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第18話 悪魔の健康診断

「はーい、明日は健康診断があるから体操服を忘れないように」


 学校が始まって数日が過ぎたある日のホームルームである。担任の川渕先生からそんな言葉が出たのは。


「「「えーーー!!」」」


 教室中の主に女子生徒から不満の声が上がるが、それはきっと自身の体重を思い知らされるからだろうか。

 しかし健康診断と言えば男女別か。……となると俺はやっぱり女子側なんだろうな。

 すでに体育の授業を女子生徒と混じって体験した俺には死角はないがな!


 というかこの体になってすぐに体重計にはすでに乗ってあるのだ。

 今更自分の重さで驚くなどはしない。

 そしてその日は、検尿の容器が全生徒に配られた後に解散となった。




 というわけで健康診断の日が来た。

 いやまったく、今朝の検尿も強敵だった。この体になってから日が浅すぎるせいか、まったくもっておしっこがどこに飛んでいくか予測がつかないのだ。

 そのせいで容器にはうまく入ってくれず、さらには自分の手にひっかけてしまった。

 ……まぁ最終的には提出できる分は確保できたからよしとしよう。


「はい、おはようございます。今日は二時間目が健康診断なので、忘れないでくださいね」


 教卓にセロハンテープで張り付けられた検尿回収ビニール袋にブツを投入していると、担任の先生がやってきてそう告げた。


「健康診断の用紙を配りますので、各自で持って更衣室で体操服に着替えたら、各種診断の場所を回ってください」


 どうやら一時間目は一組から三組まで、二時間目が四組から六組まで、三時間目が七組から九組の健康診断を行うらしい。

 体育館で身長や体重などを計り、視聴覚室で聴力検査、第二視聴覚室と保健室で男女別に内科検診だとか。


 一時間目の授業が終わり、俺たちは着替えるために体育館にある更衣室へと向かう。


「はぁ……、今年の内科も男の人なのかな」


 前を歩く千亜季が憂鬱そうに呟いているが、内科ってアレだよね。聴診器当てるやつ。

 ええーっと、マジで男の先生にされるのか。それは女子としては嫌なイベントのひとつになるわけだ。


「去年は男だったの?」


「そうだよー。わたしはそこまで感じなかったけど、千亜季はすごく厭らしい目つきで見られたって」


 思わず聞いてみたが、すかさず静が代わりに答えてくれる。


「うん……」


 千亜季は心底嫌そうだ。ふーむ、どうやら女子にとっては深刻な問題らしい。


「気にしない方がいいわよ。……相手だって仕事でやってるんだし、案外早く終わらせたいって思ってるだけかもしれないし」


 佳織は案外現実的な考えだな。

 いやまぁ確かに、見慣れてると何も思わなくなるかもしれないが……、そんなもんなのかな。


「……そうかなぁ」


 千亜季は懐疑的だが、どうせやらなければいけないんだから気にしないのが一番かもしれない。

 内科検診について語っているうちに体育館前に着いてしまった。

 俺は着替える場所が皆とは別々なのでここで一旦お別れだ。


「じゃあ俺向こうだから」


「あー、そっか。……わたしは別に一緒でもいいんだけどなぁ……」


 静が嬉しいことを言ってくれる。一人じゃ寂しいというわけでもないが、まぁ味気ないのは確かだ。


「何言ってんのよ、静は見られてもいいの?」


 そんな静になおも現実的な佳織の意見が飛ぶ。

 まぁね。俺はこんな姿になっちゃったが、中身はれっきとした男だ。


「えー、わたしは見られてもいいよー。というかむしろ、圭ちゃんのおっぱいを見てみたい」


「なんだよそれ」


「だーめーでーすー!」


 なぜか佳織が激しく抗議する中、「じゃあまた」と改めて告げて俺は教員用更衣室へと向かった。




 一人で着替えたのちに体育館へと顔を出すと、一緒に来た佳織、静、千亜季が待ってくれていた。


「よし、じゃあさっそく悪魔の体重計へと行こう!」


 などと静が悪魔の笑顔を浮かべながら張り切っている。


「……このために朝ご飯抜いてきたんだから……、大丈夫よ……」


 佳織はお腹を押さえながら決意の表情だ。


「……」


 千亜季は……、無表情だ。

 ……なんだコレ。どうなってんの?


「何があったんだ……?」


「何もないよー? 圭ちゃんはちっちゃいから軽そうだねーって言ってただけだよー」


 なんだそりゃ。いやまぁ実際軽すぎて衝撃を受けたけども。

 というか佳織は朝ご飯抜いてんのか。体重測るだけなのにそこまでするもんなのか……。

 ってか千亜季までお腹押さえてるし。お前もか。


 憂鬱な二人を連れて、皆で体重計の列へと並ぶが、並んでいるのはほぼ男子だ。

 女子たちは嫌なところは最後に回したいのか。それともできるだけいろいろ回って体重を減らしてからと考えているのか……。

 それくらいで体重に変化があるとも思えないが……。


「あらー、かわいい子が来たわねー」


 絶望感あふれる佳織の計測が終わり、自分の順番になった時に身長と体重を担当しているおばちゃんから声が上がった。

 後ろを振り返ると、笑顔のしずかと無表情の千亜季ちあきが俺を眺めている。


「後ろの子じゃなくてあなたよ、アナタ」


 ああ、俺の事ですか。自分でも自分はかわいいと思うが、言われ慣れていないせいか、すぐに自分の事だとは気づかないことが多い。


「はーい、早く体重計に乗ってねー」


 どうやら体重と身長を同時に計れるようだ。こういうことはさっさと終わらせよう。

 持っていた健康診断用紙を渡して体重&身長計へと乗る。上からするするとプレートが降りてくると、コツン頭に当たって止まる。

 そしておばちゃんが数値を用紙へと記入していく。


「……はい、おしまい」


 手渡された用紙の数値を見ると、体重37キロ、身長146センチだった。

 うわー……、俺小さくなりすぎだろ……。

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