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ソルトバレー 領主邸での会談 1

五の鐘|(午後6時)の鐘が鳴り始めても、領主の家の前には大勢の市民が詰め掛けていた。

「使者はどこだ?」

「報告書は届いたんだろ? 迷宮の封鎖をとけよ!」

「農園に行かせてー」

「ダンジョンマスターは本当に街を攻撃しないのだろうか?」



正門は硬く閉ざされ、兵士がいつもより多くも並んで警備している。



五の鐘|(午後6時)の鐘が鳴り終えた瞬間『それ』は突然現れ、門と館の前に降り立った。


50cmほどのウェイトレスのような格好の少女は良く通る声で話し始めた。

「みなさんお迎えご苦労様です。

 初めまして、『ダンジョンマスター』スーノ様の一番の配下『ルプ』です」

カーテシーで挨拶をする。


「さて、ルプはこれからも時々街中にお使いに来ることがありますが、石を投げたり売り惜しみしてはいけませんよ。

 ルプはこんななりでもそこそこ強いのです」

 右手に大きな魔法の炎を灯すと微笑んだ。


「準備も終わったようなので、領主殿の所に行きますね。

 帰りは何時になるかわからないので、お見送りはいらないですよー。

 それでは」

炎を消し一礼すると、背を向けていつもと同じようにふよふよ浮いて浮いて扉に向かう。


群集は呆然と見送ることしか出来なかった。




◇◆◇◆◇




長い廊下をを2人の兵士が明かり窓だけの回廊を進んでゆく。

付き従うのはルプ。

そして目的場所に辿りつきドアをノックする。


コンコン


「『ダンジョンマスター』の配下のものをお連れしました」



「入れー。

 なんだその人形は‥‥」



「私はルプ、『ダンジョンマスター』スーノ様の一番の配下です」

奇妙な格好をした少女の人形がスカートを摘みカーテシーをした。



「ワシが領主だ、先ほどは失礼した」



「かまいませんよ、ルプを見た人は大抵そういう反応しますので。

 ちなみにこの服はマスターの故郷の侍従服です。

 そちらが毒見の方ですか?」



「カインと申します」

タキシードが恭しく礼をする。

サイズが合ってないということは、毒見と言うのは名目で護衛と言ったところだろう。



「お前らはドアの外で警備、誰も入れるなよ」



「「はっ」」

素直に部屋の外に出たが恐らくは聞き耳を立てているだろう。



「それではちょっと失礼して」

ルプはポケットを探るフリして、収納魔法で水晶玉を取り出し50cmほどの高さの『空中においた』。

「マスター準備できました、遅くなってすいません」



「うむ、問題ない」

そして水晶の上に藍色のローブにホッケーマスク――今朝見た幻影が現れた。

「始めまして、『ダンジョンマスター』をしているスーノと言う。

 まずは出会いに一杯、と行きたいところだが。

 この国は酒が禁止とか、宗教上マズいとかは大丈夫なのか?」

もちろんそんな問題はない、むしろ酒好きなは知っている上での演技だ。



「そういうのは無いな」



「でしたら、まずは一杯。

 ルプ、ワンフィンガーの水割りだ、氷も入れて毒見役の分も頼む」



「了解です、マスター。

 領主様は少しお待ちください」

社長室にあるような豪華な木製の机にコースター・グラス・ウイスキーの瓶と並べる。



「透明な器か‥‥また雅な」



「それは『ガラス』という。

 乱暴に扱えば割れる、ナイフみたいな硬い尖ったもので引っかけば傷か付く。

 そこの棚にあるカップと同じようなものと考えてもらえばいい。

 私は元商人であるが、職人ではないので『ガラス』や『酒』の製法に付いては答えかねる。


 それらは私が『ダンジョンマスター』になってしまった時に収納魔法の中に残っていたものなのた。

 あまり在庫が無い上に、追加で仕入れることも出来ないので『売ってくれ』と言うのも申し訳ないが断らせてもらう」



「できました、どうぞ」

ルプがコースターごと2つの水割りを差し出す。



カインは毒見役として先に手を付けた。

まずは匂いを嗅ぐ、そして一口。

口をすすぐようにして味わってから飲み込んで一拍置く。

「毒はないようです、ただワイン以上に酒精が強いので一気に飲むのはお止めください」



「わかった、いただこう」

ワインとは違うが芳醇な香り。

そして口に広がる味、冷たいのも今の季節うれしい。


「旨い、しかしそれだけに惜しいな」



「ならば、もう一本進呈しよう」

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