第1話 入学式(1)
ジリリリリリリリ ジリリリリリリリと、けたたましい音が部屋を充満させる。どうやらもう朝のようだ。
「起きろ。いっせい。おーい」
いっせいこと兄の一成は、隣でグースカといびきをかいている。まぁ、昨日まで春休みで仕事とか忙しかったからなぁ。
僕は起きない兄をよそに準備を始めた。まぁ、着替えるだけだが。そして、10分たっても起きないのでからかってやることにした。
「おい!いい加減起きろ!」
「なんだよ.....」
「今日入学式だぞ!わかってんのか?」
数秒わからないのか、ボーっとした後に脳が覚醒したのか、急いで準備を始めた。
僕はその間に部屋を出て行った。そして、
「まだ時間あるじゃねぇか!」
そんな声が聞こえてきたか無視することにした。
さっさと着替えを済ませて下に降りると、豪華な朝食が用意されていた。
「こんな豪華な朝食どうしたの?」
そう言うと母さんは、
「今日は入学式でしょ?だから高校入って楽しく過ごせますよーにって考えながら作ってたらこうなっちゃった」
いやいや、こうなっちゃったじゃないでしょ。こうなっちゃったじゃ。何やってるんだかw
「おっ。凄!なにこれ」
そこに一成が降りてきた。
「今日の朝食だって。早く用意したなよ。僕は他を起こしてくるから」
そう言ってその場を後にした。
しかし、今日はやけに起きるの遅いな。昨日遅く帰ってきたのは僕らと征兄
だけだったはずなのに。
「うおっ」
向こうもドアを開けようとしていたらしく、征兄は驚いていた。
「ふぅ。ビックリしました。おはようございます」
「おはよう。朝食できてるよ先に下行っといて」
「わかりました。他のみんなも一応声はかけてあります。もう一度声かけといてください」
「うん、ありがと」
征兄は、基本的に敬語を使う。小さい頃からの癖らしく、僕らも違和感はない。まぁ要するにいい兄なのだ。怒らなければ。
よし、話を戻そう。僕が隣の部屋のドアを開けると、和兄はなんかゴソゴソしていた。
「なにやってんの?」
「んー、わかってるから後5分...」
まったく。
「ほーら、早く起きて」
「やめろー」
思いっきり毛布を引っ張るが、強く握ってなかなか離さない。もう、子供っぽいなぁ。
まぁ、そんなこんなでみんなに声をかけていった。
みんな今日の朝食見て驚いてたなぁ。そんなことを考えながら靴を履いていた。
「征兄、入学式行こう。僕は早いんだから」
「そうですね、いっせいはどうします?」
「俺も行く。後でドタバタしたくないし」
「「「行ってきます」」」
僕らは母さんに見送られ、家を出た。
「おはよう、夢ちゃん、いっちゃん、征ちゃん」
「おはようございます瀬戸口さん」
瀬戸口さんはお隣さんで、僕らを小さい頃から知っている。というか、この団地に住んでいる人は僕らの秘密を全員知っている。
それでもそれを誰かに話すことはない。そんなみんなが大好きだ。
「おーい。いっせーい、ユメー、征也さーん」
「お、翔太。起きてたか。珍しいな」
「へへっ、いっせいには言われたくないね」
瀬戸口翔太。僕らと同い年で、小さい頃から一緒だったからかソックリな僕達を普通に見分ける。同じ高校に入学した。
「入学式9時からだから。遅れるなよ」
「はーい」
心配だなぁ。
私立、明光学園。有名な進学校で、部活では優秀な成績をたくさん残し、自由な校風などから人気が高い。
それが、いまから通う事になる学校。ついで言うと、僕たちのことは学園長を始め、副学園長、校長、担任に伝えてある。それ以外は知らないはずだ。
「夢、学校ついたぞ。生徒会はどこに集合だって?」
「んっと、たしか生徒会室って言われた」
「わかった。なら俺は手続きしてくる」
「征兄、いっせいをよろしく」
「はい、いってらっしゃい」
「いってくるよ」
「おっ、来たな。満点男」
「なんですか、その満点男って」
大体想像つくけど、そんな風に言われるとなぁ。
「いや、お前入試の点数見てないのか?」
「見ましたよ。でも、その呼び方はやめてください」
「わかった。ところで自己紹介がまだだったな、俺は高藤雄大。3年で生徒会の副会長をしてる。よろしく。じゃ、生徒会室に案内するよ」
「よろしくお願いします」
先輩は明るく、リーダーに向きな気がする。なんで会長じゃないんだろう。それが僕の第一印象だった。
でも、そんな考えは室内に入ってわかった。会長はなんというか、空気が違った。こう、カリスマ性?的な物をかんじた。ちなみに第一印象は男だけど美人。だった。
「君を生徒会室に呼んだのは、新入生代表の挨拶とこれからについてなんだけど、一回説明してあるよね」
「ええ...」
なんだ?この気の抜けるような感じは。まぁ、リラックスできてるってことか。
「挨拶についてはこちらで用意しているから大丈夫。それよりも、新入生代表に選ばれた人は生徒会に入ってもらうことになってるんだけどいいかな?」
なんだ、そんなことか。
「別にいいですよ」
「うん、ありがとう。まぁ一応この話はしてあったしね。それよりもさ、えっと、高藤」
「ん?ああ、呼んである。入れ」
先輩はドアを開けて、いっせいを中に入れた。
ん?いっせい!?なぜここに?
「えーっと、僕の言いたいことはわかってると思うけど、一応聞こうか。君たちって《ファイブ》のルウとレイ?」
...........え?さっそく?