望んで得られたもの
『DC-Shop』の操作は通販サイトっぽくてすぐに理解できた。
大きいカテゴリで『地球』『異世界』『ダンジョンマスター専用』『買取・変換』に分かれている以外は。
そして注文が決まって最後に会計すると、家具類とか配置の必要な大きい物以外は画面からドサドサ出てくる。
『地球』カテゴリは説明不要だろう。
買える品物に制限付いてるのと値段が10倍くらいな以外は。
あとは当然この端末の前でないと使えない。
炊き出しをする場合には、ここで材料買って『有限倉庫』に入れて持って行かないといけないようだ。
最初に鉛筆・消しゴム・ノートなどの筆記用具を買ったら、無○用品みたいにメーカー名やロゴのないものだった。
鉛筆の芯の硬さを示すアルファベットすら書いてない。
試しに良く食べていたバニラアイスを買うと、『海苔』と呼ばれる黒塗りかあちこちにあった。
「これ中身は大丈夫なんだよな?」
「恐らく、知識チート封じですね。
見てください原材料だけでなく、バニラビーンズのイラストまで消えてますよ」
念のため『鑑定|(雑)』で見てみる。
スキルはルプから頭突きをされた後で使えるようになった。
毒は無いな、問題は味だ。
「うん、生前食べてた時の味だ」
乳脂肪分満載とは違うラクトアイス。
高級アイスはあれはあれで美味いが、くどくないこういうのがいい。
『異世界』カデゴリは、異世界中のものが買える。
こっちは生物だけが除外されてるようだ。
人間とか凶暴な馬とか買えても困るが。
宝箱に入れる用なのか、魔法効果付きの武器防具、魔道具や秘薬とかもある。
値段は効果に応じてピンキリ。
料理は屋台で扱うようなものだけは売っている。
肉の串焼きが銅貨2枚か3枚。
主にウサギ系が多いが、『鑑定|(雑)』を使うまで材料不明な蛇やカエルやオオカミなどの謎肉が混じってる。
スープや煮込み系は銅貨3枚から5枚。
料理は高いのか?、と思ったら普段は容器を返せば銅貨1枚か2枚返金する仕組みらしい。
昔のガラス瓶のジュースみたいだ。
あれ、通販だと返せない?
味付けは基本的に塩のみ。
たまにバジルやニンニクなどの香草、トマトやナンプラーっぽいものがあるがこの辺の料理ではないようだ。
「いくらでも入るけど、食事の必要が無い代わりに満腹感もないのか‥‥」
「ルプもですが、食べたものは100%魔力に変換してますので。
お米じゃないと不完全燃焼起こすとかもありません」
光画部なアンドロイドになった覚えはないぞ。
『ダンジョンマスター専用』カテゴリは端末の予備のマウスやキーボード。
他はさっきの『魔法大全-初級編-』の様に日本語でかかれた資料本らしい。
ルプが居なかったら普通に必要なものだな。
あとは便利グッズと『DCを払うことで発動する特殊機能』。
便利グッズはSFのTV電話みたいに通信できる特殊な魔道具とか‥‥ただし発動にダンジョンの魔力を使ってるらしく親機はダンジョンの中でしか使えないとか使用に微妙な制限が付いてる物が多い。
特殊スキルはダンジョン周辺の天気を弄ったり、上空に巨大な幻影を表示して演説したりとか、コアルームだけ残して自爆とか‥‥これもなんか微妙だ。
『買取・変換』は硬貨や品物を持ってくればDPに変換できるというものだ。
ダンジョンの機能として自動消化して進入者の死体とか持ち物をDPに変換できるが、それ以外で変換する場合に使うものらしい。
ちなみに1DC=銅貨1枚=100円くらい、地球から取り寄せても消費税は取られない。
金髪9Pが言ってたように、この世界は工業化が進んでなく衣料品や金属製品が高い。
銅貨10枚=銀貨1枚、銀貨10枚=角銀貨1枚、角銀貨100枚=金貨1枚。
それと通常の取引は『袋=100枚』という単位もある。
なので銅貨1袋と言えば銅貨が100枚入った袋の事になる。
◇◆◇◆◇
ここで仕入れて転売すれば人も集まって輸送料分丸儲けと思ったが、これは駄目だろう。
『地球』カテゴリには非電源の機械式レジも売っていてるが、バーコードPOSではなく全部手打ちで清算だ。
大人数が入れるようにするには商店街の個人商店ではなくスーパーマーケット形式。
しかしそれはレジ・品切れ品の補充・万引き防止的な警備とかが要る、人員的に無理だ。
召喚モンスターに閉店後に品出しをさせたとしても、営業中は俺だけ‥‥3歩譲ってルプとの二人で回さないといけない。
店の規模広さをコンビニレベルまで落とせば可能だが、今度は集客という面で駄目だろう。
さらに大量に押しかけられたら混乱しかない。
おまけに『ダンジョンマスター』という標的が店員やってたら、襲撃されてさらに酷い混乱になる。
『ダンジョン攻略目的』と『それ以外』の人をうまく分離しなければならない。
無人レジとは行かないが、再現可能な仕掛けでの自動化が必要だろう。
ここでもルプが役に立った。
具体的な仕掛け自体のアイテアは出してくれないが、それが実行可能なら端末を弄ってマップを構成する部品を作ってくれる。
もっとも実行可能でも効果や発動条件を複雑にすると、設置するDPが跳ね上がるので使えないものになる事も多いのだが。
◇◆◇◆◇
椅子の背もたれに体を預け大きく伸びをする。
「やっと終わったー」
何とかカウントダウン終了前に滑り込ませた。
設計を終えて検査も合格した。
転移者ということを隠すたの設定も決め、衣装を用意して演説の原稿も書いた。
「ひとまずお疲れ様ですマスター。
これで最寄の『ソルトバレー』の出方にもよりますが、今から6時間ほど‥‥ダンジョン開設して午前9時の鐘が鳴り終わるまでは一息つけますね」
「ああ、ホント疲れたよ。
午前9時って『二の鐘』とか言うんだったか?」
防壁のある大抵の場所では午前6時が一の鐘で鐘を一回鳴らす、午前9時が二の鐘で鐘を二回鳴らすという風に、3時間ごとに時報の鐘を鳴らす。
午後6時の五の鐘が一日の最後の鐘で同時に閉門になり、開門は一の鐘|(午前6時)だ。
「はい。
それまでに『幻影の仮面』の調整を忘れないでください。
先に仮眠しては駄目ですよ」
「ああ、解ってる。
自室にいるから、冒険者が来るか時間になったら呼びにきてくれ」
「了解しましたー」
「頼んだぞ」
コアルームにルプを残して監視を任せて。
生前のアパートを再現した自室に引き上げた。