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趣味はゲームです

 

「モンスターゲッター」

 世界中で人気のあるモンスター捕獲育成系RPG。

 モンスターを捕まえて仲間にして育成して冒険する幅広い年齢層に愛されるゲーム。

 カッコいいモンスターも可愛いモンスターもと幅広く、ストーリーも時々ダークな部分もありつつ心に響く名作だ。


 前世の“自分”が好きな作品の1つ。

 そして、前世ではまだ出ていなかった最新作が数日前に発売されたのだ。



 ◆◆◆



「わー知ってるゲームも多いー」


 近くの家電量販店のゲームコーナー。私はウキウキでコーナーを見ていた。



 一応2つ目の記憶を私は前世と認識しているけれどここは前世とは少し違う世界かもしれない。

 一般常識、歴史、過去の事件、流通している物販等。前世と同じ、むしろ少し進んでいる。

 けれどその進み具合が前世から数年程度。莉乃が生きた年数と“自分”が生きた時期が被っているのだ。

 おまけに私は前世ではゲームの登場人物だ。

 ここが完全に同じ世界なのか、それともゲームによく似た全く違う世界か、はたまた本当に誰かが遊んでいるゲームの中なのか。

 考え出したらキリがない。


 なので私の出した結論は1つ。

 後悔のないように生きる。


 例えここがゲームの中で突然セーブデータを消すように終わるのかもしれない。

 それでも私はここにいる。仮定に悲観して生きたくはない。

 なので私は今世でも好きなことをする!


 その為に好きなゲームを買いにきたのだ!!



「わー全部ある」


 莉乃としてはゲームは遊んだことがほぼない。せいぜい付き合いでのスマホでのソーシャルゲーム程度だ。

 なのでこれからゲームを遊ぶにはまずゲーム機本体が必須だ。

 そしてゲーム機にはカラーがある。単色から2色カラーと色々。可愛いのだ、迷う。


 じっくりと本体のディスプレイと見つめて2色カラーの2つ絞る。

 黒ベースの淵がライトブルーか、白ベースにボタンがピンクか。


「あ、先にカバー見るか」


 携帯ゲーム機にはしっかりと保護カバーを付けたい派だ。

 ウキウキとカバー等の付属品コーナーへ行くと先客がいた。

 しゃがみこんでじっと一番下の棚を見つめているパーカーをかぶった子。


 失礼にならないように視線を逸らそうとしたが、その前に飛び込んできたのはパーカーの柄だ。

 グレー生地に背中に描かれているのはデフォルトされた「モンスターゲッター」のフェンリル。

 それを着ている小柄な男の子。ちかりと見える横顔でもわかる、イケメンだ。

 ……ん?見た事ある顔だ?


