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注文の多い異世界転移者 1

ご無沙汰してます

リハビリと言うことで中編小説なぞを書いてみました

目が覚めると、灰色の打ちっぱなしのコンクリートのような天井。

周囲に窓は無く壁も床も同様に灰色だ。

光源は無いのに不思議と明るい。

左隅にはバスケットボール大の青緑の宝石のような玉が浮いている。

右側にはグレーの金属製の事務机のセット――どこの職員室や会社でもあるような奴がある。

机の上には液晶モニタが3つが並べられ、マウスとキーボードもある。

そんな部屋に閉じ込められていた。


「これが異世界か。

 『死んだ』って夢じゃなかったのかよ‥‥」


苛立ちを覚えるが、ここで泣き喚いて暴れても状況は改善しない。

無駄な体力や水分を使うべきでない――と言うのは厳しい仕事で身についていた。

それでもこの状況は始めてな上に『自分の死』というのは衝撃が大きい。


落ち着け、落ち着くんだ。

深呼吸を繰り返しながら意識を失う前のことを思い出す。




◇◆◇◆◇




花輪笠 アマタ 36歳 しがない元SEだ。

IT土方なんて言われていた時代の生き残り。

人材不足から給料面だけは改善されはじめた業界で働いていた。

『元』『いた』と過去形なのは、この状況を作った自称『神様』がそう語ったからだ。




◇◆◇◆◇




俺は寝転がった状態で『目と口以外の体が動かない事』『真っ暗な空間』などの異常な現状を考え、長い口論の末に『そいつ』を神様と認めた。

真っ暗で背景も夜空もないのに、そいつだけは見えるというも異常だ。


そいつは古代ギリシャ人のように革サンダルに白い布を纏った二十歳前後の若い男だった。

しかし神々しさも感じられず、ガングロというほとではないが冬なのに日焼けして短髪な金髪に無精ひげだ。

おまけに右の鼻穴に一つ、唇の左のほうにも一つ、耳は左3つ右4つ――全部で9つ、1cmほどの金の輪っかのピアスをしている。

服装に対して西洋人顔な特徴は無く、日本人顔だ。

サーファーはピアスをこんなにつけないし、服装以外は丘サーファーみたいな奴だ。


自分の格好は、見える部分や感覚から推察するに気を失う前と同じく背広の上下にコートのままのようだ。

腕時計もあるようだが腕を動かして腕時計を見る事もできない。

現在時刻も、口論にかかった時間も解らない。




「‥‥やっと本題に入れるな。

 とりま、あんたは駅の階段から落ちて死んだ。

 覚えてないか?」

居酒屋で最初の一杯でも頼むかのように死を告げられた。



突然の死!

英語で言うと『サドンデス』。

縁起が悪いと『ゴールデンゴール』とか言うようになったのは、いつだったか?

‥‥現実逃避してる場合ではないな。


「納期直前に二日程徹夜して、その後に営業に納品を引き継いで‥‥朝の9時過ぎに会社を出たとこまでは覚えています」



「あ゛ー。

 頭打ってるから記憶に異常があるのか?

 一応確認するが‥‥」



面倒くさそうにボールペンで頭を掻き、バインダーを見ながら警察の職務質問のような尋問を続ける神様――一応敬語は使ってやるが、こいつは金髪ピアス――いや、金髪9ピー(きんぱつきゅうぴー)と呼ぼう。

他にも『神様』という種族の固体がいたら困る。

『存在X』とかでないだけありがたいと思ってくれ。


本人確認的に名前と生年月日と職業とか確認されて、それから‥‥



「‥‥酒×」



「酒は体質的にアルコール分解能力が弱いのです。

 ワンカップどころか、ビールのグラス一杯でも駄目ですね」



「タバコとギャンブルも×」



「タバコはあの臭いが苦手です。

 それにあの煙は電子機器の敵ですよ。

 

 ギャンブルは、客が損して胴元が儲かる仕掛けになってるから続いているのでは?」



「趣味はゲームと読書に料理?」



「ゲームはファミ○ン世代ですから。


 読書は図書室に『○レイヤー○』とか『○ォー○ュン』とか『ロー○ス』とか『銀○伝』とかあってハマりました。

 古典も読みますよ、『指○』とか『ダーティ○ア』とか『宇宙の○士』とか言う意味でなく文学的な意味でも‥‥。


 料理は母子家庭で自炊しないと食えなかった延長です。

 なのでグルメな高級料理とか食うだけで作れませんよ」



「さらに女×‥‥」



「‥‥これは仕方無いでしょう?

 中学以来、男子高校、男しかいないコンピュータ専門学校。

 専門学校の時は別の課には女性もいましたが、勉強に学費を稼ぐバイトで忙しくて接点がなかったのです。

 バイト先も含めて職場には10も年上の人か掃除のおばちゃんしかいなくて‥‥就職してからも暇が無い。

 仕事にかまけてるうちに、30過ぎて母が亡くなるとお見合いすらなくなくなりました」

正直『仕事』としては女性と話したりはできるが、それ以外では今更どう接していいか解らない。



「まー。

 担当が俺になった辺り、女の方から寄ってくるような女運もないんだろうな。

 男の担当は女神の仕事だぞ、普通」



「私だって女神がいいです。

 できれば美人系より、かわいい系を希望します」



「奇遇だな。

 俺もおっさんでなく、かわいい系のねーちゃんの担当がしたい」



「‥‥‥‥」



「話がそれたな。

 階段落ちした直前以外は、記憶に異常はないようだ」



「死の苦痛の記憶が無いのは、不幸中の幸いと言うか何と言うか‥‥」



「さて外見はメタボ気味でやや強面だが、そんなに悪くは無い。

 貯金が約2500万‥‥残業で相当稼いだな? ワーカーホリックかよ。

 よく結婚詐欺に会わなかったなー、って引っかかる時間すらないのか」



「まぁ、少ない休みの日は家事に追われ。

 合間に評判の店に飯食い行ったり、本読むかゲームするくらいの短い時間しかとれませんから」

たまに休日呼び出しとかもある。



「なるほどね。

 童貞こじらせた上に他にも理由があるが、とにかく『厄』が溜まってる。

 災厄級にヤバい事になるなこれは、『消滅』でも良いんだが‥‥

 抵抗されるとコストかかって厄介だし、『復活』かなー?」

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