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「……は……?」
突然すぎてロゼリッタは間抜けな声しかヴァーンに返せなかった。ヴァーンは先程とは全く違う真剣な表情でロゼリッタを見ている。真剣すぎて睨まれているようでもあった。
「リーズは目覚めたら君に決断を迫るだろう。“イヴ”となるか、魔族となるか、どちらかを選択しろと。
……どういうことか分かるだろう。君が乙女でもイヴでもないただの人間の娘となれば、リーズに休む間は与えられない。ステファンのような考えを持つ魔族が出て来るかもしれない」
ロゼリッタは言葉を失った。ヴァーンが、つと目を伏せて黒い前髪の下に黒い瞳を隠す。
「その度にリーズが君を守る為に今日みたいなことになるのは避けたい。それ以前に私が許さない」
ヴァーンとロゼリッタの脳裏には今朝のリーズの姿が鮮明に思い出され浮かんでいた。肌から白い煙が音を立てて上がるあの光景は、忘れようにも忘れられない。
「分かるだろう」
再び、ヴァーンがロゼリッタを見た。
「君を守る為なんだよ。イヴになるか、魔族になるか。例えどちらになっても君もノワールも安全になる。私達は歓迎する。
本当にイヴではなかったとしてもリーズがイヴだと宣言すればイヴとして通るだろう。それ程までに魔族の中でヴァンパイア公爵というのは、重たいものなんだよ」
それと同等のものを背負うか否かは全てロゼリッタに任される。だがロゼリッタに選択肢などない。
「リーズが目覚め回復するまで一日か二日の時間がある。よく考えて欲しい。君はどちらかを選ぶことを余儀なくされているのだから」
もうお茶どころではなかった。ロゼリッタは表情が硬張ったまま考え始めた。
エリーゼはロゼリッタの様子を認めると立ち上がり、厚いカーテンをめくった。高く昇った陽に顔をしかめて、エリーゼは薔薇園がある方に視線を向けた。
ヴァーンはエリーゼを止めることはなく扉の向こうに消える。部屋の外ではニコラスが待ちぼうけを決められていた。ヴァーンはニコラスに笑いかけた。
「待たせたね。クロリアさんから連絡は入ってないかい?」
青い髪が眩しくてヴァーンは目を細める。ニコラスはかぶりを振った。
「まだ何も来てません」
ヴァーンは息をつくとニコラスを部屋に招く。ニコラスは緊張したが表情に出すことはなかった。




