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13:火星について


上司が「火星に行きたい」と言い出した


(おいおっさん、仕事のし過ぎで狂ったか)


私は紫煙の間からぼんやりと彼の顔をみていた


しかし彼が育てた優秀な部下達は彼を火星に送り出すべく綿密なシミュレーションを始めた


彼らの凄いところは決して『できない』とか『ばかばかしい』と言わないことだ


このチームにいると自分がいかに凡庸かに気づかされる


凡庸なりにできることをしようと、私はこうして記録を取っている


「日本では無理だ、しかしオランダなら可能性はある」


リサーチの得意な李がマーズワン計画を探しだしてきた


それは火星への片道切符だった


「しかしなぜ火星なのです?」


ごもっともだ、我々は先に目的を知らねばならない


本質的な問題を探り出す、彼女はコンサルの鑑だ


新たな天体を開拓したいのか、歴史に名を刻みたいのか


地球を捨てたいのか、あるいは……


彼女の質問に、部屋の空気がふと緩む


その時、誰もこのおっさんを宇宙に打ち出したくないのだと気づく


誰が二度と会えないと解っている旅に仲間を喜んで送り出すだろう


どうやらチームの総意のようだ、安心した


「飽きたんだ、何か新しいことがしたい」


彼はそう言って一年後、仕事を辞めた


火星に行くのか、あるいは地球に留まるのか、それは解らない


ただそれからというもの火星という言葉を聞いて焦燥感に駆られるようになったのは事実だ


続く

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