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五話

 王都アレルドに到着した翌日。朝食を済ませてエリクの工房へと来ていた。工房へ入るとエリクが気づいたようで声を掛けてくる。


「おう、ハルトか。適当なとこにでも座ってくれ。昨日の話を詰めるぞ」

「ああ、取り敢えずこれが取り付けて欲しい魔石だ」


 そう言って昨日見せた一級魔石と二級魔石を二個取り出した。出来れば全て一級にしたかったが今持っているのは一級が一個、二級は三個、三級は十六個だ。三級に関しては森の中で鍛えている時、魔力操作の練習をするついでで作りまくったためこの数になっている。残っている二級は予備だ。

 ついでに込めた魔法は一級が『ブレイブ』『プロテクト』『アクセル』二級が『リジェネ』『レジスト』と『エンハンスブースト』『エリアルステップ』になってる。


 『ブレイブ』『プロテクト』『アクセル』この三つはよく使われる基本的な下級補助魔法で与えるダメージを上昇させる、受けるダメージを減少させる、行動速度を上昇させるという効果がある。

 『リジェネ』はバークレイの持っていたリジェネレーターみたいに異常な再生能力を得られる物では無いが肉体の再生を早める下級回復魔法。

 『レジスト』は毒など状態異常に対する抵抗力を上げる効果のある下級補助魔法。

 『エンハンスブースト』は中級補助魔法で他の補助魔法の効果を引き上げる事ができる。

 『エリアルステップ』は空を蹴って移動することが出来る様になる中級風魔法だ。


「ちょっと待て、一級魔石一個じゃなかったのか?」

「昨日は加工ができるか聞いただけでこれ一個だとは言ってなかったと思うが」

「……確かに言ってなかったが。三級ならお前は冒険者だ自分で手に入れる事もできるだろう。それを二個ってのも珍しいが運がよけりゃあるかもしれん。だが、二級はそうないぜ」

「色々とあるんだよ」

「……まあいい、客の事情を詮索するわけにもいかないからな。それで、何に取り付けるんだ?武器か?」

「いや、装飾品にしてもらいたい」


 武器と防具は神が作ったものなので取り付けられない。その為、装飾品以外は作っても使えないことになる。


「そうなると戦闘中、邪魔にならない物にする必要があるな。……ミスリル製の腕輪とかどうだ?」


 ミスリルはゲームでよくある軽いが鋼鉄よりも硬い銀色の金属だ。アダマンタイトやオリハルコンなどより上位の金属も存在するがそれらは何処にあるのかわかっていないなので手に入る金属の中では一番良い物になる。


「それが一番いいんだが高くならないか?」


 ミスリルはドワーフの国周辺でしか採れないので高価だ。金はかなり持っているが当分は低ランクの依頼しか受けられないため出来れば節約したい。


「それなんだが、三級魔石があるならそれと交換できねえか?」

「別に構わないがそれでいいのか?」

「それでいいのかってお前、腕輪に使うぐらいのミスリルなら魔石のほうが高えよ。と言うかどんだけ魔石持ってんだ?」


 三級であればいくらでも作れるおかげで感覚がずれてきているようだ。少し気をつけないとな。


「まあ、そのへんは気にするな。俺としても三級魔石と取引してくれるなら有難い」


 三級魔石を一個取り出してエリクに渡す。


「よし、取引成立だ。そんじゃサイズを図るから腕を捲ってくれ」


 腕を捲るとエリクがメジャーのようなものを取り出してサイズを図っていく。

 ダンジョンから手に入るマジックアイテムは誰が手に入れるかわからないので装備すると自動でサイズを合わせてくれるのだが、魔石を使ったマジックアイテムは普通の装備品に魔法の効果を持たせているだけなのでサイズの自動調節はついていない。


「よし、もういいぞ」

「そういや、腕輪が出来るまでどのぐらい掛かるんだ?」


 捲っていた袖を元に戻しながらエリクに尋ねる。


「そうだな……今は他の注文は入ってねえから夕方にはできてると思うぜ」

「そうか、なら俺はそろそろ行くよ」


 エリクの店を出た後は依頼を受けるため真っ直ぐ冒険者ギルドへ向かう。

 ギルドは昨日と比べるとかなりの人数が出入りしているようだ。やはり朝に依頼を受けて日中にその依頼をこなし、夕方には戻ってきて報告し報酬を受け取る。このパターンで動いている冒険者が多いようだ。

 ギルドの中に入ったがギルド内も混雑……と言える程じゃ無いが人が多い。特にボードに前にはかなりの人数が集まって依頼を確認している。


「おい、あいつだよ。ジュードを一撃で倒してた奴」

「何?あの体で一撃はねえだろ。嘘ついてんじゃねえのか?」

「他にも見てた奴がいるから嘘じゃねえっての」


 ギルドに入った時からやたら見られていると思っていたが今の冒険者の話からして昨日の試験でやったことが広まっているらしいな。あんまり目立たないようにして……なかったな。まあ、広まってしまったものは仕方ないので気にしないことにする。

 注目される中、FランクとEランクのボードに貼られている依頼を確認していく。

 

