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第13話 体操服に着替えましょう

 とうとうこの時がやってきた。

 時間割にも組み込まれているので否が応でもやってくる授業である。

 体を動かす生徒には待ち遠しい授業かもしれないが、俺はそうではない。

 いや、こんな体になる前まではどちらかと言えば好きだった部類に入るのだが……。


 ――そう、体育だ。


 この時のために佳織と一緒に体操服を買いに行きはしたが、いざその時が目前となると緊張するものだ。

 というか俺、どこで着替えりゃいいの?

 本来であれば体育館横の更衣室で着替えるんだろうが、他に場所なんてないだろう。

 とりあえず女子用の赤い体操服が入った手提げを引っ張り出すと、一緒に体育館方面へ向かう佳織に聞いてみる。


「俺はどこで着替えたらいいと思う?」


「……あたしが知るわけないでしょ」


「うぅ……、佳織が冷たい」


 佳織の冷たい返事に、わざとらしく落胆した声で反対側を歩くしずかへと縋りついてみる。

 担任の川渕先生が『理解のある学校』とかなんとか言ってたので、まぁなんとかなるんじゃないかと楽観している。


「おぉ、よしよし、圭ちゃんかわいそうに」


 そんな俺をノリよく静が慰めてくれる。


「ちょっと! なんかあたしが悪いみたいな感じにしないでよ!」


「あらあら、よしよし、佳織ちゃんかわいそうに」


 佳織のツッコミに今度は佳織を慰めに行く静。


「……もうっ!」


 ツッコミで忙しい佳織をからかっていると、いつの間にか体育館横の更衣室へと着いた。

 右側の入口が男子更衣室で、左側の入口が女子更衣室だ。それぞれ扉の色も紺色と赤色と分けられていてわかりやすい。

 そして二つの扉の中央には、一人の女の先生が立っていたのだ。

 うーん、……もしかして?


「……あなたが、五十嵐さんかしら?」


 俺に気が付いた先生が声を掛けてくる。

 ショートカットの三十歳前後の見た目の女性教師だ。体育教師なのかジャージ姿ではあるが、スラっとした体型をしている。


「はい。そうですけど」


「あら、可愛らしいじゃないの……、とてもそうは見えないけど……」


 後半の言葉は聞こえづらかったが、なんとなく想像はつく。まぁ自分でも別人だと思ってるくらいなので気持ちはわからなくもない。


「これから体育よね。五十嵐さんはこっちにいらっしゃい」


「あ、はい」


 先生に促されて俺だけ別の場所へと向かう。


「圭ちゃんまたねー」


 そんな俺を静は手を振って見送ってくれたが、佳織は腕を組んでまだ機嫌が悪そうだ。

 だがまぁ、ちゃんと着替えるところがあるなら安心だな。

 先生についていくと体育館の裏側に近い入口に入って行く。奥へと進むと、体育教官室の隣にある『教員更衣室』へと入って行った。

 もちろん丸三角四角が縦につながった赤いマークの方である。


「五十嵐さん。体育以外でも着替えることがあったらここを使って頂戴」


「あ、わかりました」


 うーむ……、他に場所はなかったんだろうか。教員用だが、こっちも女子用だよね……。まぁ生徒ほど人数いないだろうし、今も先生以外に誰もいないし、むしろ普段誰もいないんだろうけど。

 慣れるまで我慢かな。


「ちなみに私は女子の体育担当の湯沢ゆざわよ。一年間よろしくね」


「えーっと、よろしくお願いします?」


 うん? つまり何か? 俺は女子の側で体育をやるのか? マジで?

 っていうか湯沢先生? なんで更衣室にある長椅子に座り込んでるんですかね? 俺着替えるんですけど?


「ああ。……何やってるんだ? 着替えないと遅刻だぞ?」


 見学する気満々ですか。そうですか。


「はあ」


 まあいいか。佳織にも下着姿は見られてるし。減るもんじゃない。

 今日の俺の服装はワンピースだ。いやもうぶっちゃけると今の自分って何着ても似合うな。服を一杯持ってる女子の気持ちがやっとわかったわ。

 男の時の自分はさっぱり着飾らなかったが、女は違うと実感する。

 ……おっと、着替えだ着替え。


 俺は脱線していた思考を戻すと、手提げから体操服を取り出して着替え始める。

 ……えーっと、ワンピース下のスパッツは穿いたままでいいよな。

 うん。そのままハーフパンツ穿いてしまえ。

 ワンピースを着たまま先にハーフパンツを穿くと、上を脱いでキャミソールの姿になってその上から体操服を着る。

 うむ。この着こなし完璧だ。鏡がないからわからんが。


「へぇ……」


 何か感心したような先生の声が聞こえる。


「どこからどう見ても女の子にしか見えないわね」


「そうですか」


「見た目だけじゃなくて声もそうね……」


 何やら独り言の呟きに変わったようなので、俺は返事をせずに脱いだ服をたたんでロッカーへと収納する。


「着替え終わりました」


 俺の言葉にハッと我に返った先生が椅子から立ち上がると。


「じゃあ行きましょうか」


 その言葉と共に俺は先生と二人で体育館へと向かった。

 そういえば今の体になって確認したことないが、体力とかどうなってんのかな。

 見た目で筋肉がなさそうなのはわかるんだが、ちょっとだけこの体の身体能力が気になった俺だった。

ゆざわ先生のルビがえらいことに……。修正しました。(2017.05.21)

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