表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/81

第81話 噂の人物は二人目の性転換者?

「なぁ、聞いたか?」


「何をだよ」


「知らねぇの? なんか転校生が来たらしいって噂があるんだけど」


「転校生?」


「んん? がらっと服装変えてすげー可愛くなった女子がいるって聞いたけど」


「なんだよそれ。そんなんで他のクラスにまで噂が広がるか?」


 学校に着いて昇降口で靴を履き替えていると、ロッカーの向こう側からそんな話が聞こえてきた。


「こんな時期に転校生?」


 佳織が胡散臭そうに小声で話しかけてくるが、まったくもって同感だ。まだ服の趣味が変わったって話が現実味がある。


「さすがに転校生はないと思うが」


「だよねー。まぁ夏だし? 可愛くなるのはよくあるんじゃないかな」


「……よくあるのか」


 首をかしげながらも自分の教室へと向かう。

 梅雨も明けて夏休みも目前となっている今は、たとえ建物内の日陰であっても暑い。超暑いのだ。女子が薄着になるのはわかるが、何か服装を変えるイベントでもあったっけ……。


「まぁいいか」


 考えてもわからないものは放置に限る。


「おはよー」


 前方の席である佳織と別れて自分の席へと座ると、隣の静に声を掛ける。


「ねぇちょっと聞いた!?」


 が、挨拶ではなくやけに興奮した言葉が返ってくる。


「急に可愛くなった女子がいるって噂は聞いたけど……」


「そんなんじゃないわよ!」


「な、なんだよ」


 あまりの勢いに若干引くが、静がここまで興奮するってなんだろう。


「どうしたのよ?」


 佳織も気になったのか、荷物を席においてこっちにやってきた。後ろには千亜季もいるが、若干頬が紅潮しているように見える。


「私もその噂聞きましたよ!」


 どうやら静と同じ状態になってるみたいだ。ちょっとこれは気になってきたぞ。視線で続きを促すと、とんでもない事実が静の口から語られる。


「なんでも、男から女になった生徒がいるらしいのよ!」


 ……ん?


「なんだって……?」


 ちょっと俺の聞き間違いかな。まさか俺みたいに男から女になったヤツがいるって聞こえたんだが。さすがにそんなやつ他にいるわけないよな。


「だから! 圭ちゃんみたいに男から女になった子がいるのよ!」


「……マジで?」


「えええー!?」


「ぶふっ」


 俺の声に続き、佳織の叫びと後ろの席で吹きだす祐平の声が続く。さすがに性別変わったヤツがもう一人いると聞かされれば吹きだしもするか。


「ちょっ、それってどこのクラス!?」


 しかし祐平なんぞにかまってる暇はない。俺と同じ人間が現れたというんならぜひとも話をしたい。


「二組って聞いたよ」


「よし、行こう。今すぐ行――」


「よーし、みんな席につけー」


 はやる気持ちを押さえて今すぐに行こうとするも、一時間目の授業が始まるチャイムと共に先生が入ってきた。

 くっ……、この中途半端に上がったテンションをどうしてくれる……!




 一時間目の授業を受けている間にちょっと冷静になった。十分しかない授業の合間の休み時間に行くより、昼休みに行こうという話になったのだ。そんなわけで迎えたお昼時。掻き込むようにして昼ご飯を胃に詰め込んだ俺たちは、さっそく二組の教室へと来ていた。


 教室の前には、室内を伺っている男どもがちらほらと見える。みんな考えることは同じらしい。そんな男ども並んで一緒に窓に張り付き、教室内を見回してみる。……が、特に教室内でそれっぽい人だかりはできていない。


「……いないのかな?」


「うーん、学食で昼飯食ってるのかも?」


「どんな子なんだろ?」


「……あれじゃないかしら?」


 佳織と顔を見合わせていると、静がふと廊下の向こう側を指さしていた。どうやら予想通り学食帰りのようだが、静の表情がなぜか真顔になっている。あれだけ興奮してたのにどうしたんだ。


「あっ……」


 千亜季も何かに気付いたように声を上げるが、よく見ても特に変わったところはないように見える。後ろからついてくる男子が多い気がするのは、それが目当ての生徒だからだろうか。こっちに向かってくる女子は確かに可愛い。


 首元にワンポイントでレースとリボンの飾りのついた白い半袖ブラウスに、淡いグリーンのひざ下フレアスカートを穿いている。小顔で色白なスレンダーな体型と相まってなかなか際立つ可愛さではある。……あるのだが。


「なんかどっかで見たことあるような……」


「あれ? 五十嵐さん……? どうしたの?」


 こちらに気が付いたようで、向こうから声を掛けてきた。

 っていうかお前かよ!?


「拓也……だよな? なんで学校でまでそんな恰好してんだよ」


「あはは、何言ってるんですか。間違いなく正真正銘椎野(しいの)拓也(たくや)ですよ。まぁなんと言いますか、吹っ切れたというか……?」


「はぁ?」


 吹っ切れたからって学校にまで女装してくるか普通? いやでもモールで女装したときはそのまま着て帰ったよな……。あれで吹っ切れたってことだろうか。


「というかこの服着て帰ったときにクラスメイトにばったり会っちゃって」


 それはご愁傷様というしか。まぁそれで学校でも好きなことを我慢する必要がなくなったってんなら、いいことなのかもしれないが。揶揄われていじめに発展したり引きこもったりするよりはマシだな。


「今噂になってる女の子って、拓也くんなの?」


「あー……、みたいですね……」


 苦笑いをしながら頬をポリポリと掻きながら認める拓也。

 やっぱりかよ……。俺と同じ境遇の人間が他にもいたのかと喜び勇んできたのに……!


「なんだよそれ……」


 心の中でがっくりと両ひざをついてしまう俺であった。

少しでも面白いと感じられたのであれば、下にある☆をぽちっとしてポイントを入れていただけると作者は泣いて喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
↑クリックで投票できます

第六回ネット小説大賞受賞作品
隣のお姉さんは大学生(完結済み)
もよろしくお願いします!

ホムンクルスの育て方(改稿版)
魔改造されたホムンクルスに転生したお話はじめました。
― 新着の感想 ―
[良い点] め ざ め
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