「健君?」


 思わず声に出た。

 小さく「え?」と共に男の子が顔を上げた。


「……莉乃先輩?」


 間違いない。

 非攻略対象の千羽健。攻略対象の千羽徹の弟だ。


「星学」に出てくるキャラで唯一の年下キャラ。これまたイケメン。だけどまだ高校1年生で成長前か莉乃より背が低いのだ。かわいい。

 理人と同じく隠し攻略対象だと思われていたが個別スチルもないサブキャラで数多のお姉さま方を嘆きの海へと落とした子。

 ちなみに“自分”も地味にショックだった。「星学」の声優さん皆様大好きだけど健の声優さんも理人までいかないが大好きな方なのだ。


「久しぶりだね健君」

「……うん」


 ……会話終了。

 健君とは、兄達が親友で家も近くなので小さい頃はよく兄達に連れられて会っていた。

 遊んでいたと言えないのは健君がザ・インドアなのだ。昔はもっと小柄で体力もなく、外で駆けずり回る兄達を眺めているのが常だった。

 私は兄と一緒に遊んでいたが、その内1人で花を摘むのが私の常だ。

 年齢が上がると兄と一緒に付き合うよりも同姓の友達と遊ぶことが多くなり健君とも会わなくなり、今年の入学式が新年生の健君との再会だった。


 そんな健君の横にしゃがむ。

 ……健君。そんなビクッと体震わせないで。

 ゲームでもそうだったけど健君は女の子が苦手だ。何を話したいいのか分からないとゲームで語ってた。

 健君は前世の“自分”に似ている。好きな話では饒舌だけど、それ以外が苦手で少しコミュニケーションが苦手なタイプだ。


「健君何見てるの?」

「…………ん」


 間が長いよ。指してくれたのはゲーム機のボタンにつけるシリコンタイプのボタンカバーだ。


「ああ、ボタンカバー。ボタン押しやすくなるしいいよね」

「え?わかるの?」


 とても意外そうな声だ。

 確かにそうだ。篠原莉乃はゲームに興味があまりない女の子だ。“自分”の記憶がなければ全く分からなかっただろう。


「まだ持ってないけどゲーム買おう…お、もって…わぁー!」

「え?何?」


 途中から歓声に変わった私に健君が再びビクッとするが私の視線は1点集中だ。

 視線の先には本体のプラスチックカバー。透明なカバーに描かれているのは「モンスターゲッター」のドラゴンの幼体。おまけに。


「ハネドラだー!」


「モンスターゲッター」にはドラゴンが数種類登場する。他種族にもいるがドラゴンは3段階進化で最初の幼体はプニプニマルマルしてとても可愛い。

 幼体は通称チビドラと呼ばれ、見た目・ゲーム内の性能もよく人気も高い。

 数種類のドラゴン、その中で天使のような羽が生えているウイングドラゴン。これが見た目からハネドラと呼ばれる、「モンスターゲッター」の中で一番好きなモンスターだ。


「わーかわいいー。おまけにそれぞれ印字の色違う、ちゃんと属性色になってる」


 モンスターは捕獲時は無属性だけれど、アイテムを使えば属性を与えて4すくみの枠で戦いを有利に進めることができる。


「わーこれも迷う。炎かなー水にしようかなー。わーかわいいー」

「……莉乃先輩」


 ビクッと自分の体が震える。ギギギと音が鳴りそうな動きで顔を横に向ける。

 健君が私をじっと見ている。全く逸らしてくれな。穴が開きそうだよ。

 隣に健君がいることを忘れてはしゃいでしまった。恥ずかしい。顔が赤くなるのがわかる。


「…うるさくして、ごめんなさい」

「いや…別に」


 …………黙らないでー。恥ずかしいのーーー!そして本当に穴開きそうだよーー!


「………好きなの?モンゲ」

「…えっと、今日買おうとしてたのがモンゲの新作」

「…ふーん。どっち買うの?」

「え?」

「モンゲの新作、γとΘどっち?」


 言われた瞬間思い出した。そうなのだ、「モンスターゲッター」は毎回新作2作品が同時発売されるのだ。

 ストーリーは同じだけど登場モンスターや細かい入手アイテムが違うのでコンプリートには2作品が必要なのだ。


「……忘れてた」

「くっ」


 笑ったー!健君笑ったーー!


「だってまだゲーム機本体持ってないからそっちに集中しちゃって!そしたらカバーのハネドラいるし!お願い笑わないでー!」

「いや…だって…そんな絶望したみたいな……くっ」


 ……結果として健君は10分は小刻みに笑っていた。失礼よ。

 今はコーナーから離れて2人で休憩スペースのベンチに並んでいる。

 健君は笑いを治めるのに。私は「モンスターゲッター」をどちらを買うか。


「それで決まったの?」

「……まだ」


 悲しいことにそれぞれに好きなモンスターが出るのだ。一番のハネドラは両方に出るけどそれ以外のモンスターが見事バラバラなのだ。

 でも2つは買えないし、買ったとしてもどっちも中途半端になる気がする。それは嫌。


「んー。んー」

「…………欲しいモンスター僕から送ろうか?」

「え?」


 横を見ると健君が恥ずかしそうに目線を逸らした。


「モンゲってトレード機能あるから、買わなかった方に出てくるの僕があげるよ」

「本当!?」


 ずいっと前のめりになる。健君は逃げるように体も仰け反り気味だ。


「う、うん。僕両方持ってるから」

「ぜひお願いします!ありがとう!」


 嬉しくて健君の手を両手で掴む。コンプリートしたい派でもあるのでとてもありがたい。


 嬉しさのあまり気にしていなかったが私が手を話しても健君の顔は真っ赤だった。


「モンスターゲッター」は世界的電気ネズミのゲームをモチーフとしています。

木林は火ネズミの子が大好きです!

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