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第二十一話 箱庭

 この世界は狭い。なんせ、ここにはたった一つの村がしかないんだから。


「村を守るために戦うぞー!」

 その小さな村で、まるで勇者やその仲間みたいな恰好をした人たちが集まって、各々の武器を掲げて声を張り上げる。

 村の周りを囲う、どれだけ歩いてもちっとも先へ進む事の出来ない森。そこは昔から世界の果てと言われていて、この村では一日もあれば世界の果てまで行って戻ってくる事が出来てしまう。と言っても、森の中には凶暴な魔物がたくさんいるから、進んで世界の果てまで行こうなどとは誰も考えない。

 小さな世界の小さなこの村はとても平和だ。頭が弱くて力任せにしか振舞えないような男にだってちゃんと仕事がある。それは時々森から出て村にやってくる魔物達を倒す事。奴らを倒すにはある程度の力も必要だが、本当に重要なのはそんなものではない。

 この村の風習である朝晩のお祈り。いつもこの村を守ってくれる精霊様に祈りをささげて、病気や怪我なんかから守ってもらう。精霊様の力は絶対的で、お祈りさえすれば不慮の事故などで死んでしまう事は無いし、剣を振り回すだけで魔物も倒せる。更に、特に熱心なお祈りをすればどんな願いも一つは必ずかなうと言われていて、村人達はいつも欠かさず、進んでお祈りをしていた。


「……と言う設定で村を作ってみた。」

 三足の獣と鳥を足して割ったような姿の精霊タリナは、体中の大小の翼をばさばさと動かしながら、体に巻き付く蔓を腕のように動かして説明する。けれど、向かい合う友人の小さな精霊スーの視線は少々冷ややかなものだ。

「……それ楽しい?」

「おう。」

「魔物ってお前が作った奴だよな?」

「まーな。」

 あの村を襲う魔物は、この世界でよくある魔物のような、作り主の精霊に似た特徴は持っていないが、繊細な模様や多種多様な動植物をモデルとしたバランスの取れた装飾など、何となく同じセンスで作られた凝った姿をしている。

「ちなみに、気に食わない奴にはチクチク地味な嫌がらせもしてる。頻繁に机の角に小指をぶつけたりとか。形だけでも祈ってると何も出来ないしな。」

「小指云々はよく分からないけど、そこはきちんと守ってるんだ。」

「そうそう。折角世代交代して設定が真実扱いされてるんだから、このまま維持していきたいなって。あと、最近魔物の王的なもの作ってもいいかなって考えてて、こんなシナリオを考えてみた。」

 そう言って広げられた大きな紙にはストーリーや登場する魔物、魔物が棲む場所の地図などが細かく書き込まれていて、一部は空中にもはみ出して立体的に描かれている。

「……お前が楽しそうで何よりだよ。」

 大きな紙に描かれたものは、何がやりたいのかは伝わらずとも、とにかく楽しそうな事は伝わってくる内容だった。

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