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『魔法使い』の真価と『主神様』

「これで『説明会』の明後日の二の鐘|(午前9時)まで時間稼ぎできたな」



「転送陣の使い方と『金属の扉』の説明も入れた完全版資料も出来てますから、これで保留になってた魔法と体術の訓練が出来ますね」



「そうだな『説明会』で出す料理は基本的に領主に出したのと同じ、ただ芋は水煮に変えるだけだ。

 当日の朝でも間に合うな。


 そういえば『向こうの神様』が30童貞の『魔法使い』って言っていたが、すぐに魔法を使えるんじゃないのか?」



「ああ、それは‥‥

 魔法修練獲得|(小)、全魔法属性修練獲得|(小)、全属性魔法適正|(小)、全属性魔法獲得|(初級)、最大魔法力増加|(小)、魔法力回復向上|(小)、魔法効果向上|(小)、魔法熟練度増加向上|(小)‥‥」



「|(小)ばかりだな‥‥まだ続くのか?」



「‥‥要約してに言えば『中級の手前くらいの初級魔法使いになって、『全属性適正獲得』など魔法の習得や行使が色々としやすくなる』です。

 ですからこの世界の魔法の知識を覚えたり、魔力操作の訓練とかが必要です」



「だとすると、近接戦闘の能力はないのか?」

武道なんて高校で週一時間剣道があったきりだ。

近接魔法もあるが、それだけでは戦うのは無理だろう。



「いえ。

 『杖術|(小)』もありますので、杖さえ持てば魔法封じられても気休め程度には戦えます。

 ただ腕力とかの肉体性能は、ほぼ生前のままなので戦士系と打ち合ったら見習い相手でも普通に力負けするかと」



「『魔法使い』以外の戦闘能力はなくて、貧弱な坊やって訳か‥‥」

素振りとか筋トレも必要なのか?

そっちは生長補正は無いだろうし、地道にやるしかない。




◇◆◇◆◇




魔法の訓練はコアルームにルプが作った訓練場で始まった。

アパートの自室もどきを作ったときに一緒に作っていたらしいがすっかり忘れていた。



ドアを開けた先には、スライドの金属戸。

戸の先には通れるように1mほど通路を空けて分厚い防壁を置いてある。


訓練場の広さは高校の体育館ほど、大人用バスケットコートの大きさ。

白い壁に囲まれ、校庭思わせる土を固めたグラウンド、なのに上空は晴天な不思議な空間だ。



「服は動きやすい服でといいましたが、もうちょっと考えた方がいいかと‥‥」



染めても漂白もしてない綿のTシャツに、下は綿と麻で織られた藍色のジーンズもどき。

裾上げもせず裾を折ってるのもジーンズと同じだ。

もどきなのは生地が厚くないからだ。

腰にはベルト代わりの腰布。

足は裸足に革のサンダル。

サンダルといっても元の世界の現代の物ではなく、脱げないようにベルトの付いた古代文明で使われてたような異世界仕様の奴だ。


「これでも一応考えたんだがな」


半袖に薄いズボンに裸足にサンダルだが、訓練場は秋春の20度くらいの設定。

体を動かすにもちょうど良い。



「そうなのですか?」



「まず、値段的に安い。

 あとこの辺の格好なんだそうだ」



「はい、確かに」



「服のことはともかく、魔法のレクチャーを始めてくれるか?」



「それでは

 右手を掌打(しょうだ)のように前に突き出して、扉の反対側を向いて貰えますか?」



「こうか?」

言われたように手を開いて指をそろえた状態で突き出す



「そのままで動かずにいてくださいね」

ルプぱ俺の後ろに回ってから、掌の方向を向いたままちょこんと右腕の肘に跨った



「おい、何をする気だ?」



「これから肘から掌の方向に魔力を流します。

 まずはそれを感じてください」

ルプの体で見えないが、ルプが両手で右腕の前腕辺りに触れている。



「なんだ?

