14:ハサミについて
ハサミは道具だ。何かを切ることを目的にした道具だ。
しかし世の中には切って欲しくないものがある。たとえば体の一部なんかがそうだ。
だから娘にはハサミを持たせなかった。
切って良いものと、切ってはならないものの違いを自分の口で説明できるようになるまでは持たせないつもりだった。
ある日、娘がサインペンとどっかから汲んできた水でティッシュを染め物にして、せっせとリカちゃんに着せているのを見たとき、もうハサミを買い与えようと決めた。
娘の発想は母のそれを大きく超えていて、ハサミを持たせたらもっと面白いものを作りそうだと思ったからだ。
もちろん安全に配慮したお子さまハサミで、みっちりレクチャをしてからデビューである。
そしたらものすごい勢いでサインペンで服を描いてはハサミで切り取ってリカちゃんに着せている。
平面的な服しかまだ描けないから、前だけ隠したびんぼっちゃまスタイルなのだが、立体的な服の展開図に気づくのも時間の問題のように思う。
とにかく集中力がすごい。圧倒的にハサミが楽しいようだ。
セロテープと紙とサインペンとハサミがあれば、ずーっと何かを作っている。
正直これまで買い与えたおもちゃより、一番長く遊んでいるように思う。
ハサミは使い方によってはケガをする、でもそれをいつまでも怖がって、チャレンジをさせないのは良くないことだと反省した。
むしろ無から有を産み出す情熱を私にも分けてほしい、そう思う今日この頃だ。