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Side たける1

タイトル通り健視点です。

 

 莉乃先輩が苦手だった。


 正確には女の子全般。同じくらいの年の子は特に。


 小さい頃から体が小さく運動が苦手だった。僕の体格まで持っていったような兄・徹は背が高く運動も得意だ。

 とお兄も両親も別に僕を馬鹿にすることなく平等に育ててくれたけどとお兄のように遊ばない僕の楽しみはアニメや漫画。そしてゲームになった。


 誰かと一緒ではなく1人でどんどんやり込み、気づいたらコミュ障と言われてもおかしくない人格整形に成功していた。


 それでも同性とは話題に困らなければ話せる。問題は女の子だ。

 話題に困るし、話す以前に女の子は大半が僕を嫌っている。


「オタク」「コミュ障」「キモい」


 ゲームが好きな女の子もいるだろうし、別に僕から話しかけることも近付くこともないのに酷い言われようだ。

 逆に言われた立場を考えない子達のせいで僕は女の子全般が苦手になった。


 高校でもそれは変わらず、女の子との見えない壁を感じながら過ごしていると、ある日愛用していたゲームのボタンカバーが裂けた。

 仕方がなく新品を求めて近所の家電量販店へむかったが同じ商品はなく新品を吟味しているときだった。


「健君?」


 名前を呼ばれ顔を上げると可愛らしい女の子。私服だけど2ヶ月前の入学式でてつ兄と一緒に会った…。


「莉乃先輩?」


 とお兄の親友りひ兄の妹の篠原莉乃先輩がいた。


「久しぶりだね健君」

「……うん」


 視線を外して前を向く。

 莉乃先輩は女の子だ。僕をバカにした女の子達と近い目立つ容姿の可愛らしい子。それだけで僕には避ける要因になる。

 どうせここも暇潰しに来たのだろう。さっさと別コーナーに行ってほしい。


 そんな僕の願い空しく莉乃先輩は僕の横にしゃがみこんだ。


「健君何見てるの?」

「…………ん」


 言っても分からないよ。社交辞令での質問いらない。

 そう思いながらボタンカバーを指す。

 そんな僕の考えを莉乃先輩はひっくり返した。


「ああ、ボタンカバー。ボタン押しやすくなるしいいよね」

「え?わかるの?」


 意外だ。意外過ぎる。

 りひ兄の話からも莉乃先輩はゲームには興味がないと思っていた。


「まだ持ってないけどゲーム買おう…お、もって…わぁー!」

「え?何?」


 突然の歓声に莉乃先輩を見る。

 莉乃先輩は僕を気にせず嬉しそうに一点を見つめる。


「ハネドラだー!わーかわいいー。おまけにそれぞれ印字の色違う、ちゃんと属性色になってる」


 ハネドラは女の子にも人気なモンスターだ。でも属性も知ってる?

 莉乃先輩は「モンスターゲッター」を遊んでいる?莉乃先輩が?


「わーこれも迷う。炎かなー水にしようかなー。わーかわいいー」

「……莉乃先輩」


 莉乃先輩が震えてゆっくりと僕を見る。そのまま何を訊こうか考えているとみるみる莉乃先輩が真っ赤になる。


「…うるさくして、ごめんなさい」


 小さい子のように真っ赤になって謝る姿。

 …かわいい。


「いや…別に」


 居心地悪そうにしているけど顔は赤いままだ。

 ……もっと見たいな。


「………好きなの?モンゲ」

「…えっと、今日買おうとしてたのがモンゲの新作」

「…ふーん。どっち買うの?」

「え?」

「モンゲの新作どっち?」


 瞬間で真っ赤な顔がこの世の終わりみたいに真っ青になる。


「……忘れてた」


 それだけ?


「くっ」


 思わず笑った僕に莉乃先輩は再び顔を赤にする。忙しない。


「だってまだゲーム機本体持ってないからそっちに集中しちゃって!そしたらカバーのハネドラいるし!お願い笑わないでー!」

「いや…だって…そんな絶望したみたいな……くっ」


 結果として僕は10分は笑いがおさまらなかった。

 流石に他の客の邪魔だから今は休憩スペースのベンチに並んでいる。

 僕が笑っている間莉乃先輩はスマホでモンゲの違いをじっくり見ている。


「それで決まったの?」

「……まだ」


 再び絶望したような顔をしている。


「んー。んー」


 唸ってる。

 少し可哀想で思わず呟いた。


「…………欲しいモンスター僕から送ろうか?」

「え?」


 莉乃先輩が顔を上げる。うわ、近っ。

 さっきしゃがんでいた時と違って他の人のスペースを邪魔しないように拳数個分のスペースしか空けていないから向き合うと顔が近い。

 長い睫毛、大きな瞳、少し赤い頬。こんな間近で女の子を見たことがなくて恥ずかしくて目線を床へ落とす。


「だからモンゲってトレード機能あるから、買わなかった方に出てくるの僕があげるよ」

「本当!?」


 だから近い!

 ずいっと莉乃先輩が前のめりになる。僕は逃げるように体を仰け反る。


「う、うん。僕両方持ってるから」

「ぜひお願いします!ありがとう!」


 莉乃先輩が嬉しそうに僕の右手を両手で包む。

 手とはいえ直接の体温に顔に熱が集まる。


 手はすぐに離れて、うきうきでゲームコーナーへ戻る莉乃先輩の後ろで僕の顔の熱は莉乃先輩が買い物を終えてもしばらくおさまらなかった。


不定期ですがゆっくりと投稿したいと思います。

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