 この蠢くような、くすぐったいような流れは」



「それが『魔力』です

 元々マスターの中にあるものですよ。

 まずは流れを認識して、それから流れを加速してみましょう」




それからが大変だった

流れを意識してから、加速そして体をめぐる同じものを掌への集中。

その次は魔法のイメージと発動。

そして左腕も同様に行った。


ここまでが第一段階

第二段階はルプの補助なしでこれらを一通り行った。


とにかく最初に『クリーン』が発動するまでが大変だった。


なぜ『クリーン』かと言うと‥‥

食事と排泄と睡眠は必要ない体でも、汗かいたりの他の代謝は残ってるらしい。

性的な意味でも。

まるで昔見たSF映画の人類抹殺ロボのように。


ルプいわく

『どうしても生身で人間に接触しなくてはならないときに一発でばれますので、そういう風になってます。

 食事を普通に食べることもできます。

 味覚も生前と同じです。

 排泄や睡眠とかは必要ないですが、人前では欲求がなくてもそのフリはしてください』

だそうだ。


自室の風呂は? というと水しか出ない。

魔法で沸かすシステムらしい。



それからは『魔法大全-初級編-』を読み漁る。

時間が無いので回復系魔法と妨害系魔法と拘束魔法を中心に覚える。



イメージにも躓いた。

特にゲームやラノベで見たことがない魔法。

形状や範囲にも躓いたが、CADや3Dモデルのように単純な立体図形の組み合わせで考えるようにしたらスムーズにできるようになった。


昼しかない空間でひたすら魔法の訓練を続けた。

たまに精神的に気疲れして甘味を食べる以外は。




◇◆◇◆◇




6属性の火水風土光闇と無属性が基本属性。

無属性と言うのは念動力――テレキネシスに関連する物のようだ。

具体的には離れた物を掴んだり、格闘漫画のような気の玉を飛ばしたりできる。

一つの属性の熟練度が中級になると、達成した属性に対応した氷や雷の上位属性が使えるようになるらしい。


『魔法使い』という称号で『全属性適正』を持ってるわけだが、時間の関係で一部だけ覚えた。

回復系の多い『光属性』、妨害系の多い『闇属性』、そして汎用攻撃用として『無属性』『土属性』。

あとは『クリーン』ほか日常に使いそうなもの。




「18時間でこの成果と言うのはどうなんだ?」



「はっきり言って早すぎです。

 頭脳労働者で魔法使い向きが、30童貞の『魔法使い』で‥‥色々と底上げされた身体になっているのが原因かと思われます」



だそうだ。

なお覚える早さに補正が付くのは『初級魔法』のみらしい。



「ところで何で『土属性』なんかを?

 殺傷能力で言うと最下位ですよ」



「看板とか石碑とか作れるし土木作業用に取ったのだが、質量を武器にしなくとも十分殺傷能力は高いぞ。

 ちょっと見てろ」

 

地面に手を付いて、100mほど離れたところに土魔法で標的用の石人形を二体作る。

そして有限収納から、3cm――ピンポン球位の球体の石を取り出す。

立ち上がりそれを右手のひらに載せると魔力を込めて打ち出した。

石弾は風切り音だけ残して、石人形の頭を粉砕する。



「なるほど『銃』の応用ですか」



「ああ。

 『土属性』ならあらかじめ時間をかけて硬い弾を作って有限収納に用意できる。

 撃ち出すことに集中すれば早く打てて、速度も音速を超える。

 魔法ならバレルが無くてもジャイロ回転かけられるから、命中精度も悪くない。

 やろうと思えば魔法の方で誘導もできる。


 あらかじめ弾を作らないで同じように撃とうとすると、弾が自壊するか撃つまでに時間がかかるけどな」



「しかし、これでは大きい相手には『豆鉄砲』じゃないですか?」



「そこでこういうものも用意した」

収納から出したのは50mmと100mmの球体だ。



「そこはネタとして46cm弾とか‥‥せめて主力戦車の120mmや野砲の150mm弾を出すとこでは?」



「撃ち出した後の反動に耐えられないから無理だ。

 それに何と戦わせるつもりなんだ?」

100mm弾だって、無属性魔法で体を支えて何とか撃てるくらいなのに。



「世界征服とか一国の王とか興味ありませんか?」



「そういう面倒くさいことは、地上のお偉いさんに任せるよ。

 実利のない派閥闘争とか馬鹿らしい。


 そもそも地上に『ダンジョンマスター』は出られない。

 出られるようになってから考えるさ」

皮算用しても無駄だ、できることを手の届く範囲でやるしかないのだ。



「でも金と権力があれば、女性のほうから寄ってきますよ」



「女を買うのと一緒でさ、それはなんか違うと思う。

 まずは生き残って、俺が惚れる女を探すとこからだな」



「マスターはホントにヘタレでどうしようもない人ですねー。

 仕事も財産も命も無くしたのだから、異世界流に無理矢理やっちゃえばいいじゃないですかー?」



おいおい。

「なぁ。

 ルプは神の使いで、お前の上司の『主神様』って本当に神様なんだよな。

 悪魔の使いとか、混沌を愛する邪神でないよな」



「主神様は『中立神』ですよ。

 人間は完璧でないので、過ちを犯して当たり前。

 法や善なんて所詮理想論です。


 だからと言って悪や混沌ではないので‥‥

 食い散らかして故意に不幸を撒き散らすとか、無意味に傷つけるR-18Gな事でもなければお許しになりますよ」



「なんか、すまん」



「ほら、そうやってルプにまで気遣う。

 だからこそルプが派遣されたわけですが‥‥」



訓練の空気では無くなったので、今日はここで止める事にした。

魔法で沸かせるようになったので、久々に風呂にゆっくり入ってからルプや主神様の事を聞いた。

全裸で風呂に乱入されたのも、ルプなりの気遣いだったと思いたい‥‥多分。

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