死闘()
チュンチュンチュンチュンチュンチュン
「…う"るざい。」
あの鳥公は今日も元気に鳴いてやがる。人類に倒せないネームドモンスターは1日で消えてくれませんかねぇ。
僕はさっさと2人を起こして外に出た。
ファストフード店で食べた卵かけご飯は、なんだかいつもより美味しく感じた。
◇◆◇◆◇
今日は受付嬢さんが休暇の為、イヴさんが出迎えてくれた。
「はい。」
彼が笑顔で僕達に書類を渡してくる。内容はギルドのより詳細な説明だった。
僕はナナメ読みした後にサノに渡して映像記憶してもらい、その書類を返却した。
「おや、サノ君は良い『ギフト』を持っているね。瞬間記憶の類かな?」
イヴさんは今までこの世界で聞いた事のない情報を出してきた。
「『ギフト』?『スキル』では無くてですか?」
サノはしらばっくれた。当然だ、ここで『そーなんすよ、なんて言うか?生まれた時から身についていた的な?』何て事を言い始めたら流石のイヴさんでも引くだろう。
「うん。この世界に来る人はみんな地球にいた頃から少し特殊な才能を持っている人達なんだ。君たちにも覚えがあるだろう?それを僕達は『ギフト』と呼ぶんだ。選べない贈り物だからね。」
ほー、だから選べる方が取得する技術という意味の『スキル』なのか、選ぶの『チョイス』とかだとダサいからね。技の名前はカッコいい方が良い。
「まぁそれは置いといて、君達に注意する点があります。」
イヴさんは少し改まって僕らを見る。僕達も姿勢を正して先を促した。
「なんでしょうか?」
きっとイヴさんが改まるくらいにはヤバイ事なんだろうなぁ。
「この後君たちには死んでもらいます。」
ほら、思った以上にヤバかった。こんな顔で言われたから少し緊張していたけど、少しじゃ足りなかったね。だって理解が追いついてないもん。
「もちろん、本当の意味での死亡じゃないから安心してね。ただレベルが1に下がるだけだから。」
イヴさんが僕らが勘違いしたのではと思い訂正を加える。いやいやいやいや、流石に分かってるって。
ただレベルが1に下がるのは次が無いからかなり不安なだけで、マジで死ぬならマジで逃げます。
「そっか、よかった。それと、ここでレベルダウンする事と、その翌日にレベル2になるまでが初心者応援クエストだからね。明後日からは自分達で日銭を稼ぐんだよ。」
Oh…死ぬまでが遠足とか生まれてから死んで転生して始めて聞いたぜ。つまり普通の人は聞いた事がないね。
「わかりました。それで僕らが死ぬのって確定なんですか?もしそうなら原因くらいは知りたいのですが。」
僕はイヴさんに未来を問う。何故なら僕の『千里眼』では僕達が死んだ光景はまだ見えないからだ。
僕の未来視は地球にいた頃よりかなり遠くまで見える。
あの世界では1秒後だったから躱せなかった未来も、今の僕ならもしかしたら変えれるかもしれない。
「う〜ん、確定では無いけれども僕が知る限りあのモンスター相手に初見で死ななかったのは初代転生者とかくらいだよ。かく言う僕自身も死んだしね。」
イヴさんは悩んだ末に地獄を見せつけてくれた。
この人で無理なら僕らには100無理だ。せいぜい長生きしような。
「サノの魔法で一網打尽とか無理?」
アレクが最後の希望としてサノに問うが、返答は笑顔での否定だった。
「うん、無理!レベル2までで使える魔法は基本単発低速低威力なんだわ。代わりに魔力消費がかなり少ないけどね。範囲魔法とかはレベル5くらいから使えるようになるから期待してろ。」
…つまり?
