第29話 お風呂って気持ちいい
「……あ、そう」
おじさん専用のシャンプーとコンディショナーって……。それむしろ、おじさんハブられてないかな……。
うん、でもまぁ、ややこしい使い方とかじゃなくてよかったよ。
「そういえばコンディショナーって何? リンスじゃないの?」
「ん? ああ、リンスのことよ? 最近はコンディショナーって言うみたいだけど、あたしはリンスって言い慣れてるから」
「ふーん……、そうなのか」
シャンプーの一つを手に取ってみるとそこには、『髪に栄養を!』と書かれている。
おじさんの頭を思い浮かべてみるが、特に薄い印象はなかったんだが。本人は気にしているということか。
ハブられてるわけではないことがわかったのでまぁよしとするか。
「ほら、洗ってあげるから座りなさい」
相変わらずタオルで前を隠したままの佳織が、恥ずかしがりながらも急かしてくる。
まぁ確かに洗い方を教えてくれるとは言ってたが、実践しなけりゃいけないものだったのか。
「へいへい」
教えてくれるんならまぁいいかと思いつつ、お風呂用の椅子に座って佳織に背中を向けると、全身を脱力させてリラックスする。
後ろで佳織がシャワーを手に取って蛇口をひねり、水が勢いよく出る音が響くと。
「……なんでアンタはそんなにリラックスできるのよ!」
文句と共にお湯になりきれていない水を、頭から勢いよくかけられた。
「――つめたっ!?」
思わず立ち上がって後ろを振り向くが、なおも顔にシャワーをかけてくる佳織。
おいやめろ! 俺が何やったってんだよ!
「ちょっとこっち見ないでよ!」
手でシャワーを遮っているとようやくお湯になったようで、俺は大人しく佳織に背中を向けてまた椅子に座る。
若干イラっときたが、せっかく髪の洗い方を教えてくれるというし、ここは大人の対応をしておくことにする。
それに一応佳織の裸を見て、自分がどう思うか実験もできたし。
でも一応文句だけは言っとくか。
「そんなに恥ずかしいならなんで一緒に風呂入ってきたんだよ……」
「うるさいわね!」
言葉と共に勢いよくシャワーが頭にかけられる。
「……あんた……なら、べ……見ら……かまわな……から」
「なんだって?」
「なんでもないわよ!」
シャワーの音でよく聞こえなかったから聞いたのに、また怒鳴られた。
俺は肩をすくめながら、今度こそ大人しく頭を洗われることにしたのだった。
あー、やべー。
めちゃくちゃ気持ちよかった。
誰かに頭を洗ってもらうのが、まさかこんなに気持ちいいとは思わなかったぜ……。
でもこれは確かに面倒だな。
指の腹で頭皮をやさしく洗ったあとにトリートメントを付けるんだが、すぐに流さずに蒸らしたタオルを頭に巻いて、今は佳織と仲良く浴槽に浸かっている。
どうも髪の内側に成分が浸透する時間が必要らしい。
「なあ、これ毎日やんのか?」
俺は思わず自分の頭を指さして佳織に尋ねる。さすがに毎日は面倒だ。
「毎日じゃなくてもいいわよ。髪の傷み具合とか、トリートメントの種類にもよるし」
「へー、そうなのか」
いやしかし、髪の傷み具合ってなんだ。俺にはわからんぞ……。
どうも感情の籠っていない返事だったらしく、佳織が髪の傷み具合の見分け方を教えてくれる。
枝毛とか、指で髪をくるくる巻いてみてすぐ元に戻るかどうかとか、手櫛で髪を梳いたときの指通りとか……。
「それって普段の状態知ってないとダメだよな」
「まぁそうね。……でも毎日触ってればわかるわよ?」
「……そういうもんか?」
「そういうもんです」
形のいい胸を張りながら答える佳織。
まぁそれなら試してみるか……。
「じゃあ次はコンディショナーね」
そう言って立ち上がり、湯船から出ようとする佳織。
しかし俺はまだ湯船に浸かっているわけで、そうするとどうなるかと言うと、形のいいお尻が目の前に現れるわけだ。
自分のお尻も触れば柔らかいんだが、もちろん自分で見ることはできない。
だがしかし、今はそれが目の前にあるのだ。
ふっくらとして少しピンク色に染まったお尻が目の前で揺れている。
思わず手を伸ばして人差し指でつついてみると、ふにっと柔らかい感触が返ってくる。
「ひゃあっ!?」
黄色い悲鳴を上げながら、お尻を両手で押さえてこちらを睨みつけてくる佳織。その頬はリンゴのごとく真っ赤に染まっている。
「な……、なな……、何すんのよ!」
いやしかしお尻って超柔らかいのな。そしてほどよい弾力。自分のおっぱいも似たようなものだが、いかんせんお尻はおっぱいより大きい。
これはかなり触りがいがあるんではなかろうか。
「……いや、柔らかそうなお尻だなーって思って」
「はぁっ!?」
「それが目の前にあったら触らずしてどうする」
「意味わかんないし!」
男だったときならともかく、今の俺は女なのだ。触ったところで問題になるだろうか。
それに幼馴染だし、俺の姿が変わってから一緒にいるようになった静や千亜季より、気軽にスキンシップを取りやすいのも確かだ。
まぁその静はベタベタと俺を遠慮なく触ってくるが。
「……何怒ってんの?」
十分湯船には浸かったので、俺も出ることにする。
「怒ってません!」
しっかり怒ってんじゃねーか。いやまぁ、お尻をつついた後の反応はむしろ予想通りなんだけどな。
しょうがねぇなぁ。
俺も湯船から上がると、くるりと佳織に背中を向ける。
「自分だけ不公平ってか? ほれ、俺のお尻も触っていいぞ」
「……は?」
そして顔だけ佳織へと向けるとニヤリと口を歪ませ。
「だからあとでちょっと、佳織の二の腕も堪能させてくれ」
「――はぁっ!?」
いつものように佳織をからかうのだった。
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