あなたがマスターです!
ところでおなた様は誰です?
『ますたぁ』とは?」
いあ!いあ!?
それにしても、最初の部屋で神様の刺客に消されるのかこれ何てくそゲー?
「それは後で説明します。
まずはこれを見てください、神様からです」
どこからか封蝋付きの黒い封筒を取り出して、こちらに差し出す。
ちなみに封蝋は金色だ。
神様からの使いと言うことは天使か‥‥。
手は指の無いぬいぐるみの手なのによく持てるなとか思いながら受け取り。
尻餅の体勢をやめ、胡坐をかいて手紙を開封する。
手紙は普通の白い便箋に手書きだ。
「日本語だな、念のために読みますよ‥‥
『この世界の主神です
まだ生物に認知されていないので、名前の無い神です。
ひとまず同胞の説明不足・措置不足に謝罪を。
【街の近くに出現】【なるべく夜に】【制限付きで地球のものを通販】という願いは申請どおり許可を出します。
しかし【神様に相談する権利】というのは却下です。
本来ならそれは【信仰の深い者がランダムな内容で神託を受ける】とか【人柱的な生贄をささげた上で、神様の都合と気が向けば願いを叶える】とか、そういう類の実行不能なものです。
本来ならば申請する神様の方でそれを話して止めるべき内容であり、不手際があったとしか言いようがありません。
とはいえ
対価を貰うだけで完全に却下するには不憫すぎるので、【代行措置】として配下の者を送ります。
答えられないものがあったり色々と制限がありますが、チュートリアル的な説明や補足的なサポートは受けられるはずです。
こちらも多忙で、配下のものに丸投げという形になってしまい申し訳ないです。
それでは良い異世界生活を。
追記:あなたが【金髪9ピー】と呼んでる者は訓告の上、後でシメておきます』」
‥‥よかった、神様怒ってない上に刺客も送られてなかった。
「それで、あなた様が説明とかサポートする『配下の者』って事でいいのかな?」
「あいっ!」
のっぺらぼうは右手を上げて中性的な声で元気に答えた。
「それから。
マスターはマスターなのですから、もっとフランクに話してください」
「マスター? それって俺の事か?」
「あいっ!
あなたがマスター、ここの『ダンジョンマスター』ですっ!!」
「『ダンジョンマスター』!?
あのダンジョンを管理運営する?」
そういうゲームはやったことある。
「あいっ!
それでっ! これから追加の『措置』を行いますので、避けないでください」
避ける? 何の事だ?
「ああ、よく解らないが‥‥どうぞ」
「ていっ!
って、なんで避けるのですかっ!」
『のっぺらぼう』が顔面に頭突きをしてきた。
「すまん、いきなりのことで反射的に避けてしまった」
しかし胡坐のまま横倒しになってしまい、これ以上の回避は無理だ。
そうしているうちに頭突きの勢いで背後に回った『のっぺらぼう』が、頭をガッチリ捕んたようだ。
「さぁ、これで逃げられません
覚悟はいいですかっ!?」
「あー、優しくしてくれると助かる?」
「ではでは、いきますっ!」
ポスッ
ドッチボールで頭に当てられたような衝撃。
ヘディング失敗して脳天直撃したほどの痛みはないが、意識はまたしても暗転した。
◇◆◇◆◇
目が覚めたが頭がぼんやりする。
いくらなんでも気絶しすぎだろう。
胡坐をかき頭を掻いていると声をかけられた。
「あっ、起きましたか? マスター」
さっきの中性的な声とは違う少女の声だ
「誰です?」
「先ほど頭突きをした、主神様の配下のものです」
栗髪の黒メイド服がスカートを積まんでカーテシーをした。
「さっきの『のっぺらぼう』か?
なんでその姿?」
「頭突きの時に記憶から情報を戴き、その中から選びました。
どうですか?」
くるりとその場で一回転する。
腰の長さの一本三つ編みとスカートがふわりと舞う。
良い、やはりメイド服はロングに限る。
ミニスカでダンスして、思い切り回転してパンツ丸見えでは駄目なのだ。
メイドが登場するたびに回って貰うことを心情とする主人公がいたが、今なら解る気がする。
メイド服の飾りはエプロン肩のヒダヒダだけ、地味というかシンプルだ。
髪を邪魔にならない形に結んでるのも、仕事をする格好という意味でポイントが高いと思う。
三つ編みが、二本で無く一本なのも好みである。
そうだ思い出した。
昔やったゲームに出てきた娘(こ)だ。
「いいな、その格好でいてくれ。
ただ‥‥なんでその娘(こ)なんだ?
