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第17話 姉妹とナンパ

 巨大パフェはあっさりと俺たちのお腹に収まった。

 食えるかどうか心配していたのがバカらしくなるくらいだ。むしろまだ食える。

 が、パフェが晩ご飯の代わりになるわけではないのでこれで終了だ。


「それにしても……、圭ちゃんってちっちゃいのに、ほどよいものをお持ちで」


 トイレでの出来事だ。

 静がそう言ったかと思うと、「ぐふぐふ」と怪しげな笑い声と共に、いきなり背後から俺の胸を鷲掴みにしてきた。


「――うひゃっ!」


 鏡の前でしげしげと自分の姿を改めて確認しているところだったから、後ろから近づいてるのはわかってたが……、いきなりなにすんだ。

 変な声が出ちまったじゃねーか。


「なにすんだよ」


 鏡越しに後ろの静に抗議するが、それでも止めようとせずに俺の下乳を持ち上げて何かを確認している。


「いやいや、いいサイズのおっぱいだなーって思って」


 そんな俺たちのやり取りを複雑な表情で見ているのは佳織だ。今は特にツッコまずに静観のようだ。


「いいサイズって……。この中じゃ一番おっきいおっぱい持ってるのは千亜季だろ?」


 そう言って隣にいる千亜季を見てみるが、やはりそのサイズからか俺たちをはるかに超える存在感を示している。


「ちょっとアンタ、セクハラはやめなさい」


 俺の言葉を聞いた佳織がすかさずツッコんでくるが。


「……静に言ってやれよ」


 未だに下乳を持ち上げるように、後ろからさわさわと俺のおっぱいを撫でまわす静を指さしてやる。


「静はいいのよ!」


 なんだと? 静はいいっていうのは、つまりあれか。静のおっぱいを揉む行動は問題ないということか?

 静だからってさすがに何してもいいってことはないだろう。つまりやっぱり、揉むのは問題ないということか。


 ……という解釈を持って佳織の胸を揉んでやろうかと思ったが、やっぱりやめておこう。

 なんとなく殴られる予感しかしないからだが。

 だとすれば俺のとる行動はコレだ。


「うわーん! 佳織がいぢめるよー」


 俺はくるりと回れ右すると、そのまま静に抱き着いた。

 身長差は十センチくらいあるだろうか。もうこの際自分の背の低さは認めよう。むしろそれを利用してやるつもりで行こうじゃないか。

 自分のおっぱいが潰れる感触を不思議に思いながらも、静に抱き着いて首だけを佳織に向ける。もちろんニヤニヤとした笑みを張り付けて。


「おー、よしよし、もう大丈夫だよー」


 もちろん静も乗ってくれるが、そんな俺たちの様子に佳織の表情が吊り上がっていく。


「だから、止めなさいって言ってるでしょ!」


「お姉ちゃんが怒ったー!」


「あははははは!」


 俺たちのやりとりを眺めていた千亜季がとうとう耐えきれなくなったのか、声を上げて笑い出した。


「ぷっ……、あはははは!」


 釣られたのか静も一緒になって笑い出す。


「な……なによ、もう!」


「いやホント……、佳織が圭ちゃんのお姉ちゃんみたいに思えて」


「……えぇ?」


 静の言葉に佳織は困惑顔だ。いや俺もホンキで佳織が姉だとか嫌だけどね。


「いやいや、俺もアレは冗談だからな?」


 一応俺も否定しておこう。あくまでノリだということを主張しておかねば。


「えー、でもすごく姉妹っぽく見えるよ?」


 なんだよ千亜季まで……。


「えー、コイツが妹なんて勘弁してよね」

「マジでコイツが姉なんて勘弁してくれ」


 思わず被ったセリフに佳織と顔を見合わせてしまう。


「「あはははは!!」」


 そんな俺たちの様子にまたもや笑いが止まらなくなる静と千亜季だった。




「ねぇねぇ、……君たち、もしかして姉妹?」


 モールの通路の真ん中に設置されているソファで、二人ずつ背中合わせに座って休憩中の時だ。

 俺と佳織の真正面で立ち止まった男二人組がこちらに話しかけてきた。


「「違います」」


 他愛のない話を佳織としていたところに、いきなりさっきのトイレでの出来事を思い出させるセリフだったもんだから、ちょっと棘のあるツッコミになったかもしれない。


「お……、おう、そりゃすまん」


 目の前の男二人組の第一印象は、チャラ男くんと真面目くんと言ったところか。

 最初に声を掛けてきた、髪を茶色く染めてジーンズとシャツを着崩した人物と、後で謝ってきた黒髪の白シャツ眼鏡くんだ。

 どっちも俺たちと同い年くらいに見えるが……、はてさて。


「知ってる人?」


「……だれ?」


 俺たちのやり取りに気が付かない後ろの二人組でもない。

 静と千亜季もこちらを振り返って、目の前の二人組に疑問の声を上げている。


「えーっと、私たちをナンパしてきた初対面の人?」


 佳織が疑問形で二人の質問に答えていた。まぁ特に間違っていないので俺も訂正はしない。


「おっと……、もしかして君ら四人組かな?」


「そうですよ」


「あちゃー、そうなのかー」


「……別に四人でもいいんじゃない?」


 なんの相談かはわからないでもないが、俺たちに何かを奢ることになれば値段は二倍になるのは確かだ。

 まぁ付き合ってやる気はないが。


「あー、それもそうだな。……みんなかわいいし」


「そうそう。……どうかな? これから俺たちと遊びに行かない?」


 あー、うん。やっぱりナンパだったか。さて、どうしたもんか。

 俺は後ろを振り返って二人を見ると、ナンパ組には見えないように人差し指でバツ印を作っていた。

 よしわかった。じゃあ今日はもう帰ろうか。


「あー、ごめんなさい。私たちそろそろ帰ろうと思ってたところなので」


「えー、そうなのー? ……もしかして四人全員帰っちゃうの?」


 俺の答えにチャラ男くんが残念そうに、でも最後の希望を込めて聞いてくるけどそんなものは却下だ。


「ええ、みんな帰ります」


「そっかー、残念。また今度ねー」


 なおも食い下がろうとしたチャラ男くんを制したのは真面目くんだ。引き際がいいと好感が持てるかも。

 笑顔を振りまきながらあっさりと去っていく男たちに、俺は返事をせずに笑顔だけで応えておく。

 しつこいヤツじゃなくてよかった。


「……『私』だって。……ふふっ」


 そんなやりとりを見ていた佳織が、俺が使った言葉に何とも言えない笑みを浮かべるのだった。

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