ダンジョン『説明会』 3
まずは開園時間、二の鐘から四の鐘、ただし入場時間は三の鐘までということを説明した。
納得行かない人もいたか、門の開閉時間との兼ね合いを説明したら納得してもらえた。
開場の前日からの入場は禁止
そして開園日が一日おきであること、ここで取れる食物が6日目に腐り始めることを説明すると、商業ギルドの人が怒り始めた。
「なんで毎日開園じゃないんですか?」
自己紹介によると、No3のお偉いさんだ。
「仮に全部採りつくしたとして、今は再生するのに丸1日かかる。
一晩で再生するようにすると、腐り始めるのも早くなってしまう。
それと人員の問題だ、オープン初日は大人用と子供用を一緒に開けるが1日だけならともかく毎日は無理だ」
「だったら人員を増やせばいいじゃないですか?」
「モンスターに頼むと言うのは無理だ。
人語が話せないのもあるが、来園者がおびえてしまう。
また機密事項が多いので普通の人は雇えない。
その上確かダンジョンマスターは奴隷が買えないのだったな。
それにここの食物を買い占めてとか、輸出してとかぼろ儲けできるようするわけには行かない。
ここの目的は貧しい人も満足に食えるようにする為の物だ、金儲けのためではない。
ただそう悲観したものではないぞ。
ぼろ儲けはこそ出来ないが、ここの食材を使った名物料理を作るとか、ダンジョンの前の商業区分はどうなるか解らんが採ったものを入れる背嚢や布袋を売るとか、弁当を売るとか、商機は提供してるつもりだぞ」
「弁当?」
「農園の中でそのまま調理せずに食えるものは、トマトと果物くらいしかない。
冒険者の保存食でもいいんだが、パンに切れ目を入れて野菜と肉串を挟むとか、保存性は1日くらいで『持ち運ぶことを前提にした飯を売ったらどうだ?』という話だ。
人員とパンの入手の伝手があるなら、私の方でダンジョンで取れる野菜の調理例として売りたいくらいだ」
「その『トマト』というのは、これから説明してもらえるのですね」
「ああ、もちろんだ。
香草以外を一通り説明したら、試食も行う予定だ」
「酒も出るのか?」
「領主殿、先ほどここは飲酒禁止だと言ったばかりだぞ。
今日はシスターもいるのだから『果実水』でがまんしてくれ」
埒が開かないな。
「それでは、農園で取れる作物を説明するので付いてきてくれ」
◇◆◇◆◇
「まずは『丸芋(ジャガイモ)』だな。
ルプ、一本引っこ抜いて見せてやれ」
「はい、マスター」
畑の一番手間のを引っこ抜くと地面の中に埋もれていた芋が現れる。
鈴生りで拳大の大きなのまである。
「この丸い部分が実だ。
泥を落としてよく洗って、そのまま茹でるか蒸す。
生でも食えなくはないが、子供とか腹の弱いものは腹を壊すので止めといた方がいいだろう」
火が通るように細かく切るなら、焼いてもいい。
齧った時に、リンゴのようにシャリシャリしなくなったら大丈夫だ」
ルプは説明を聞く人に見えるようにふよふよと跳んだ後、畑の上に丸芋を置いた。
「なぁ、それは棄てちまうのか?」
「あとで回収して今日のお礼を『組合』『ギルド』『領主殿』に持っていくときの『つまみ』を作るつもりだ」
「『丸芋の油煮』か?」
「ああ『冒険者組合』や『商業ギルド』なら調理に必要な魔道具もあるだろうし、食用油も用意できるだろうからすぐに酒場で売りに出されるだろうな」
「『丸芋の油煮』とは?」
「ルプ、『油煮』の残りはいくつある?」
「2皿です」
「わかった、試食の時に出すから一人一皿とは行かないがつまんで食べてくれ。
文字通り丸芋を半月切りにして、食用油で茹でる。
高い温度で茹でる必要があるので魔道具でないと作るのが難しい料理だ。
さて次は『甘芋(サツマイモ)』だ。
基本的に調理の方法や特性は『丸芋』変わらない。
隅の細いところは硬いので、無理に食べなくてもいい」
ルプがつるを引っこ抜いて、芋を見せる。
「毒々しい色だが、大丈夫なのか?」
「皮が紫なだけで、中身は黄色だ。
もちろん毒はない。
こいつの一番の特徴としては名前の通り『甘い』。
菓子の材料にそのまま使われるくらいだ。
あとは『糞詰まり』の予防薬でもあるから、女性に人気が高い」
「「その辺詳しく!!」」
組合とギルドの女性二人に詰め寄られた。
「腹の動きを活発にする成分が入っている。
『屁』が出やすくなると言う副作用もあるので、適度に食ってくれ。
これも礼にうかがうときに料理して持っていこう」
そして『トマト』『丸梨』『白桃』『レモン』『ゆず』と同じように説明を進め、試食会も無事終わった。
女性に甘芋(サツマイモ)異常に好評だった以外は。
南の孤児院のシスターまで血相変えてお土産に欲しいと言ったくらいに。
その後で『香草』エリアのニンニクやショウガなどを紹介して、出口に向かう。