「わかってたが簡単な依頼ばかりだな。初心者用と言われればそれまでなんだが」


 Fランクの依頼を見ていたが魔物ではないが一般人が相手するには少し危険な野生動物の討伐や街の近くにある草原に生えている薬草の採取等とどれも似たような内容だ。こういった物はは食料や薬の材料として常に必要になるので常時貼られている依頼だ。

 流石にこれは受けても仕方が無いので他の依頼を見ていく。

 他はゴブリンやポイズンフロッグの討伐と言った弱い魔物の討伐やその素材を納品する依頼。それと、魔物に襲われる危険の高い森などでの薬草採集といった依頼がある。こちらも大半が常時依頼だ。


「受けるならこっちか。出来ればそれなりに強くて数が出てくる魔物がいいんだがランクを上げないと無理だな」


 強い存在はそれだけ魂の価値が高いらしく一体でも複数体分の魂という扱いになるのでそれなりに強い魔物を大量に倒せると一気に強化できる。だが、それはランクが上がってからなので今は気にしても仕方が無い。

 どの依頼にするか考えていたが序盤の雑魚といえばゴブリンだろと思ったのでその依頼を確認する。

 依頼書には討伐数自由、最低五匹の討伐で依頼完了とし討伐数一匹につき銅貨三枚と書かれていた。


「低ランクの依頼とは言え安いな。だが、宿の値段を考えるとこんなもんか?」


 今止まっている宿は銀貨四枚だがそれはそこそこ良い宿だからであって低ランク冒険者が泊まるのは普通銅貨数枚だ。エリクのところでも思ったが金銭感覚がずれてるな。

 報酬が安いのはわかっていたので気にせず依頼書を剥がし受付に持っていく。依頼書を渡した相手は昨日の受付嬢だった。


「ゴブリンですか。ハルトさんの実力なら問題ないでしょうが気をつけてくださいね」

「ああ、それでゴブリンの居場所なんだが」

「それでしたら街から北の街道沿いにある森がいいと思います。基本的に森の中であればどこでも出現しますがそこが一番近いので」

「そうか、ありがとう」


 受付嬢に礼を言って依頼を受理して貰い、ギルドを出る。普通の冒険者なら薬なんかを買うんだろうが必要ないので真っ直ぐ街の門へと向かう。

 門のところには関所があり、出入りに税金を取られるのだが冒険者はギルドカードの提示で通ることが出来るようになっている。

 街の外に出た後は言われた森に向かって進んでいく。整備された街道なので魔物に出くわすこともなく一時間ほどで目的の森に着いてしまった。


「雑魚であっても一個分にはなるんだから出来れば魔物に出てきて欲しかったが……もっと辺境にある街にした方が良かったか?だが、そうすると情報があんまり入ってこないしな……これも高ランクになるまでの我慢か」


 出て来ないものは仕方ないないので気持ちを切り替えて森の様子を探る。


「ここからだとわからないな。仕方ない森に入るか」


 ゴブリン相手にそこまで警戒する必要もないだろうと判断し森へと入っていく。

 そして森の中に入って一時間ほど経った頃、前方に大量の気配が現れた。


「少し遠いせいで何かわからんがゴブリンか?」


 その気配はこちらに進んできているようだ。このまま進めばぶつかるだろう。気配を殺し、その集団に近づいて観察する。

 どうやら、二十匹ほどのゴブリンがいるようだ。しかも、そのうち十匹は錆びていたり、欠けていたりするが長剣を持っている。


「武装するような知能は普通のゴブリンにはないはず……ということは上位種がいるのか?」


 そう思いゴブリンの集団をよく確認すると一匹だけ屈強な肉体で比較的綺麗な長剣を持っているゴブリンがいる。


「ゴブリンソルジャーか?」


 ゴブリンソルジャーはゴブリンの上位種で普通のゴブリンよりも鍛えられた体とある程度戦闘技術を持った存在だ。

 因みに、ゴブリンの上位種は他にアーチャー、ライダー、メイジ、クレリック、リーダーなどがいる。

 と言っても普通のゴブリンに比べたら強いというだけで相手になるような奴ではない。


「こればっかり使ってる気もするが『アースランス』」


 目視できているゴブリン全ての足元から石の槍を発生させる。ゴブリンソルジャーはぎりぎり避けたようだがそれ以外のゴブリンは串刺しにされて息絶えている。その光景を見たであろう残りのゴブリンが数匹何か叫びながら四方八方へ逃げていくが依頼は達成したので逃げるゴブリンは放っておく。それよりもゴブリンソルジャーだ。


「避けたか、面倒な」


 ゴブリンソルジャーに接近し刀を振るう。ゴブリンソルジャーも受け流そうとしたようだがただの剣で防げるはずもなく剣もろとも胴体を切断され崩れ落ちる。


「雑魚は雑魚か。まあ、多少強化の足しにはなったからいいか」


 周囲から気配は消えたので刀を収め、時間の確認も兼ねて空を見上げる。木々で遮られて見難いが昼前といったところだ。


「まだ時間があるな……強化のためにも魔物を探すか」


 そう考え更に森の奥へと進んでいく。

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