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Side たける3

 

 それは友達とお昼を食べている、ある日の事だった。


「最近生徒会長に彼女できたんだって」


 生徒会長…二階堂先輩か。たしか実家が大手会社で本人も見た目はいいけど優しいって学年問わず人気の人。特に女子人気が高い。男子人気も低くないのはちゃんと生徒を覚えて、丁寧に対応しているからもあるだろう。この間の体育祭で僕もわかったし。

 そんな人の彼女…周りからの僻みや嫉妬とかヤバそうだな。


「あれ?おれは二階堂が猛烈アタックしている女子がいるって聞いたぞ。ほれ、2年のあの可愛い先輩」


 手が止まる。2年…頭に浮かぶのは嬉しそうにぬいぐるみを抱える姿。

 よぎった姿を頭を振って遠ざける。2年生はたくさんいる。可愛いと称される子はいくらでもいるだろう。


「っかーあんなのにアタックされるってヤベーな。付き合うの秒読みだろ」

「いいよなーあんなイケメンだとおれも彼女ほしー!」

「俺の彼女恥ずかしがりで画面から出てこないんだ」

「1次元の壁は厚い」

「ああ!どうしてあなたは平面なの!」


 ゲラゲラと笑いだす。こうして集まっているのは僕と同じゲーム好きだ。こうして脱線してオタクらしい会話へと移行するのは常だ。

 でも、今は一緒になって笑う気がしない。さっきの会話が頭から離れない。


 気付けば食べていたパンはなくなっていた。ほぼ無意識で食べたから食べた気がしない。まだ購買にパンあるかな。


「ん健ーどした?」

「足りないから買ってくる」

「ほんとたけるんはよく食べるなー」

「でも縦に伸びない」

「お前みたいに横に伸びるよりマシだろ」

「うっさい人の気にしてること突くな」


 身長の事を言った奴の椅子を軽く蹴る。後で更に小突いて、今日はノート貸さない。




 1人で歩くとまたさっきの会話がよみがえる。可愛い先輩…二階堂先輩がアタック…。

 正直二階堂先輩はよく知らない。初めて顔を合わせたのはこの間の体育祭の時。それもとお兄のついでだ。りひ兄と莉乃先輩もいた。

 …あの時、莉乃先輩を見た二階堂先輩の視線。あれが、どうしてか忘れられない。ほんの数秒の短い時間だった。二階堂先輩が莉乃先輩をただ見ていた。それが、気になる。


 着いた購買には菓子パンが数個残っていた。惣菜パンがよかったけど背に腹は代えられないのでメロンパンとデニッシュを買う。教室に戻る気も起らないので昇降口近くの自販機横のベンチに座る。


『っかーあんなのにアタックされるってヤベーな。付き合うの秒読みだろ』

『でも縦に伸びない』


 メロンパンに齧りつく直前に友達の声を思い出す。…背伸びないのは僕のせいじゃないし………牛乳飲むか。

 自販機から買った牛乳を取り出す為にしゃがむと影が落ちた。


「こんにちわ健君」

「こん、にちわ…莉乃先輩」


 そのまま続いて自販機でペットボトルを買うと「横いい?」と僕の隣に座った。


「こうして座るの久々だね」


 そう笑う莉乃先輩はやっぱり可愛いと思う。……こうして座ると莉乃先輩が少し低く感じる。僕の方が目線が高い。


「どうしたの?何かついてる?」


 じっと見すぎたのか莉乃先輩が首を傾げる。


「いや…座ると僕の方が目線高いかな…って」

「ふふふ私座高低いのですよ。自慢じゃないけど足の方が長いのです」


 もし効果音をつけられるなら後ろにはポップ体でドヤーとついただろう。かわいい。

 そしてこの状況に喜んでいる僕がいた。彼女よりも背が高い。それはただの錯覚だ。ねつ造だ。願望だ。


「でも私これ以上伸びないと思うんだよねー。去年から変わっていないし、その点健君はこれから伸びるもんね」


 また莉乃先輩を見つめる。笑顔だ。バカにしている様子はない。


「…僕も身長あんまり変わってないけど」

「でも男の子ってこれからも背伸びるし、結構高校の途中から一気に背伸びた子とかもいるよ」


 そうなのか?今まで身近な比較対象のとお兄は小学生の時から背が高く、りひ兄も中学には背が伸びていた。僕もこれから伸びるのか?


 いつもの笑顔を向ける莉乃先輩が少し眩しい。

 もし僕が貴女の背を越えて、もし僕が今より自身が出て。もし今より、自分の貴女への感情の向き合えたら…貴女はなんて返してくれるのだろう。




身長の件ですが、知り合いの実話です。中学時代学年で一番低かったのに高校で一気に背が伸びて、170cmオーバーになっていました。成長痛が心配ですね。(;・∀・)

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