表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

現状把握

「っだよ!ここ!起きたら草原ってわけわかんねー!てゆーか、12月なのに春みたいってどーゆーことだよ!!」


彼は頭を抱えてうずくまると寝癖がついた頭をガシガシとかいて悪態をつく。

いつも友人から幼いといわれていた顔つきは寝起きのため少し目つきが悪くなった。

服装は上下とも鼠色の動きやすい寝間着。とてもじゃないがこれで外出しようとは思わない。


「寝てる間に連れてこられた?いやでも、おふくろとおやじがそんなことするはずねーし。誘拐とかか?一般的なサラリーマン家庭にそんなことするはず…。そうだとして犯人は…。てか靴もないし…最悪だ。」


ぶつぶつと呟き現状を把握しようと決していいとは言えない頭をフルに働かせる。


「えーと、昨日は春香ちゃんと勉強の合間に遅くまでメールしてて…あっ!携帯!たしかポッケに…うし!こんなことにも気づかないなんて相当動揺してたんだなー。」


これでお袋に電話してー、と少しほっとしつつ携帯を起動させる。


「は!?圏外?電波ないとか…マジでどこだよ、ここ…。と、とにかく誰か人を探すか。」


辺りを見渡すと遠くに森が見える。そして360°見回してみても草原は森につながっているようだ。

まるで森の中心を丸くくり抜かれたかのように草原が広がっていた。

その不思議な空間に少しだけ感動し、そして怖くなった。


「ほんとになんだよ、ここ。家の近くにこんな場所なかったよな…?とにかく歩くか。」


森に向かって歩き始めたところで彼の背中にひやりと冷たいものが走るのを感じた。


「あ、あれ?いや、そんなはず…。忘れるはずなんて…、俺の名前は…………。」


友達の名前は思い出せる。ただの知り合いの名前も。隣に住んでたおばさんの名前だって思い出せる。

自分がどこに住んでてどんな学校に通っていて、今までどうやって暮らしてきたかも思い出せる。


「名前が思い出せない…。」


ただ家族を含めた自分の苗字と名前がまったく思い出せなかった。

思い出そうとしても自分の名前だけが霞がかかったようにノイズが走る。

彼は嫌な予感が胸のあたりに広がるのを感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