4話 夏雲と赤いポルシェ
麗華の父の車は直ぐに見つかったホワイトのポルシェで車のナンバーは『333』だった。
「待っててね、パパに電話するから」麗華はそう言ってスマートフォンで通話をする。
そうすると車はゆっくりとしたスピードで発進した、僕はその後に続く。
「なあ、麗華。なんでお義父さんのナンバーは『333』なんだ?」
「私も聞いたんだけど、よくわからなかった。聖杯と三位一体なんだってさ」
「聖杯と三位一体?」僕は少し考えてみる。キリスト教と関係があり尚且つポルシェのホワイトに3が3つ。なんだか三目のホワイトタイガーが連想できた。
「お父さんはね、クリスマスが大好きなの。だから今年も家族でお祝いしようって言うだろうけど、今年はあなたと過ごすって今日、レストランの席で言うわ。そう言えばきっと父にも伝わるだろうから、あなたの思惑も」
「僕の思惑って・・・」なんだか僕は気恥ずかしくなる。
「いいじゃない、パパもあなたの事、好きなんだしさ。前に言ってたわよ。日ノ出くんは可愛げがあって麗華にピッタリだって。私は高飛車だからあの位かわいいやつのほうがお前には向いているって」
「へぇ、そうなんだ」
「それで私は言ってやったの。あの人は運命の人だって」
「そっか」ビーチボーイズのアルバムのSummer Daysは『You're So Good To Me』と変わっていた。ちょうどさっきの曲の次の曲である。
「ちょっとタバコ吸ってもいい?」
「窓開けてくれよ」
麗華は黒い革の高級そうなバッグからシガレットを取り出した。シガレットの銘柄はいつものダヴィドフマグナムでライターはジッポーで、そのジッポーには蛇の模様が描かれていた。
「あのデパートタバコ吸えないのよ。いやになっちゃわよね。最近の世の中。どこもかしこも禁煙で」




