の方を見ると白い輝きを見せる皿があった。
吸い寄せられるように店の奥に足を運ぶと棚に白色の皿が置かれていた。なめらかな曲線は見る者を魅了し、あしらわれた花の模様は派手すぎず皿を飾るように装飾されている。
「綺麗…」
「リン?あぁ、いたいた。何見てたの?」
「あの白色のお皿を見てたの」
リンが指差す先をアリスは視界にとらえる。
「あぁ、陶磁器製のお皿だね」
「知ってるの?」
「うん、パーティ組んでるって言ったでしょ?その中の一人がお貴族様のご令嬢なんだよね、昔家に招待されたとき見たことあるよ」
「へ?」
「学校で知り合って意気投合して今もパーティ組んでるんだよ。彼女も領地に帰ってるみたいだしまた戻ってきたときに紹介するね」
「あ、うん。お願いするね?」
なんとなく気になることが沢山出てきたが、いずれ説明してくれるとアリスが言ったのでとりあえず置いておこうと思ったリンだった。
「買えないことはないけど高くて使わないと思うからお揃いで普通の食器買おう」
「そうだね、とりあえず木製のものでいいかな」
二人で話し合いながらお揃いの食器を選んだリンとアリスは、家に帰る道中で食材を買い込み帰るのだった。




