声
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「こっちか!」
声に誘われるように、森に入っていく。
(この声をたどった先にきっと犯人がいるはず。見つけ出して問いただしてやる!)
そう思うと、どんどん進む。大きな木の幹を避けながら走る。大きな樹木ばかりで道は広く戻る時も迷うことはない。奥に進むと樹木が増え、空は葉が重なり日が入らない。まるで冬の夕暮れのようだった。ただ声はどんどん大きくなる。
「はぁ!はぁ!はぁ!!」
動悸が早くなり、汗が溢れる。これだけ走ったのはいつ以来だろうか。だけど声の出処は近い!
「はあ!はあ!ふぅ!誰かいるのか!?出てきてくれ!!!」
「…………。」
声が止まる。
(近くにいる!)
そう確信すると辺りを見渡す。周りは太い木の幹がたくさんあり、隠れる場所なんていくらでもある。隠れている人間に聞こえるように叫ぶ。
「なんでこんなところに連れてきたんだ!!!ここは何処なんだ!?聞こえてるなら返事を……。」
ガラガラガシャアン!!!
「うひゃあ!!」
背後のほうに何かが降ってきた。振り返ってそれを見る。息が止まる。人の死体だった。
「ひっ!」
ドスン、と尻餅をつく。
いや、よく見てみると、木でできた人形だった。ぐしゃぐしゃに壊れているが、顔の部分には仮面が被せられ頭には緑の帽子が被せられていることがわかる。人に似せられた造形で、子供ほどの大きさの人形だ。手足の部分だった場所は折れ曲っており、不気味だった。まだ心臓がバクバクとなっている。状況を理解できずにいる。
「…人形?」
誰かが落としたのかと頭上を見るが人影はなかった。少し近づいてよく見ようとすると、人形はカチャカチャと音を立てて動きだした。完全に折れた体が逆再生するかのように巻き戻り元どおりになる。折れた手足がくっつき、傷がなくなる。傷一つなくなると一人で立ち上がり、こちらにお辞儀をした。あまりのことに俺は口を開けたまま完全に停止している。
そして踊りだした。コサックダンスで。
は?
呆然と人形の踊りを見ていると、頭上から笑い声が響いてきた。
「あはははははははは!」
先ほど見た時は人影はなかったはずの木の枝辺りがぼんやりと歪む。空間が歪み光が形をなす。そして完全に人の形になるとそこから飛び降りた。普通の人間ならば完全に死に至る高さだ。
目の前に降り立つ。
それは人形と同じ仮面をかぶった女の子だった。