「死ぬ時は一緒だぜ!」
サノはニッコリ笑顔でサムズアップした。僕は空を見上げて嘆いた。
「そのセリフは女の子といる時に言おうね…」
◇◆◇◆◇
〜リアライズ 2F〜
「さて、ここから先は君たちだけで進むんだ。僕は君たちがリスポーンする所に向かっているから。」
スライムフロアをイヴさんの助けを借りて速攻で突破した僕たちは二階層に降りてきた。
「分かりました。所で僕たちのリスポーン地点って何処なんですか?もしかしてあの草原?」
僕は戦々恐々の面持ちでイヴさんに尋ねる。
「いいや、君たちのリスポーン地点は今のこの世界で一番安全な場所さ。まぁ、そこは逝ってみてからのお楽しみって事で。それじゃ、頑張ってね。」
彼は茶目っ気たっぷりにウインクすると帰っていった。
漢字間違えてませんかねぇ?いや、実際に逝くのか、日本語難しいなオイ。
「はい、それじゃ逝きましょうか。対ゴブリン戦だ。」
僕は若干諦めの入った顔でみんなに告げた。
◇◆◇◆◇
数分二階層をうろついていると、僕の『千里眼』内に敵の反応があった。数は3匹、運が良いね。僕らしからぬ運の良さだ。
「この道の先からゴブリン3匹。ゴブリンのパーティの最低人数だ、頑張ろうぜ。」
僕は他の2人に準備を促す。
ゴブリンは単体では行動しない。それはスライムと違い高度な知識と強い生存本能がある事に由来する。
対敵の際の適正レベルは3。しかも自分達のが人数が多い時に限るとかいう完全な格上である。というかスライムすらレベル2以上適正なので人類と最初から同等の存在などいない。
あいも変わらずこの世界において人類は復活する砂利なのである。
「魔術準備おーけー。いつでも撃てる。」
「武装準備完了。魔術と矢の着弾後、追撃する。」
「弓準備完了。魔力量が不安だからそんなに威力は高くない。目、又は急所を狙う。カウント5」
僕たちはゲームをやっていた頃の小慣れた掛け声で準備を完了する。
4…3…2…1…ゼロ。
僕は壁から最初に顔を出したゴブリンの目を狙って矢を放つ。その後を追って火球が着弾し辺りを火の粉が散る。
それを確認した直後に僕が矢を放った所にアレクの大きくなった剣が強襲する。
僕たちの十八番である火力三昧である。
しかしゴブリンは雑魚では無い。初撃の矢を反射神経に物を言わせて剣で弾き飛ばし、火球を後退して防ぎ、大剣の一撃を盾を持ったゴブリンが完全に受け切った。
「だよね!!強すぎんだよバーカッ!!」
【ゴブリン レベル8】
【ゴブリンアーチャー レベル10】
【ゴブリンシールダー レベル7】
僕は『千里眼』により見えている相手に向かって速射をするも盾持ちに完全に防がれる。僕の矢の射速よりも、相手の行動の方が早いのだ。これならより低威力で範囲攻撃出来る弓が欲しかったよ。
今からでもその力を付けようかと思ったが思い直した。
この世界の、まぁ地球の物でもだが、スキルや強い武器には代償を伴う。
そしてこの力は武器に関してのみ、後付けできる。
例えば今僕の弓に範囲攻撃を付与する事も可能だ。
だがこれがなかなかに曲者で、最初にその効果を付与するよりも代償が強いらしいのである。
最初に僕の弓にその効果を付与した場合、代償が『全体的な威力の低下』だったとすると、今その力を付与した場合の代償は『全体的な威力の大幅な低下』
くらいにはなる。
そして武器に付与した力は二度と変えられない。
絵に置き換えて考えると、書き足す事は出来ても、色を除去する事は出来ない。といった感覚である。勿論現代の絵はディジタル化されているためいつでもバックすれば良いだけなのだが、この世界ではそんな便利機能は無い。
何故唐突にこんな事を言い出したかと言うと、僕の死が確定したからだ。いや正確には数分後には確定する。
より正確に言うとゴブリンの弓持ちに逃げ場を潰すように矢を射られて、逃げ場がなくなり蜂の巣になって死ぬ。未来が見えたところでどうしようもない。何故なら見えたところで改善策が思いつかないからだ。
先にゴブリンアーチャーを射ようとしても相手は僕の矢をひょいと躱してしまうのだ。その癖に僕は躱せない。未来が見えていなければ最初の1射の元に死んでいる。それ程に速い矢なのだ。
僕達は奮戦虚しく見た未来通りに死亡した。
…クソゲー。
死闘ではあるがそれは自分達だけであった。
相手は遊んでいたら死んだ程度の認識。尚イヴさんなら1対3で接戦の末に勝つ。が、その後に大量出血で死亡する。南無三。