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二.五話 異世界召喚

我ながら思うけどクラスメート視点が適当すぎる……

 


「うっ……ここは……?」


 次々と目を覚ますクラスメート達。だが、その中に透の姿はない。


「そういえば教室が突然光り始めて……」

「俺ら……一体どうなったんだ?」

「え、何かのドッキリ?」


「っておい……! 髪の毛が!」

「うわっ! なんでこんなにカラフルなんだ?!」


 豪華な装飾が多様に施された広い空間でそれぞれが現状を思い出し、更に自分たちの髪色に驚き始めた時、突然声が響いた。


「よくぞ来てくれた。異世界人の諸君」


 その声は威圧的で重たい。

 発していたのはクラスメート達の前で一際目立つ玉座に座っている髭の生えた人物。

 そしてその隣には誰もが息を呑むような美少女が立っていた。


「ここは諸君らにとっての異世界である【ヴォルガント】のセントリア王国である。そして我がこのセントリア王国の孤高なる国王、ザンバリ! その隣が我が娘、アリシアだ! 今我々の世界は邪悪なる魔族に征服されようとしておる。勇敢なる勇者達よ、今こそその身に宿す強大な力を以て世界を救う時だ!」


 そう言い深紅のマントを翻し、玉座から立ったその男、セントリア王国の国王、ザンバリ。

 そして、混乱するクラスの皆の中、唯一それに応えたのはクラスヒエラルキー最上位において人気者である日照(ひでり)流星(りゅうせい)であった。


「あの、質問宜しいでしょうか」

「貴様っ! 王にその態度は無礼だぞ!」


 手を挙げた彼に護衛の騎士から罵声がとぶ。

 が、それを制し、ザンバリは続きを促した。


「魔族と言っても僕たちの世界にはそのような種族はありませんでした。なのでいきなりそういう事を言われても理解が出来ません」

「む、そうだったか。ならば詳しく話そう。

 まず、この世界には五つの種族が存在する。我々人族、獣人族、精霊族、エルフ族、そして最大の宿敵、魔族だ。魔族は世界を支配下に入れようとする残酷で卑劣な連中。よって早急に手を打たねばならない。だがこの国には戦力が足りない。戦場へ赴いた我が息子も……」

「なりません、父上」


 それまで口を閉じ無表情だった王女──アリシアが声を発した。

 まるで女神のように綺麗で惹き込まれるような声。クラスの全員がその女神のような風貌に目を取られていた。


「父上は十分哀しみ、苦しんだではありませんか。これ以上は言わなくとも構いません」

「アリシア……」


 もしもこの光景を透が見ていたとすれば思わずこう呟いてしまっただろう。“なんだこの茶番は”と。


「我は悔しい……! 息子があのような最期を迎えるなど……!!」


 ぐっと拳を握りしめるザンバリに日照が力強い声で応えた。


「僕は、この国に協力します!」


「私も!」

「俺もだ!!」


 それを皮切りに、次々と声が上がる。


「僕は人が苦しんでいるところは見たくないです! だからその原因の卑劣な魔族は一人残らず討ち滅ぼす!! 皆、協力してくれるかい?」


 皆はその問い掛けに直ぐに頷いた。

 ───アリシアが傍でほくそ笑んでいることも知らずに。


「……! 礼を言う、異世界人の諸君よ! ではマリア、案内を」

「畏まりました」


 こちらです、とザンバリの従者マリアがクラスメート達を誘う。そのまま38名マイナス1名の集団が玉座の間を後にしようと背を向けた─────その時。




 ドスッ


その音に皆がそちらを振り向く。




「ってぇな。ちっ、あのじじい空中に移動させやがって。次会ったら絶対ぶん殴る」




 そこにいたのは、今まですっかりクラスメート達に忘れられていたクラスのいじめられっ子、矢崎透であった。



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