あとメガネがなくて服の色が違うのはなぜだ?」
ディフォルメされてるのと、メガネが無いのですぐには気づかなかった。
「貰った情報の中でマスターにお仕えするものという事で、一番に浮かんだのがメイドなこの人でした。
服の色は版け‥‥『禁則事項です』。
メガネはまた頭突きをする必要があったときに邪魔だからです」
深く突っ込まないでおこう。
「そうか‥‥。
ところでお前、名前は?」
外見だけで性格や口調まではコピーしてくれないらしい。
そもそもやった当時は音声付ではなかったので、声も適当なのだろう。
「ありませんよ。
主神様も名前はありませんから」
「ちょっと待ってろ、今考えるから‥‥」
配下‥‥眷属‥‥説明‥‥サポート‥‥ヘルプ‥‥
「名前が無いと不便だから、これからお前の事を『ルプ』と呼ぶ事にする」
「了解です、マスター。
それではこちらに来てください」
ふよふよと高度を上げて事務机のほうへ飛ぶ。
「なぁ、『ルプ』よ。
お前飛べるのか?」
「そうですけど、何か問題でも?」
初めて付けられた名前で呼ばれて嬉しいのか、にへらと破顔して宙返りをしてみせた。
「‥‥スカートの中が見えてるぞ、気が散るからやめてくれ」
顔を覆い少し顔を赤らめて目を逸らせた。
「なぜです?
ルプは排泄と生殖機能はないので何も付いていませんが?
性欲を持て余した若いマスターが、スカートを覗いていたフィギュアと変わりませんよ?」
そこまで記憶から情報得たのかよ。
「それでもだっ!」
「アニメ化されても謎の光いらずで超健全ですよ?
確かめて見ますか?」
おずおずとスカートを少したくし上げる。
「見せんでいい!
せめてショーツのままではなく、気にならないドロワかタイツを履いてくれないか?」
「マスターの要望なら、仕方ないですね‥‥これでいいですか?」
ポンッという音とともに、膝下の長さのドロワ――所謂カボチャパンツに変わり、左右を紐で結んだパンツは見えなくなった。
ちなみに裾はゴムではなくリボンで締めてある。
「何が仕方ないのか聞かないでおくが、それでいい。
それからその端末は本体見当たらないし、電源来て無くて使えないぞ」
「いいから、画面を見てくださいよ。
システム起動、カウントダウン開始してください」
画面が点いた。
音声入力?
キーボードあるし音声入力使えるのはルプだけか。
左側の画面のメニューには『迷宮設計』『迷宮設計検査』『迷宮構築』『DC-Shop』などの文字が並ぶ。
まだ実装されていないのかボタンの枠が灰色で『????』なものも幾つかある。
右側のモニタは真っ黒のままだ。
中央のモニタにはトップビューなレトロRPG――ド○クエ見たいな画面が表示された。
四角い部屋に青緑色の玉、事務机の場所にコンピュータのアイコン。
配置から察するにこの部屋のミニチュアだな。
「そうなると、この緑の棒人間が俺か‥‥」
グリクリとマウスを動かし、動作とカーソルの位置を確認。
それからピクトグラムに描かれてるような『棒人間』をクリックした。
[アマタ:DungeonMaster]と表示された。
「これは‥‥どういうことだ?」
「それでは『ダンジョンマスター』のお仕事の説明を始めますね」
◇◆◇◆◇
どうやら『ダンジョンマスター』と言うのは、ダンジョンを管理運営するボスのような役目らしい。
DP――ダンジョンポイントが尽きるか、青緑の玉――ダンジョンコアを壊されると消滅する。
最初に自棄になって暴れ、椅子でコアを殴ってたらそのまま消滅していた可能性もあったらそしい。
DPはダンジョンの施設を作ったりモンスター召還したり維持費用の為の通貨でもあり、『制限つきで地球のものを取り寄せる』ための通貨でもある。
そして生物をダンジョン内で殺すとDPが増える。
殺さなくても迷宮に自分で召喚した以外の生物が滞在していれば、少ないが時間でDPは増える。
DPを払って召喚したモンスターがダンジョンの外で生物殺してもDPが増える。
そこまでは生前に見たラノベやゲームと大体一緒だ。
ただ俺自身が倒される事があっても、24時間が経てばゲームのようにコアの傍で復活できるらしい。
死んでて行動不能の間にコアが壊されず、蘇生分のDPが残ってるという条件付ではあるが‥‥。
それから不老で、不眠で飲食排泄の必要もないそうだ。
若返りなしで36歳のおっさんの姿で固定と言うのは残念すぎる。
しかし、これなら休みがなくても24時間戦える。
◇◆◇◆◇
「なぁ、これってかなり高待遇ではないのか?」
「そう見えるのは、まだ『ダンジョンマスター』の本質を知らないからです。
さて私から『相談や助言』を受ける対価のお話、つまり『ダンジョンマスター』として生きるデメリットの話です」