俺が三人分になる
朝起きたら、目の前に俺がいた。
「うわっ!?」
びっくりして飛び起きたら何か踏んだ。
俺だった。
踏まれた方の俺が痛いと言いながら起床して、目の前の俺に驚いてたたらを踏んだ。
まだ寝ている俺も踏まれて痛みで起きたらしい。
「何するんだよ」
「なんで俺が三人いるんだよ」
「何が起きてるんだ?」
俺たちは朝から混乱していた。
少し落ち着こうと自分の部屋からでてリビングに行くと既に食卓には料理が並んでいた。
確か、今日の食事当番は俺だった筈だ。母さん怒ってるだろうなあ。
「おはよう」
「おわぁ!?」
するとそこにはなんと、俺がいた!
第四の俺は何故かやけに落ち着いていて、まあ言いたいことはあるだろうが先に食事にしないかと進めてきた。
それを聞いて俺はひとまずこの場は言われた通り、飯にしようと思った。
俺は、二人の妹たちをリビングの扉から廊下に頭だけ出して呼んだ。
妹は、いつまでたっても食卓に集まることはなかった。これから先も、ずっと。
その理由を俺は第四の俺に尋ねた。俺が言うには俺のカワイイ妹たちは皆俺に変身してしまったらしい。
さらに言えばここ最近で世界中全員、どんどん俺に変化してるらしい。
テレビをつけると俺が眠たそうに天気予報している姿が確認できた。
朝の特撮ヒーローの中の人は全部俺で、俺扮する悪役の俺につれさらわれたヒロインの俺を主人公の俺が抱きしめて愛していると救い出したところでテレビの電源を切った。
「そんな、俺は悪夢でも見ているのか?」
「いいや、この世界ではこれが日常だよ。お前らが、最後に残された俺以外の奴らだった。だが今はもう…」
「……一体、いつからなんだ」
「そうだな、あれは今から5年前、中学生1年生の夏休みが終わる前の日の出来事だった」
「確か、夏休みの宿題……」
「そう、夏休みの宿題が全部終わらなかった俺は、流れ星にこう願った」
「俺を、3人分用意してくださいって」
「だが結局」
「願いはかなわなかった筈じゃないかって?」
「しかし、現にこうして」
「俺たちは増え続けてる」
「他の人類に成り代わって」
いつの間にか、何人もの俺が俺の家に集まっていた。
「お前らが」
「最後の」
「希望だったんだ」
何人もの俺が、俺を囲って、絶望した表情をしている。
「お、俺が俺じゃなかったってんなら、一体誰だったんだよ!」
「さあな」
「今となっては」
「俺にはそれすらも」
「分からない俺から」
「食べなくていいのか」
「おいしいぞ、俺」
おれは、その食事を一口食べると、俺は、俺俺俺アレ?
俺は俺を握って俺の器から俺の俺を俺て。
おれが、おれで、俺だから。
ダメダ、おかしくなる。俺はこれ以上俺は俺でいられない。だから俺が新しく俺を作るんだ!
俺は新しい妹の俺になる。そいつの姉に俺はなる。二人のアニキに俺はなる。それ以上の俺はいらない。俺はこの世界に何人もいらない。だから俺は消えて無くなってくれ。
「おにーちゃーん、朝ごはんまだぁ?」
「お腹空いたんだけど」
「もー、しょうがない子たちだなぁ」
俺はこれからずっと、俺たちと生きる。俺しかいない世界でずっと。