望んだものの対価とは? 1
「なぁ、これってかなり高待遇ではないのか?」
「そう見えるのは、まだ『ダンジョンマスター』の本質を知らないからです。
さて私から『相談や助言』を受ける対価のお話、つまり『ダンジョンマスター』として生きるデメリットの話です」
思わずゴクリと息を飲んだ。
「軽いものから順にいきましょう。
まず『ダンジョンマスターは四六時中命を狙われます』。
ちなみにこの世界は一日が24時間きっかり、1ヶ月は30日、一年は360日でうるう年はありません」
金髪9Pグッジョブ。
これで腕時計も問題なく使える。
「不眠で不老なら対処は余裕じゃないかな?
どうしてもって時は、罠とか召喚モンスターに任せればいい。
神様級に強い『ルプ』もいるしな」
「いい忘れてましたが、私は『ダンジョン滅亡を妨ぐ戦闘』は禁じられています。
主神様が言う『制限が付く』とはそういう意味です。
最も私の仕事はあくまで『相談やサポート』ですから」
「なっ!?」
最初からあてにしてたわけでもないが、上げて落とされると辛い。
しかし俺が希望したのは『相談』だけだ、これは仕方が無いだろう。
ルプに悪びれた様子は無くニコニコ笑ってる。
「それでは説明を続けますね」
◇◆◇◆◇
この世界で『ダンジョンマスター』に敵対するものとして『冒険者』と『兵隊』と『野良化物』がいる。
『冒険者』は『冒険者組合』所属してるものを指す。
狩猟と採取メインにする『ハンター』、化物退治や護衛をメインにする『傭兵』、『賞金稼ぎ』『トレジャーハンター』とか‥‥何種類かいるが、ドブ浚いから化物退治までの何でも屋だ。
ダンジョンに良く来るのは、その内の『賞金稼ぎ』と『トレジャーハンター』。
ダンジョンコアを壊すか、残りDPがなくて蘇生できないダンジョンマスターに止めを刺した者には、引き継いで『ダンジョンマスター』をやるのかの確認が行われる。
これを拒否した場合にドロップする『迷宮討伐の証』には高額な懸賞金が懸けられている。
無名のダンジョンの証でも、本物ならば高額な懸賞金が貰えるから彼らはダンジョンに向かう。
薬草や希少食材の採れる階層があれば『ハンター』も来る。
他の狩猟目的な『ハンター』やモンスター退治の『傭兵』は滅多にダンジョンに来ない。
召還モンスターを倒すと光の粒子になって消えてドロップ品が落ちる――つまり解体して肉や素材を得られない。
同じ理由で、討伐証明部位も取れない故にモンスター退治目的の傭兵も来る事が少ない。
罠とかの障害もないだけに、大抵はダンジョン以外で狩をした方が稼げるからだ。
『兵隊』は言うまでもないだろう。
基本的にダンジョンはモンスターの巣窟だ。
モンスターがあふれて暴走する『氾濫』が起きれば大惨事が起きる。
権力者が命令すれば、地域安全の為に『氾濫』が起きる前に『兵隊』を送りダンジョンを滅ぼすという流れになる。
『野良化物』は‥‥野生の化物の群れだ。
ルプが言うには、この世界には総指揮官たる『魔王』が今のところ居ない。
なので基本的に化物は自然発生や普通に繁殖で増える『野良』なんだそうだ。
しかしある程度知能のある化物ならば、ダンジョンコアを壊しダンジョンマスターに成り代わろうと欲するのが本能らしい。
◇◆◇◆◇
「‥‥という訳で、マスターはこれらに対抗すべく、施設を作りモンスター召還して守らせるとかしなければなりません」
「なぁ。
通路を50cm四方にして、コアルームにはルプしか通れないようにするとかは駄目なのか?」
「人間が這って通るには、もうちょっと広くないと駄目だと思いますが‥‥それは端末のメニューの中の『設計検査』に聞いてください」
「これか‥‥何々?
『実際にDPを消費して建築する前に、入口からコアにたどり着く事が可能かどうかチェックします。
最低でも『人類の5人パーティ』がコアにたどり着けないと判定されると、ダンジョンの魔力循環に支障が出るために建築できません』」
「それでも、隠し扉やスイッチで開く壁で、封鎖するのはアリなはずですよ。
あとはトラップで追い返すとか」
「ああ、昔に見た映画にもそんな遺跡があったなー」
巨大な石の玉が転がって追いかけてくるとか、釣り天井とか‥‥。
ゲームなら『* おおっと *』とか。
敵意がなく、ただ迷い込んだ人にはそんな即死トラップは使いたくないな。
「マスターは迷ってますね。
私は禁じられてるので、護衛的な協力はできません。
マスターが直接戦い傷付ける事に罪悪感があるなら、トラップやモンスターに任せたら良いじゃないですか?
この世界での人間の法でも『強盗や暗殺者を返り討ちにしても無罪』なんですよ」
「『正当防衛』か‥‥それは解ってる」
殺すのは最後の手段だから、なるべく避けたい。
かといって、『殺すくらいなら殺されたほうがマシだ』などと言う博愛主義者なつもりはない。
その時になって、できるかどうかは別だが‥‥。
「主神様は中立神なので、無意味に殺し回るのでなければ許してくれますよ。
ダンジョンマスターに殺すことを禁ずるのは『肉食獣に殺生せずに死ね』と言うのと同じですから。
それに『バレなきゃ犯罪じゃないんですよ』」
「小ネタを挟むのはいいが、声マネはやめような」
そっくりすぎてなんかムカ付く。