最推しは最推しでした
「星方学園~星といっしょにあなたを~」
ゲーム期間は高校2年の1年間。新学期4月からスタートし10月に一緒に流星群を見て個別ルート開始、3月の卒業式にEDを迎える。
そんな中で個別ルートに入る為の必須イベントや好感度が足りないと10月に流星群を見るのが1つ上の莉乃の兄・篠原理人となるのだ。
理人と流星群を見た後、それ以降の時期イベントも攻略対象ではなく兄と過ごし、卒業式は兄を祝うというのがノーマルED。
ファンの間では通称兄EDと呼ばれている。
そして何を隠そう、その兄・篠原理人が“自分”の最推しなのだ!
莉乃に似たイケメン。何よりボイスが声優さんの中で一番大好きな方なのだ!
ぶっちゃけ「実は義兄で隠し攻略対象なんじゃね?」とい思いで「星学」に手を出したのだ。
まあ兄はまごうことなき実兄で色恋のあれやこれはありえなかったけれど妹思いの幸せ家族に心を鷲掴みでございました。
そんな最推しが待っているのなら再びお一人様でも構わない!!むしろ修羅場回避できるなら大歓迎よ!!
◆◆◆◆
篠原莉乃。17歳。前世を思い出して1時間。心臓のバクバクが止まらないです。
今私はリビングの扉の前です。この中には我が最推し・兄理人がいるのです。
うん、自室の扉越しに起きたことは感じとっていましたので知ってます。
ふーっ、と息を吐きだし、扉を開ける。
「おはよう莉乃」
いい声!!莉乃と同じくゲームと同じ声!!こんなイケボが一般にいていいの!?耳が幸せパート2!!!
「莉乃?何固まってんだ?」
「あ、ううん。おはようお兄ちゃん」
ああああ!耳が!!以下略。
篠原家は父は会社員で来年まで単身赴任。母はホテルのレストラン勤めで日中の中抜けと深夜以外は基本いない。
家族仲は良く、年子の兄は莉乃を可愛がってくれている。前世の記憶関係なく莉乃も理人が大好きだ。
もちろん家族として。
「朝昨日の残りでいいか?」
「うん、食べよう」
「用意しとくから顔洗ってきな」
「ありがとう」
お兄ちゃん優しい。
前世では「何故攻略対象じゃないんだーーーーー!でも家族愛幸せです大好きだーー」と何度叫んだか。
そんな事を考えながら身だしなみを整え終わると昨日の夕飯残りの野菜炒めとお味噌汁が用意されていた。
お茶碗を置くとお兄ちゃんはテレビのリモコンを手に取った。
「テレビ点けるぞー」
「うん。いただきます」
「いただきます」
テレビの音が響く中で箸を進める。
「莉乃ー俺今日は徹んとこ行くからなー」
「……徹君?」
「そー、なんだ?莉乃も久々に一緒に行くか?」
「いやいい。いいよ」
ふるふる横に振って断る。
理人の親友。千羽徹。
攻略対象の1人だ。
◆◆◆◆
「星学」の攻略対象は3人。
1人目。
二階堂結城。同学年の生徒会長で見た目は王道王子様系メインヒーロー。けれど腹黒。
性格はいわゆるキラキラ腹黒。デレは色んな意味で破壊力が凄まじい。
2人目。
一条茂。国語教諭で莉乃の副担任。仕事はしっかりだけどチャラ系。
3人目。
千羽徹。1つ上の先輩で兄理人の親友。面倒見のいいお兄さん。
元柔道部で体格も背も180cm越えで大きい。
お兄ちゃんが家を出て、私はノートに攻略対象メモを書きなぐった。
私の求めるノーマルEDに行くためにはこの3人に気を付けないといけない。
「星学」には好感度以外にもルートへ入る為には必須イベントがある。
二階堂結城は生徒会への加入。一条茂は国語の学級準備担当への加入。
そして千羽徹は理人と共に彼の自宅へ遊びに行くが、物を壊してしまいその後お詫びにお菓子を渡すという2段階イベント。
今日のお兄ちゃんのお誘いは徹君イベントの入り口だったよ。
正直2段階イベントなのでお詫びを渡さなければ回避だけど物を壊して詫びもしないなんて嫌よ。
必須イベントの入り口は1回ではなく4~7月末まで数回起こる。
現在は6月上旬。つまり後2か月程必須イベントを回避すればルートには入れない!
「逃げ切るぞー!」