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神様チートは美少女《ヒロイン》のもの!  作者: 文月蜜夜
序章 少女と幼馴染とはじまり
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少女と幼馴染とある日のこと

百合もの新作。

じっくり色々書いていきたい所存。

 のどかな草原で黒髪の少女が地面に座り本を読んでいた。本には鉱物・植物大全集と書かれており様々な石や植物の名前が書かれている。真剣な表情で1ページ1ページに書かれている絵と解説文を読んでいる。


「リーーーーン!!!!」

「うわぁ!?」


 そこに、砲弾のような勢いで金髪の少女が黒髪の少女・リンに抱き着く。

 リンは本に集中しており金髪の少女に気が付いておらず、突進の勢いそのまま地面に押し倒される。柔らかい草がクッションになり二人を受け止める。


「もー!アリス!!毎回言ってるけど危ないでしょ!!!」

「えへへ~、くんくん、今日もリンはいい匂い~」

「ちょ!?待って、匂い嗅がないで!?」


 アリスと呼ばれた金髪の少女がリンの胸元に鼻を埋め匂いを嗅ぐ。リンの胸は12歳にしては発達しており柔らかな感触をアリスの頬に伝える。

 アリスはリンの胸に顔を埋めるのが好きだった。いい匂いはするし、柔らかいし、村で唯一同年齢の幼馴染だし、何より口ではやめてといいながらも何だかんだ優しく包み込んでくれるリンが好きだったからだ。


「なんで毎回僕に飛びついてくるの?」


 リンが疑問の声を漏らす。

 アリスは頬ずりをやめ顔を上げると花が咲いたような笑顔を見せる。


「リンが好きだから!」


 その言葉は一直線の好意だった。混じりっ気の無い純粋な好意。

 周りの子供より落ち着いていて、近い年の子と比べても大人っぽくみられるリンも少し頬を染める。


「しょうがないなー」

「えへへー」


 顔を赤くしながらも微笑みアリスの頭をなでるリン。撫でられているアリスはとても嬉しそうな顔でされるがままになる。

 なんてことはない少女たちの日常だ。


「そういえばそろそろ見極めの儀があるね!私にはどんなスキルが宿ってるんだろうね!」


 見極めの儀。12歳になる年になった子供たちが町にある教会で受ける儀式のことだ。その儀式では、己の身に宿ったスキルを把握し、神様に見てもらうことで加護を授かれるというものだ。ただ、必ずしも加護を授かれるわけじゃない。神様からの加護を授かるにはそれ相応の才能が必要となる。実際、加護を授かったものは歴史に名を残す英雄だったり賢王だったりする。

 つまり、加護を授かった人はその生涯において何らかの形で結果を残すということが確定しているようなものだ。それが良いことなのか悪いことなのかは別としてだが。


「アリスは色んなこと器用にできるし、剣術だって大人顔負けの実力じゃない。絶対いいスキルが宿ってるよ!」

「そうかなー、そうだといいなー!」


 リンは微笑みながらアリスを煽てる。

 実際、アリスの剣の腕前は相当なものだ。幼い時から好奇心が旺盛だったアリスは、ハンターであった父親から剣を教わっていた。アリスの父親も最初は、娘にも自衛できるぐらいの実力があればいざという時に助かる確率が上がると思いアリスに剣を教えた。しかし、アリスの才能はすさまじく1つのことを教えられるとそこから様々なことを学んでいった。まるで空っぽの容器に水を注ぎこむかの様に1滴も残さず教えを蓄えていった。今では自警団の大人と互角に戦えるほどだ。

 リンに煽てられ上機嫌なアリスは、ニコニコと笑い本当に楽しみで仕方のないといったような様子だ。


(でも…僕は…)


 しかし、先程まで微笑んでいたリンの表情には作り笑いが浮かべられている。

 アリスはそれに気が付かずリンのお腹を跨いで座っていて、楽しそうにどんなスキルが宿っているのか呟いている。。


(アリスにはほぼ確実にたくさんのスキルと加護が宿っているはず…それなのに僕は…)


 暗い表情を浮かべるリン。

 そこにはアリスに対する嫉妬にも似た思いがあった。


(どうして、僕には目立った才能がないんだろう…)


 リンはアリスと違い才能の無い自身に悩んでいた。

 幼い頃はアリスとの差を少しでも埋めようとして才能がないなら努力をしようとリンは思っていた。そのため走ってみたり、棒を振って剣術のまねごとをしたりもした。しかし運が悪かったのか、リンは体が弱く走ったり棒を振ったりするとすぐに息切れを起こしてしまう病弱な体質だった。酷い時には運動をした後熱を出して寝込んでしまうこともあった。その度にアリスに心配され、体調を崩すと毎日看病にアリスが家を訪ねて来ていた。

 自分の幼馴染であるアリスは剣術の才能に恵まれ体も病弱ではなかった。幼い頃はアリスを恨んだりもした。何故、自分には才能がなかったのかと。何故、病弱な体に生まれてしまったのかと。

 しかし、そんな思いもアリスと接している内に徐々に薄れていった。

 よく笑う彼女は、リンの黒い思いを太陽のような笑顔で薄れさせていってくれたのだ。

 1年もすればすっかり二人は仲のいい幼馴染になり、リンは体が駄目ならと8歳の誕生日から毎年誕生日には新しい本をねだりその身に知識を蓄えていった。今では、村の大人たち顔負けの知識を身に付けておりちょっとした自慢だったりする。

 そこまでしていてもやはり悔しいものは悔しいのだろう。時折、アリスに対して劣等感を抱いたりもしてしまう。


「僕はアリスと違って病弱だし、特別な才能なんてないと思うな…」


 少し皮肉めいた口調でアリスに呟きを漏らしてしまう。

 言った後、内心しまったと思いつつも時間は戻らない。リンの呟きを聞いたアリスはキョトンとした表情を浮かべた後、リンの言った言葉を理解したのか真面目な顔になってリンの肩を掴む。


「リンだって凄い知識いっぱい身に付けてるんだから絶対いい結果になるよ!リンのことが大好きな私が保証する!もし、リンが駄目だったら私が神様をとっちめてやるんだ!」


 ふんすっ!と、鼻息を荒くしながらアリスが思いを声に出す。

 今度はリンが驚いたような顔をすると吹き出す。


「あ!リンなんで笑うの!!」

「ご、ごめん…ふふ、ふふ…」

「もー、笑わないでよー!!」

「ふふふ、あはははは…ありがとね、アリス。お陰で少し元気出たよ」


 リンは、にこやかに笑うと笑いすぎたのか嬉しかったのか目元に浮かんだ涙を拭う。


「そんなに笑いたいなら…こうしてやるー!!」

「ちょ!アリスまっ――うひぃ、ふは、あはは!わ、脇!くすぐるのやめ、あはは、あはははははは!!!」

「ほらほら、ここがいいの?ここがいいんでしょ!?」

「うひひ、ほ、ほんとにやめ――あはははは!だめ!笑いすぎて、あはは、くるし、あははははは!」


 快晴の空の下の平原に少女たちの笑い声が響いた。

お読みいただきありがとうございました。

この話は10割性癖でできています。


PS.誤字報告ありがとうございます、修正しました。(2019/11/19)

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